すごいすと取材記

もっと多くの障害者ランナーをマラソン大会へ!
多様な人たちが共に生きる社会の実現を目指す
宝塚市・林 優子さんの“伴走”

認定NPO法人 ぽっかぽかランナーズ 林 優子 さん(61) 兵庫県宝塚市

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伴走者の育成と足こぎ車イスの普及で、障害者ランナーを増やしたい

 

ぽっかぽかランナーズでは、10月から6月に宝塚の武庫川河川敷で、3月から11月に大阪の舞洲人工浜などで、それぞれ月に一回練習会を開催しています。ランニングの練習はもちろん、障害者ランナー一人ひとりに必要なサポートの確認や、ランニングコーチによる伴走ランナーのフォーム指導などを通じ、障害者ランナーと伴走ランナーのベストなマッチングを目指しています。

「ボランティア活動をしてみたいけれど、何をすればいいのかわからないという人が、走ることで役に立つなら体験したいと来られます。伴走してみると『楽しかったから入会します』という人が圧倒的に多いんです。」
障害者の中には言葉を発することのできない人や、感情のコントロールにサポートが必要な人もいるため、伴走には精神面を支えるための知識も必要です。さらに「障害について詳しく知らなくても伴走できますか?」といった問い合わせも多いことから、障害を理解するための学びの場として「ぽっかぽか講習会」を7月~9月に開催。障害者や支援者による様々な講演や体験を通して、障害者の気持ちに寄り添えるよう努めています。

こうした練習会や講習会を重ね、年に6~9回ほどマラソン大会へ参加。誰もが笑顔で完走できるよう、各大会の運営者へ事前に相談し、万全の体制を整えて当日を迎えています。
マラソン大会への参加にあたり「活動の転機になった」と林さんが話すのは、足こぎ車いす(*)との出会いでした。
「だんだん足が動きにくくなってしゃがみ込むことが増え、三輪車もこげない聖憲が、足こぎ車いすを楽しそうにこいだんです。一般的な車いすを背後から押すことが、マラソン大会での身体障害者の支え方だと思っていましたが、自分の力で風を感じながらゴールができます。足こぎ車いすとの出会いをきっかけに、マラソン大会への参加方法が広がりました。」
また、思わぬ効果もありました。足こぎ車いすを使うようになった聖憲さんの太ももに筋肉がつき、使い始めて3年後には1.2キロメートルを完走するまでになったのです。電動車いすを使っている人が、支えがあれば歩けるようになるなど、運動機能の改善も見られることから、ぽっかぽかランナーズでは足こぎ車いすの普及活動に尽力しています。

現在は新型コロナウイルス感染拡大防止対策により、講習会や年に3回開催してきた交流会も中止に。練習会でもコーチが参加できなくなったり、参加を自粛するランナーたちも増えました。
「コーチの代わりに理事たちが指導していますが、指導者として自立し成長するきっかけだととらえています。練習会に参加できない障害者には足こぎ車いすを貸し出すなど、様々な工夫をしながら乗り越えています。」 その一方、マラソン大会での辛い体験もありました。いつものように運営者へ事前に相談し、障害者ランナーも参加可能の返事を受け取っていたにもかかわらず、スタートから数百メートル走った頃、制限時間をオーバーするという理由で突然走ることを止められ、参加を拒否されたのです。その後も時間制限を設ける大会が増え、ぽっかぽかランナーズのメンバーたちには、完走することが難しいマラソン大会が増えていきました。
「誰もが参加できるマラソン大会を、自分たちで開こう!」
決意した林さんは、すぐに行動に移しました。

 

*足こぎ車いす:自転車をこぐように、自分の足でペダルをこいで進む車いす。片足を出せばもう片方の足が反射的に動く「歩行反射」を促すことで、運動機能の回復が期待できる。

 

障害を理解するための学びの場「ぽっかぽか講習会」第10回の聴覚障害に関する講習会の様子

障害を理解するための学びの場「ぽっかぽか講習会」
第10回の聴覚障害に関する講習会の様子

 

練習会で足こぎ車いすをこぐ聖憲さんと伴走ランナー

練習会で足こぎ車いすをこぐ聖憲さんと伴走ランナー

 

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