すごいすと取材記

淡路人形座坂東千秋 さん(55) 兵庫県南あわじ市

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本物の伝承と新たな娯楽づくりへの挑戦

修行に励みながら人形遣いとして舞台に上がっていた坂東さんに、さらに転機が訪れる。
「定年退職を迎えた前任者の後を継ぎ、支配人にならないかと声がかかったんです。すぐ上の先輩でも、親にあたる世代。後継者がいませんから、とにかくやってみるしかないと思いました。」
30歳に満たない若さで、人形座の運営を取り仕切る支配人へと転身を果たすことになった。
「一般的に、難しい、古い、お年寄りが観るもの、言葉や話がわからない高尚なものといったイメージの人形浄瑠璃を、どうやって多くの人に知ってもらい、いかに足を運んでもらうかが最も苦労する。」と語る。
そのために大切にしていることの一つが、来館者との触れ合いだ。人形との写真撮影に応じたり、舞台の感想を積極的に求めにいく。
「例えば、戎(えびす)様の人形と一緒に写真を撮って『宝くじが当たった』『大きな手術がうまくいった』といって喜んでくださる方もおられます。一つ一つの出会いを大切にすることで喜ばれ、次の出会いになるんです。」

公演終了後は、来館者との触れ合いを大切にする淡路人形座(戎様との記念撮影)

 

また「攻めることが最大の防御。やれることは何でも挑戦しています。」と、常に新しいことに挑み続ける坂東さん。公演内容も、座員たちと一緒に様々な工夫を凝らす。その一つが異業種とのコラボレーションだ。中でも若手講談師との共演は、東京から来館する人も現れるほど話題の企画となっている。

 

異業種とのコラボレーションの企画を進める

 

さらに年間100回以上の出張公演にも取り組み、平成30年10月には日仏友好160年を記念したイベントの一環としてパリで公演。好評のうちに幕を下ろした。

 

フランスのパリにある日本文化会館で公演(パリで開催された「ジャポニズム2018」、公演日:2018年10月17日)

 

公演後の見送りでも大人気の戎様

 

その一方で、「本物を見せられる技量があってこそ、新しいことに挑戦できる」という想いのもと、年に一度の復活公演にも力を注ぐ。
「淡路で生まれ、大切にされながら演じられなくなったものの中から、これまでに14演目を復活させてきました。最近では平成28年に、航行の安全と豊漁を祈願する『戎舞(えびすまい)』を奉納したのをはじめ、100年ぶりに演じる演目もあります。何百年という時間のふるいにかけられながら、現在まで受け継がれている本物の舞台をここで見ることができるという価値が、人形座の財産になっていくのだと思っています。」
そんな財産を守り育てるため、人形座の活動は学校という舞台でも繰り広げられている。

 

2018年1月28日復活公演「賤ヶ嶽七本槍〜左馬之助湖水渡りの段〜」に向けて、芝居に登場する左馬之助の名馬を手作業にて制作

 

全長約2メートルの名馬が完成し、復活公演「賤ヶ嶽七本槍〜左馬之助湖水渡りの段〜」の練習が進む

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