すごいすと取材記

空き缶でもうけてもええ会事務局長千種和英 さん(46) 兵庫県

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復興が目指すもの

千種さんが実感をこめて語る、商店主にとっての復興の難しさ。これは、阪神・淡路大震災の被災地、神戸市の新長田で千種さんが教えられたことでもある。

新長田の商店街メンバーとは十数年来の関係で、特に、まちの復興をリードする大正筋商店街の伊東正和さんとは、仲間でありながら師弟関係のような間柄でもある。

 

商店の復興について語る時、いつも思い出すのは伊東さんからの一言。

阪神淡路大震災から5年を過ぎた頃、新長田を訪れた千種さんは、きれいに立ち並ぶ再開発ビルを見上げ「いいなぁ、災害に遭ったらきれいにしてもらえていいなぁ」と一言漏らす。

冗談ともつかない千種さんのその言葉に伊東さんが釘をさした。「建物がきれいになることになんの意味もないで」

 

震災で壊滅的な被害を受けた新長田の商店街は、テント、仮設店舗、再開発ビルと移転を繰り返した。商店街は新しく大きくなったが、昔の住民は減り、買い物客は戻らない。きれいな街並みに合う服装がないと、買い物に出ることがおっくうになったというおばあさんまでいる。

 

災害だけでなく、再開発が一人ひとりの暮らしを変えてしまった。

その変化は、地域の暮らしと住民との信頼関係の上に成り立っていた個人商店に追い打ちを掛けた。

 

見かけのきれいさは『復興』とは違う。まだ被災経験がなかったころの千種さんの胸に、伊東さんの一言は深く刻み込まれた。

伊東さんと千種さん

佐用と新長田。お互いの斬新な取り組みに刺激を受け、切磋琢磨できる、良きライバルだと笑う

そして今、千種さんは佐用で、『復興』の意味を考えている。

 

ひとつひとつの家や店舗の泥をかき出すことから始まった佐用の復旧作業。

ライフラインが戻り、建物が修理され、今は氾濫を防ぐための河川工事が進められている。しかし、これは復旧であって復興ではない。

 

復興とは、まちが元に戻るとは、どういうことか。

佐用ならば、過疎のまちに戻すということでは決してないはずだ。

今はまだどのようにすればいいのかはっきりと答えは出せていない。ただ次の世代が暮らしていけるまちにすること。それだけはやりとげたいと千種さんは固く誓う。

 

千種さんが大切にしているのは『縁(えにし)』。

縁によって出会った人から受けた教えと助けで、今の自分がある。だからこそ、その恩を返していきたいのだという。

「ただ、ご恩返ししているつもりが、いつもまたそこから学ぶこと得ることばかり」と千種さんは笑う。

 

一人ひとりの経験や思いをつなぐ。愛するわがまちを支える力は、縁によってより強くなる。

縁(えにし)

 

(公開日:H26.1.25)

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