すごいすと取材記

佐治倶楽部事務局出町慎 さん(34) 兵庫県

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僕にとって建築とは、集落の暮らしをデザインすること

「あの時、あの本に出会わなかったら、今、僕はここにいません。」
何万冊という蔵書が眠る大学の図書館で、その一冊は目に飛び込んできた。世界中の集落が集められた、決して厚くはない写真集だった。
「美しいな、こういう仕事に関われるなら一生建築家として生きていきたいなと思えたんです。」
専攻は建築。しかし建物の設計に興味が持てず、大学を辞めようと思い始めた矢先、奇跡のような出会いだった。
「暮らしをデザインすることが建築の仕事なんだ。」
出町さんに、大きな転機が生まれた瞬間だった。
奈良市出身の出町さん。古いまち並みの中で育ったことで「自然と集落が好きになった」と振り返る。
「細い路地を抜けた先で、地元の人たちが立ち話をしている。密集している中にこそ暮らしは感じられるもの。生き生きしていて豊かな気がするんです。」
まちのつくりと環境がリンクしていることも、集落の魅力だという。
「今の日本のまちづくりは、どこも同じで違和感があります。それぞれの場所にふさわしい建物のあり方や暮らし方がありますから、そこに根付く文化や歴史と対話をしながら建築物はつくられるべき。それが集落なんです。」
写真集との出会い、集落への想い。それが数年後、大きなプロジェクトを生み、出町さんのライフワークへとつながることになる。

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