すごいすと取材記

まごころ薬局(株式会社コーディアル)福田惇 さん(34) 兵庫県尼崎市

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選ばれる薬局に必要なものは、薬とコミュニティスペース!?

 

コミュニティスペースづくりに取り組むことを決めた福田さんでしたが、反対したのは薬局のスタッフたちでした。
「新しい事業に取り組むことへの抵抗や、何をしていくのかよくわからないことへの不安があったんだと思います。でも変わらなければ生き残れないと思い、計画を推し進めました。」

福田さんは、薬局の認知度を高めるため自治会活動に参加。地域のゴミ拾いや夏祭り、グラウンドゴルフ、百歳体操といった催し物に足を運び、地域の人たちと積極的にコミュニケーションを重ねていきました。また、薬局の隣に空いたテナントを、地域コミュニティづくりの拠点として確保。知人に紹介された地元のコミュニティデザインの専門家に協力を依頼し、まず取り組んだのがコミュニティスペースの存在を知らせるための「行きたくなる薬局を作るオープン会議」でした。

「月に一度、地元の人を中心にそのスペースに集まってもらい、そこでやったら面白いと思うアイデアを出してもらいました。7回ほど開きましたが、参加者は10人ほどの時もあれば40人も集まって立ち見だったことも。薬膳、バー、カフェから相撲、足湯、落語といったものまで、様々なアイデアが出ました。」
さらに、「まごころ茶屋」と名付けたそのスペースを多くの人に知ってもらうためのオープニングイベントのひとつとして、車いすを利用している人も障害を持っている人も、誰でもモデルとして参加できるファッションショーを公民館で開催。
好きな映画の主人公になりきった高齢者夫婦や、女優の装いを再現して歩いた女性、着物とタキシードを組み合わせた個性的なファッションで登場した男性など、参加したモデルたちはそれぞれに楽しみ、ファッションショーにはおよそ100人、オープニングイベント全体では200人もの来場者が詰めかけたのです。

「チラシを手に出かけてはたくさんの人に『来てください』と声をかけ、オープン会議やオープニングイベント、ショーの参加者や来場者を募りました。こうした立上げ時の運営や集客は、主体的に動くのは自分であっても専門家の協力が必要です。相談しながら進められたことで実現できたと感謝しています。」
一方、これらの取組を通じて、福田さんには気づいたことがありました。
「誰でも自分がやりたいと思うことを、楽しみたいんだということでした。洋服が好きなことでファッションショーを楽しめたように、ちょっとしたことでいいから、自分が好きなことで楽しめるものを持っていると、そこからみんな元気になれると実感できました。」

 

「行きたくなる薬局を作るオープン会議」の参加者たち

「行きたくなる薬局を作るオープン会議」の参加者たち

 

令和元年4月7日に開催されたオープニングイベントには、全体では200人もの来場者が詰めかけた

令和元年4月7日に開催されたオープニングイベントには、全体では200人もの来場者が詰めかけた

 

オープニングイベントの一つとして公民館で開催した、誰でもモデルとして参加できるファッションショー

オープニングイベントの一つとして公民館で開催した、誰でもモデルとして参加できるファッションショー

 

地域の中に自立のきっかけをつくりたい!~自分がやりたいことを楽しもう

 

不調を訴えるため毎日薬局を訪れていた90才の男性患者。話すことで安心して帰宅するという日々が続いていました。
「元々銀行員で、株や資産の運用を仕事にされていた方です。娘さんの退職を機に、証券会社をつくると言いに来られた姿は目が輝き背筋が伸びて、驚くほどの変わり様でした。最終的には娘さんに断られ、再び元気をなくしそうになったので、私の資産運用を手伝ってほしいとお願いしたんです。生きがいを見つけたことで、最近ではパソコンを教えてほしいと元気よく通ってこられています。」

やりたいことが見つかるだけで、こうも元気になれるのか。福田さんは驚くと同時に、生きがいの見つかる薬局こそ必要だと確信していきます。
そしてもう一人、福田さんには忘れられない人がいます。毎朝の散歩で空の写真を撮り続けていた、91才の末期がんの男性患者です。

「私の妻が、毎日ブログを更新されていますねと話しかけると、もうやめようと思うと返事が返ってきたんです。誰にも見られていないからって。じゃあ展覧会を開きましょうと提案し、3年間撮り続けた5000枚ほどの写真の中から1000枚を選び、プリントしてまごころ茶屋の壁中に貼りました。」
「空の写真展」と名付けたそのイベントは、50人もの近隣の人たちが足を運びました。それをきっかけに元気になったその男性は、接写に挑戦したいと新しいカメラを買い、近くのコスモス園に写真を撮りに出かけたり、毎日を楽しみながら元気に過ごされました。

さらに、まごころ茶屋に関心のなかったスタッフたちが、「空の写真展」を開いた患者さんのご家族から直接「ありがとう」と感謝されて以来、積極的に関わるようにもなっていきました。

「妻に言われたんです。本当に楽しんでいる姿を見た人は、それをきっかけに自分も同じように何か楽しいことをやりたいと思うはずだって。だから、まごころ茶屋で楽しんでいる人を見てもらうことが、自立のきっかけづくりになるはずだと。私が考える自立とは『自分がやりたいことをやって楽しんでいる状態』です。まごころ茶屋の活動も、『この人が元気になったら面白そうだからやりたい』というように、私自身がやりたいかどうかで決めています。」
自分が楽しいと思うことが大切だと言う福田さん。まごころ茶屋に集まる人たちが、自分らしく生きていると伝わってくる瞬間が、一番うれしいと言います。

 

生きがいを見つけ元気に「まごころ茶屋」に通う男性と福田さん

生きがいを見つけ元気に「まごころ茶屋」に通う男性と福田さん

 

まごころ茶屋で開催した「空の写真展」

まごころ茶屋で開催した「空の写真展」

 

「空の写真展」には50人もの近隣の人たちが足を運んだ

「空の写真展」には50人もの近隣の人たちが足を運んだ

 

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