すごいすと取材記

株式会社灘菊酒造 杜氏川石光佐 さん(36) 兵庫県

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南部杜氏として

平成16年度の仕込みから、川石さんの杜氏としての生活が始まった。

100年の伝統を守っていく責任を背負ったプレッシャーは大きく、技術的にも不安だらけだった。

しかし同じ頃、兵庫県内で似たような境遇に置かれた2人の若い杜氏がいたことで、大きく助けられた。銀海酒造(養父市)の安木さんと、同じ東京農大の後輩である茨木酒造(明石市)の茨木さんだ。それぞれの蔵で酒造りに取り組みながら、互いに通い合って情報を共有することで、ひと冬に3倍の経験をすることができた。このことは若い3人にとって大きな力となり、杜氏としての自信につながった。

「酒造りが本当に楽しいものだと感じた1年でした」と川石さんは当時を振り返る。

写真:櫂入れの様子

酒を絞り出す前の段階である「もろみ」の発酵を促す作業。朝夕の毎日2回櫂入れ(かいいれ)する。

こうして研鑽を重ねること6年。一般社団法人南部杜氏協会が主催する平成22年の杜氏試験に合格した川石さんは、晴れて南部杜氏の仲間入りを果たした。約200人いる南部杜氏の中で、女性はわずか3人。西日本では唯一の存在だ。

南部杜氏とは、岩手県を拠点に長い歴史を持つ日本最大の杜氏集団で、仕込みの時期になると全国の酒造に出向いて酒造りを担う。その伝統の技術と文化を守っていくために難関の資格試験が設けられており、これに名を連ねる者は、杜氏仲間の間でも一目を置かれる存在だ。

胸を張って南部杜氏を名乗ることは大学生時代からの憧れだったという川石さん。「これで数々の偉大な先輩たちと同じスタートラインに立てた」と気を引き締めた。

写真:瓶詰め作業

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