すごいすと取材記

菊炭生産者今西勝 さん(77) 兵庫県

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森林ボランティアに支えられて

菊炭のためのまっすぐなクヌギを作るには、下草刈りなど、山の整備が重要だ。人口が減り、少子高齢化の進む地区の住民だけで担うには限度がある。日常の営みそのものが里山を育てていた時代から、能動的に保全しなければ守れない時世となった。

平成13年、県の要請を受けてNPO法人ひょうご森の倶楽部のボランティアが黒川地区で活動を始める。それまでは、個人への利益を避けるため、国や県、市の所有林に限っていたが、黒川は例外として、菊炭文化の伝承のために私有地で活動している。菊炭を守ることは原木のクヌギを守り里山保全にもつながる。ボランティアは「地域の人たちとともに伝統を守ること」にやりがいを感じ、猛暑のなか汗だくで草を刈る。今西さんと同年代の人たちが多く、「毎年年末に、今西さんの庭で餅つき大会があって、しし鍋を囲むのが楽しみ」という。

「山を手入れすると良い木ができる。良い木は良い炭になる」と今西さん。近年はほかにも多くのボランティア団体が山の整備を行うほか、子どもたちの体験学習も実施され、今西さんの炭窯の見学にも訪れる。

10年ほど前、見学に来た小学3年生に作業を説明するうち「なんでサラリーマンにならんとこんな炭焼きになったんやろ。失敗やったわ」と話したことがある。すると「何言うてんねん。サラリーマンしてたらぼくらけえへんで。おっちゃんが炭焼いてるから来たんやで」と言われた。今西さんは「なまいきや」と言いながらうれしそうに笑っていたという。

クヌギ林を整備するボランティアの皆さん

8月8日、猛暑の中、背丈ほどの雑草を刈りながら急な山道を登り、
クヌギ林を整備するボランティアの皆さん

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