すごいすと取材記

シンガーソングライター、防災士石田裕之 さん(39) 兵庫県神戸市

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心で求め合った避難所コンサート

 

“上を向いて歩こう 涙がこぼれないように……(*)”
平成23年5月14日。石巻市の体育館は、あふれる笑顔で肩を組み、ギターの音色に合わせて体を左右に揺らしながら歌う被災者たちの大きな歌声に包まれていた。
「東日本大震災のボランティア活動に参加した石巻市で、がれきの撤去作業を終えた時『避難所でコンサートをしませんか』と社会福祉協議会から提案をいただきました。お受けしたものの、なんと声をかければいいのか、一曲目に何を歌えばいいのか、そもそも避難所で歌って喜んでもらえるのか、悩んでしまったんです。その気持ちを皆さんに正直に話し、歌いたい曲のリクエストをいただくことにしました。」
しばらくして、一人の女子中学生が手を挙げた。
「前で一緒に歌ってくれる?」
石田さんの呼びかけに応え、楽しそうに歌った女子中学生を皮切りに次々とリクエストの輪が拡がり、最後は全員での大合唱になったのだ。
「その光景は忘れられません。音楽ってすごい、歌の活動を続けてきてよかったと、人生の中で一番強く思いました。」
当初は遠巻きに眺めていた人たちも石田さんに握手を求めて行列を作る中、一人の年配女性が言葉をかけてきた。
「避難所のコンサートで、私たちに歌わせてくれたのはあなたが初めてよ。泣きたい時、叫びたい時、笑いたい時や歌いたい時も、避難所だからずっとこらえてきた。大きな声で一緒に歌えて、ちょっと心が軽くなった。ありがとう、また来てね。」
石田さんは「音楽がこんなにも必要とされ、喜んでもらえたことに感動しました。どんなボランティア活動でも、相手が心で求めていることに応えようと思いました。」と話す。
ギュッと握られた女性の手に「心がつながった」と感じた石田さん。心の声を聴くことの大切さを教えてくれた音楽との出会いは、中学時代にさかのぼる。

 

*坂本九「上を向いて歩こう」(作詞:永六輔)より引用

 

被災者たちに「絶対また来ます」と交わした約束通り、宮城県石巻市を毎月訪問。地元の人々との心の交流は、すでに70回を超えた。

被災者たちに「絶対また来ます」と交わした約束通り、宮城県石巻市を毎月訪問。地元の人々との心の交流は、すでに70回を超えた。

 

平成23年、被災者の言葉をつないで歌詞を作った復興支援ソング「やっぺす♡石巻」。「一緒にやりましょう」を意味する石巻の方言「やっぺす」には、被災者に寄り添う想いが込められている。

平成23年、被災者の言葉をつないで歌詞を作った復興支援ソング「やっぺす♡石巻」。「一緒にやりましょう」を意味する石巻の方言「やっぺす」には、被災者に寄り添う想いが込められている。

 

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