すごいすと取材記

ヴァイオリニスト樫本大進 さん(34) 兵庫県

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ライフワークとなった音楽祭

以来、音楽祭は毎年開催されて今年で7年目を迎えた。平成24年からは赤穂市と姫路市の共同開催となり、「赤穂国際音楽祭・姫路国際音楽祭」として、より規模が増したこの音楽祭。樫本さんが名付けた「Le Pont(ル・ポン)」の愛称で親しまれ、赤穂や姫路市民はもちろん、世界の実力派アーティストによる室内楽を楽しみに全国各地からも多くの人が訪れる。

「Le Pont(ル・ポン)」はライフワークのひとつであると語る樫本さん。忙しい日々の中でも、毎年開催に向けての準備を怠らない。

まず、世界各地の親交のある演奏家たちに自ら出演を呼びかける。この音楽祭は樫本さんを含む全ての演奏者たちの出演料は無料。赤穂・姫路の魅力を丁寧に伝え、ボランティアで参加してくれるよう依頼するのだという。

「演奏家にとって日本はとっても魅力的。良いホールがあって良い観衆が多い日本でぜひ演奏したいって言ってくれる。赤穂だって姫路だって初めから知っている人はまだいないけど、一度来ればまた来たいと言う。もちろん、おいしい日本食と日本酒を用意しないといけないけどね。」

ただ、出演してくれれば、誰でもいいというわけではない。期間中、共に楽しんでこのまちでしか聴けないレベルの高い音楽を作れる人でないといけないと、人選に考えを巡らせる。そして自ら約1週間に渡る音楽祭の公演テーマを決め、演奏曲目を選び、リハーサルスケジュールの組み立てまでも行う。

 

音楽祭が始まると、ドイツから赤穂に駆けつけて、時差ボケの体を休めることなく、到着してすぐ準備のためにスタッフとともに動き回る。次々に到着する演奏家たちの心や体の調子に気を配ることも忘れない。

そしてもちろん、全ての公演において樫本さん自身も出演する。

「ル・ポン2013」赤穂城跡特設会場

「ル・ポン2013」赤穂城跡特設会場

音楽祭では毎回、市内のヴァイオリン教室「ハーモニーヴァイオリンアンサンブル教室」の子どもたちと樫本さんの共演も見られる。実はこの教室、樫本さんが寄贈した20挺のヴァイオリンがきっかけとなってスタートした。樫本さんの思いを生かすために、市内のヴァイオリン講師によって、立ち上げられたのだという。教室のスタートから、今年で11年目を迎える。

「子どもたちとは毎回必ず一緒に演奏するようにしている。彼らとってもかわいいんですよ。毎年参加している子もいて、1期生の中には身長抜かれちゃった子もいる。」とにこにこ顔で教えてくれた。

「ル・ポン2013」赤穂城跡特設会場

「自分が音楽祭を始めるなら赤穂だと思っていた。子どものころは自分のルーツなんて考えなかったけど」音楽祭の開催を通じて、自分のルーツが赤穂にあるという意識を強くしていったと語る樫本さん。

「やるなら一度限りでは意味がない。ここでずっと続いていく音楽祭をつくりたい」と、聴衆も演者もまた来たいと思えるような特別な感動に満ちたひと時をつくることに力を尽くす。

市内のホールや特設会場で開かれるコンサート。特に目玉となるのは野外ステージでの演奏。これまでに赤穂城跡、閑谷学校、姫路城二の丸や書写山圓教寺でコンサートが開かれた。

「その場その場で聞こえてくるいろいろな音。例えばグァーグァーという鳥の鳴き声さえもひとつの音楽になる。そうした周りの音も含めた、全てがとけ合ってひとつの“まる”になるような、そんな瞬間が生まれたのを感じてきた。音楽家としてもそんなロケーションで演奏することはめったにない。ここでしかできない音楽祭を作っているという自負はある」とまっすぐに語った。

「ル・ポン2013」赤穂城跡特設会場

赤穂城跡特設会場

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