すごいすと取材記

神戸大学大学院岸本吉弘 さん(48) 兵庫県

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岸本さんが、自身の絵に込めるテーマは「スケール感」。
「色同士、形同士のせめぎ合いを体感してほしい。色やタッチのダイナミズムを直に肌で感じることで、理解できなくても不思議な感覚や疑問が残ったり、その絵をとっかかりに以前と何か違う感覚が生まれたり変わってきたり……。そんな風に、いい意味で人を覚醒させ、根底の生き方さえも絵で変えることができたら。」
そんなメッセージは、教員としてのあり方にも通じている。

個展会場の様子、圧倒するようなスケール感(岸本吉弘個展「絵画レッスン」2016年春)

たとえば、理学部・農学部・医学部といった学生たちへの講義では、多角的に物事を見る機会になればと願っている。
「美術や絵画に触れることは、自分の中にない考え方や感じ方を体験し、豊かな感受性を育む機会です。それは相手の気持ちや立場を理解することにつながり、柔軟な発想力を養うことも可能になります。」
大切なのは「自分には理解できない絵を描いている人もいるんだ」という事実を理解しようとすること。そうした他者理解がその人の生き方につながり、人間形成の本質的なベースになってゆくと岸本さんは語る。
「自分が持っている可能性の引き出しを、絵画表現を通じて開いていく。この経験が私にとって人生の価値になるんです。」
教育や地域に関わるということは、こうした専門性や本質部分を実践レベルに落とし込み、ダイレクトかつやさしく伝えてゆくこと。そんな可能性をたっぷり秘めた贅沢な体験の場のひとつ。それが昨年、開催された「下町芸術祭」だった。

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