すごいすと取材記

料理の力で社会を変えたい!
アジア人女性たちが取り戻す夢と自信

神戸アジアン食堂バルSALA 黒田尚子 さん(31) 兵庫県神戸市

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「おいしさ」が届けば、社会への関心が生まれる

 

「もし集客ができなかった時、どうやって続けていくんだ。お母さんたちの人生を、元に戻してしまうことへの責任を考えたことはあるかと言われ、言い返すことができなかったんです。」
集客できる力をつけたい。そう思った黒田さんは、お母さんたちに「3年待ってほしい」と伝え、飲食店広告の企画営業を手がける企業に就職。何十店もの店舗を担当し、開業に向けた知識と情報を得て3年後に退職。さらに1年の準備期間を経た平成28年7月、SALAをオープンしました。
「父に反対される前から、なんとなく気づいていたんです。当時のお客様は、社会貢献活動に取り組む学生や困っているお母さんたちを、応援したいから来店してくれる人がほとんどでした。でも、社会を変えたくて取り組む私たちが本当に知ってもらわなくてはいけないのは、この社会問題に関心のない人たちです。私たちの想いを知らない不特定多数の人が、どんどん来てくれる店であって初めて、伝えたいことが届くんだと。」

そのために今、黒田さんが大切にしているのは、料理を来店のきっかけにすること。料理に惹かれたお客様が店に通ううち、自然にSALAのコンセプトに気づき、つながりが深まっていくことが多いと言います。
「まだ関心のない人たちに、社会を変えたい、お母さんたちの存在に気づいて欲しいと、自分たちの想いだけを訴えようとしても届きません。でも、料理や店には興味を持ってもらうことができます。店内のいろいろなところに雑貨を飾ったり、SNSで料理を中心に発信しているのは、興味を惹くきっかけを散りばめたいから。まずは、『エスニック料理が食べたい』『おいしいから通いたい』という人に、来店していただくことが目標です。私たちの想いを伝えるのは、その後からです。」
こうして料理のファンが育ったことが、オープン3年目に訪れた存続の危機を乗り越える支えの一つになりました。

 

スタッフとして働くお母さんたちと黒田さん

スタッフとして働くお母さんたちと黒田さん

 

神戸アジアン食堂バルSALAで提供されている料理

神戸アジアン食堂バルSALAで提供されている料理

 

一人の想いが、みんなの想いに変わった!

 

「あと2カ月、耐えられるかな。」
オープンからちょうど3年を迎える頃、SALAは存続の危機と闘っていました。客足が伸びず、黒田さんは「無理かもしれない」と覚悟したと言います。転機になったのは、クラウドファンディングへの挑戦でした。
「お母さんたちが自立するため、タイの屋台をつくりチャレンジショップを開きたい!」

目指す未来とSALAのコンセプトを訴えると、共感の輪が一気に広がり、来店者もどんどん増えていきました。自分たちの技術を活かして欲しいというデザイナーやIT関係者など、たくさんの応援団も現れました。
さらに、コロナ禍に見舞われた令和2年4月、初めての緊急事態宣言が発令された時にも、2回目のクラウドファンディングで400人もの支援が集まり、危機を乗り切ったのです。
「自分の力だけではできないことばかりで、お店をつぶしてしまいそうになりました。そんな時、想いを伝えて助けを求めたことで、多くの人の力が集まり乗り越えることができたんです。自分の想いがみんなの想いに変わり、力が合わさることで、できなかったことができるようになることを、これからも信じていきたいと思います。」
変化はシェフやホールスタッフとして働くお母さんたちにも現れました。黒田さんに背中を押され、恐る恐る動き出すお母さんたちが、働き始めるとすぐに次の「やりたいこと」を見つけ、「店を出したい」「畑で農業がしたい」と、夢まで語れるようになると言います。

「アルバイトの学生たちが、頑張って店の告知に取り組んでいる姿を目にしたことで、お母さんたちも『負けていられない』と、定休日にSALAでイベントを開いたり、チャレンジショップに挑戦するようになりました。そんな様子にお客様まで『私も何か始めたい』と感化されたり、その広まり方が早くて広くて……。」
誰かが頑張っている姿を見たことで、その様子を目にした人も「頑張りたい」と希望を持ち実行する――。まさに、黒田さんがかなえたいと願うエンパワーメントの連鎖が、そこにありました。

 

アルバイトの学生たち、お店の広報にも積極的に取り組んでいる

アルバイトの学生たち、お店の広報にも積極的に取り組んでいる

 

チャンレンジショップにも積極的に挑戦!

チャンレンジショップにも積極的に挑戦!

 

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