すごいすと取材記

旧グッゲンハイム邸 森本アリ さん(44) 兵庫県神戸市

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イベントで伝え続ける塩屋の魅力

森本さんが帰国したのは、阪神・淡路大震災からほぼ一年後のことだった。
「がれきの山は処理され、更地が多くなっていました。日本は復興のスピードが速すぎると感じたんです」という森本さん。
「ヨーロッパでは、今でも町中に過去の痕跡や遺跡が残っていたり、歴史の積み重なりをそのままに見ることができたりします。それに比べ神戸の町は、ただ一掃されているようで、何も考えることなく新しいものにドーンと突き進む感じでした。都市計画でも、長屋があったところに、いきなり十何階建ての大規模な復興住宅ができている。記憶を消すのが早すぎるんじゃないかと違和感を感じていました。画一的で個性のない『のっぺらぼう』な町になっていくって……。」
比較的ダメージの少なかった塩屋は、区画整理も行われず、昔のままの姿が残り幸いだったと森本さんは感じていた。しかし一方では、被害の大きかった町は新しく開発され変化していくのに、塩屋だけが何も変わらず取り残されていると感じた人たちも多かったという。

六甲山脈の西端、海と山に挟まれた小さな町、塩屋

<六甲山脈の西端、海と山に挟まれた小さな町、塩屋>

 

「塩屋の町並みがそのまま残ったことは、恵まれていることなんだとわかってもらいたくて、町を多角的に楽しむイベントを始めました。」
そのひとつが平成26年から続く、塩屋の町を舞台にした文化祭「しおさい」だ。商店街の空き店舗を利用したアート作品の展示やワークショップ、ビルの屋上や人の家の庭、バルコニーなど、塩屋ゆかりの音楽家たちが30組以上も町の中で音楽を奏でる「しおや歩き回り音楽会」などを開催。小さな塩屋の町に、300人もの人が訪れるイベントになった。「中からの視点も外からの視点も大切。塩屋の場合、町並みが変わらないことが、いつの間にか、町の希少価値を高めていた。町の人も、そのことに気づき始めた」と森本さんが話す通り、商店街には、カレー屋、カフェ、ピザ屋、レコード店などの、若い商店主が構える店が増えた。どこか人なつっこい雰囲気、そして車の入ってこない歩き回りの町を気に入り、子育て世代や若い世代も増えている。そんな塩屋のまちづくりを、森本さんは「リノベーション」と表現する。

コンサート・展示・ワークショップなど、平成26年から継続している塩屋の文化祭「しおさい」

<コンサート・展示・ワークショップなど、平成26年から継続している塩屋の文化祭「しおさい」>

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