すごいすと取材記

菊炭生産者今西勝 さん(77) 兵庫県

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次の世代へ

今西さんは、11月末頃に木を切り出し始め、12月から5月頃まで炭を焼く。炭窯に1回4トンの原木を並べ、火かげんしながら3日間燃やした後、ふたをして4日冷ます。最高750度まで上がる窯の中は、炭出しの日が来ても80度を超える。今西さんは防空頭巾をかぶって窯に入るという。ベルトコンベヤーなど使わず1本1本手で運ぶため、今西さん夫婦や長男の学さん家族、休日には今西さんの弟と次男も加わり、家族総出で作業をする。正月も休まず一連の作業を1シーズンで25回ほど繰り返す。

4トンの原木は、炭になると800キログラムとなる。家業を継いだ当初は400キログラムの炭しか焼けなかったが、今西さんは倍にしようと大きな窯を作った。焼く木も25センチ長くして1メートルに伸ばした。

「親のもう一つ上にいく気持ちでないといかん。どんな仕事でもそうでしょう」

今西さんは「炭焼きや農業は夢を育てる仕事」という長男の学さんに期待しているが、社会情勢を考えると孫の代まで強制することは出来ないと言う。

幼少のころから山や畑で遊び、炭焼きを手伝ってきた孫の良拡さん(15)は、伝統を守ることについて「できるとこまでがんばる。今まで続けてきたから」とはにかむ。窯の煙突の穴にマッチ棒をかざし「1、2、3」で火がついたら密閉して中の火を止めるタイミングも勉強したという良拡さんは、経験とカンがものをいう火を止める職人技が身に付くことを喜ぶ。炭焼きの合間と6月から12月までは農業を営んでいるため、家族旅行にはめったに行けないが、代々受け継がれている家業を誇りに思う良拡さん。炭焼きを拡大することはもとより、維持することも困難な時代がくることを見据え、将来について多くは語らない今西さんだが、そんな良拡さんの思いを嬉しく思っている。

約30年前の炭窯をつくる作業風景

約30年前の炭窯をつくる作業風景

ヤギのメーちゃんを囲む家族。前列が学さんと多恵さん夫婦。後列左から学さんの長男勇さん、次男良拡さん、今西さんの妻初子さん

ヤギのメーちゃんを囲む家族。
前列が学さんと多恵さん夫婦。後列左から学さんの長男勇さん、次男良拡さん、今西さんの妻初子さん

炭の配達に同乗したり農作物の商品作りも手伝う良拡さん。

炭の配達に同乗したり農作物の商品作りも手伝う良拡さん。
自然を相手に働く祖父母や両親のもとで育ち「水をやらなかったら枯れるように、何でも自分のおこないしだい」と、部活動の練習にも励む。

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