すごいすと取材記

認定NPO法人放課後遊ぼう会 理事長足立典子 さん(53) 兵庫県

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遊び場がない

「自分の責任で自由に遊ぶ」を合言葉に、子どもたちの遊び場づくりに取り組んでいる認定NPO法人放課後遊ぼう会。

遊ぼう会が開催する「遊び場」は、放課後の小学校の校庭や多目的室、体育館など。宝塚市内6つの小学校を子どもたちが遊べる場所として利用している。なかでも市立仁川小学校では、夏休みや冬休みなども含めたほぼ全ての平日に「遊び場」を実施している。

 

仁川小学校は放課後になると、校庭が子どもたちの「遊び場」へと変貌する。

授業を終えた子どもたちは次々に、ランドセルを背負ったまま、「遊び場」にやってくる。

ブルーシートの上にランドセルを置き、遊び道具を手に、校庭に散らばる。ドッジボールや鬼ごっこといったよく見られる遊びもあれば、中国ゴマにチャレンジする様子も見られる。校庭の土山に穴を掘って水を流し込み、泥だらけになる子どもたちもいる。校内のコミュニティ室では、本を読んだり、カプラと呼ばれる木製のブロック遊びをしていたり…。

「遊び場」で、子どもたちが思い思いに時間を過ごす。

子どもたちの周りには、ケガや事故に備え、保護者を中心にしたボランティアスタッフや、プレイリーダーと呼ばれる大人たちがいる。

ただし、子どもたちの自主性を重んじるため、遊び方や振る舞いには基本的には口を出さず、遊び場を見守っている。

校庭で遊ぶ子どもたち

雪もちらつく中、元気に遊ぶ子どもたち。

足立さんが遊ぼう会の活動を始めたきっかけは、地域に子どもたちが自由に遊ぶ場所が見当たらなかったから。

「幼稚園から帰ってきた息子が、玄関先で『友だちと遊びたい』と言ってしょっちゅう泣いていたんです」

静かな住宅地を見渡してみれば、確かに子どもたちだけで好きに遊べるところは見当たらない。道路には歩道が十分に整備されていないうえに、幹線道路が近く車も頻繁に往来する。子どもたちが自分で行ける範囲には遊べる公園がほとんどないのだ。

「児童館も、宝塚市では広い中学校区に一つずつしかできなかった。特に行動範囲の限られる小学校低学年の子どもにとって、毎日気軽に足を運べるような距離には作られなかったんです」

子どもが誰にも遠慮せず心ゆくまで友だちと遊べるような場所。

自分が子どもの頃、日がとっぷりと暮れるまで、また体がくたくたになるまで遊んだような、そんな空間は、この地域にはなかったのだ。

 

室内でも自由に過ごす

仁川小学校の敷地内にある地域のコミュニティ室。外遊びの前にここで宿題を済ませる子たちも多い。

子どもの成長には豊かな遊びが欠かせないと足立さんは考えている。

遊びとは、誰に言われるのでもなく、好奇心から自発的に始めたことを自分の力で達成させる行為。その達成感こそが子どもに自信を与え、自発性を育むもとになる。そして、友だちとの自由で豊かな遊びの中で、判断力や社会性などさまざまな力を身につけていく。

 

しかし、今の子どもたちは遊びに必要な「三間(さんま)」が奪われていると足立さんはいう。三間とは空間、時間、仲間の3つの「間」のことだ。

野山を駆け回るどころか、思いっきり体を動かせる空間もない。

塾や習い事のため、遊ぶための時間はどんどん減っていく。

空間も時間もない子どもたちには、遊び仲間が生まれるきっかけがない。

「携帯ゲーム機に向かう子どもたちを見ると、今の子は遊びの選択肢がないのだと感じます」

 

子どもを取り巻く社会の状況を昔に戻すことはできない。せめて子どもたちがいきいきと遊べる遊び場を提供したい。足立さんは、同じ思いを持つ保護者2人とボランティアグループをつくり、平成13年から仁川小学校で子どもたちの遊び場作りをスタートさせた。

ドッジボール中の子どもたち

広い校庭で、ドッジボールも思いのまま。めいっぱい体を動かし、遊ぶ。

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