すごいすと取材記

空き缶でもうけてもええ会事務局長千種和英 さん(46) 兵庫県

ギャラリーを見る

小さなまちからのご恩返し

各地で頻発する自然災害を受け、いま全国で、災害被害を最小限に抑えることができるよう、発災後の対応までを見通した防災・減災の取り組みが進められている。

佐用の経験は、まちの大小に関わらず、全ての地域が取り組む災害に強いまちづくりに活用してもらえるはずだ。千種さんは、被災地佐用から、全国から受けた支援に対するお礼のひとつとして、復旧が進む佐用に見学者を受け入れるとともに、呼ばれれば遠方でも講演に出向き、被災経験や教訓を伝えている。

 

「佐用では全国から多数のボランティアが駆け付けているのに、どこに頼めばボランティアが来てくれるのか知らない人、遠慮があって本当にしてほしいことをお願いできない人がたくさんいた」

ボランティアセンターは何をする所で何をお願いできるのか。ボランティアで来てくれる人にはどんな応対すればいいのか。いずれは帰ってしまう人たちに今頼るべきなのはどんなことか。

ポイントは、ボランティアの受け入れシステムを整えることだけでなく、こうした住民一人ひとりの受け入れの心構えや知恵といった部分も合わせた、いわば地域の『受援力』と呼べるような力。

せっかくの支援を最大限に活かすため、この受援力を日頃から高めておく必要性を伝えたいと千種さんは語る。

地域住民からボランティアへの感謝のメッセージ

ボランティアに対する住民からの感謝のメッセージ

例えば、小学生に対する災害学習。

一緒にまちを歩いてまわりながら、まちの至るところに貼られた水害時の水位を表したステッカーや、立ち止まって大きく引き伸ばした写真を見せながら、どのような被害を受けたか、ひとつひとつ説明する。

「災害時に必要となるのは人・お金・もの・情報・スピード―」

全国から多数の支援ボランティアが駆け付けてくれたこと、復旧にはお金がかかること、どんな時でも確かな情報に基いて冷静になること。何が、何のために必要になるのか、子どもたちにもわかるように丁寧に解説する。

 

「元気なまちになることと、語りつなげることの2つが佐用の支援へのご恩返しだと思っています。ぜひみんなも帰って家族や近所のひとにお話ししてください」千種さんは子ども達にいつも呼びかけている。

小学生に被害状況を説明する千種さん

たつの市立新宮小学校の総合学習での一幕。佐用の被害状況を説明する千種さん。
町外の小学生も積極的に受け入れている。

そして、佐用の水害から1年半後、東日本大震災が発生する。

真っ先に思い浮かんだのは、あの水害のとき、一番に連絡をくれた宮城県南三陸町の商店街のメンバーのこと。

ただ、今自分たちに何ができるかわからない。すぐにでも向かいたい気持ちを抑え、状況がわかるまでじっとがまんした。やっと直接連絡がとれたのは発災から1週間後。

「第一声は『生きてるよ―』だった。現地でみんながんばっていることは伝え聞いていたから、佐用にできることがあったらさせてほしい、今は何もできないがいつでも支援する準備だけはしていることはわかって欲しい。そう伝えました」

 

3月末には、千種さんは県のボランティア先遣隊として、佐用や県内各地のネットワークを駆使して仲間たちとともに宮城県内での炊き出しに駆け付ける。南三陸に直接入れなくても、できることで東北を応援したい一心だった。

 

4月、南三陸の商店街のメンバーからまた一本の電話があった。

「商売を再開するよ!でも何もないからテントや売るもの持ってきて!」電話口から聞こえてきたのは、力強い一言。地域を元気づけるため、彼らが福を興すという意味で『福興市』を開催するという知らせだった。

「売るものないのに、商売をするよっていうのがなんともうれしい話で。商売人がまちを元気にするひとつの方法だなぁって思った」と振り返る千種さん。

現地は店舗となる施設も設備もないような状況。千種さんは3張のイベント用テントを佐用や近隣の仲間の協力により調達し、南三陸町へ駆けつけた。

福興市で行われた炊き出し

福興市で行われた炊き出し。普段のネットワークを駆使して、温かい食事とイベント用テントを届けた

6月からは全国商店街支援センターの依頼を受け、東日本大震災商業復興支援マネージャーとして、岩手県宮古市の商店街支援も始めた。そこで同じく被災した商店主という立場からひとつ伝えていることがある。

「もし跡継ぎもおらず、借金もなく、他に何か仕事のあてがあるなら。店をたたむこともひとつの選択肢ですよ」

被災者にとっていつもの商いが続けられることは、それだけで力になる。店主にしたって元に戻れるならそれ以上に嬉しいことはない。

「しかし、被災以前からの借金を返すため、さらに再建のために費用を使って、辞めるに辞められない商店主の辛さ、厳しさもあるんです」

廃業することが不幸なことのように語られるが、実はそうとも限らない。時には、被災した商店主からはどやされる時もある。しかし、佐用でも辛い例を見てきたからこそ正面から伝えていくのだと千種さんは語った。

1 2 3 4 5