すごいすと取材記

合同会社シーラカンス食堂 代表小林新也 さん(27) 兵庫県

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小野の伝統産業を世界へ

小野でデザインの仕事を始めた小林さんは、需要の減少や後継者不足に悩む地元の伝統産業に対して強い危機感を持っていた。

一方で、ヨーロッパのデザイナーたちと交流を深めるなかで、デザインの先進地で活動する彼らが日本の伝統美に対して強い関心を抱いていることを感じていた。

「世界が注目しているにもかかわらず、地元の生産者たちがその価値に気付かなければ、次の世代に伝えていくことができない。今、意識を改めなければ、小野のそろばんや播州刃物は、近い将来、間違いなく作り手がいなくなってしまう」

小林さんは、友人の父親であるそろばん製造・販売会社の社長と会い、小野の伝統産業の価値を高めていくために何が欠けているかということを話し合った。

変化せずにここまでやってきたことが、一面では衰退へ導いたのかもしれない。社長の話から自分の「デザイン」が力になることに確信を持った小林さんは、そろばんや播州刃物のデザインを次々に手がけていった。

そうして、文字盤にそろばん珠をあしらった時計「そろクロ」が誕生。他にも、カラフルな珠のそろばんや、玩具など、小林さんの手がけた品々は、いずれも古くからの技術にデザインという新しい風を吹き込んだものだ。

また、伝統の美と洒落たデザインとを融合させた播州刃物は、小林さん自ら東京やパリで地道に販路開拓を行った。その努力が実を結び、近年では国内外の見本市で世界の注目を浴びるようになった。

写真:そろばんの珠でできた壁掛け時計の展示

そろばんの珠を生かしてデザインされた時計「そろクロ」

写真:多彩な色でデザインされたそろばん

こうして販路が世界に広がっていく中、刃物づくりの現場には、アメリカとイタリアから後継者として手を挙げる人が現れ、現在、彼らを小野に受け入れるための態勢を整えようと奔走している。

今年、経済産業省が推進する「クールジャパン」のプロデューサーにも選ばれた小林さん。播州刃物を日本独自の文化として海外に発信していくための大きな役割を果たしている。

また、「なくなってしまってはもったいないものを何とかしたい」という思いから、小野だけにとどまらず、西脇市の播州織や島根県浜田市の石州瓦など、各地の地域財産に脚光を当て、その魅力を引き出す活動にも力を注いでいる。

クールジャパン プロデューサー

地域資源の良さを地域の人々に再発見してもらい、海外需要者側の視点に立って改良するとともに、差別化を図ることによって付加価値をつけ、新市場へ投入させる役割を担う人材

写真:ピンクゴールドなど色味が加えられた握り鋏

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