すごいすと取材記

東灘こどもカフェ中村保佑 さん(75) 兵庫県神戸市

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居場所づくりとは、一人ひとりの役割づくり

 

「どこか就職先はないだろうか…」「糖尿病で気を付けることは…」
お弁当やお茶をいただきながら、お互いに相談にのったり、情報を交換し合う「みんなの居場所」を活動のベースに、親子で立ち寄れるコミュニティスペース「ほっとステーション」、
困りごとを手伝う有償ボランティア「一般社団法人東灘なんでもお手伝いセンター(*)」や、女性による生活介護サービス「若葉サービス」、さらに手づくり弁当の昼食を高齢者や子どもたちに提供している「あたふたクッキング」、淡路島へ移住した仲間がまちとの交流のために開いた活動拠点「こもれど淡路」など、812人(令和2年8月現在)の会員を中心に、多世代交流の場を展開している東灘こどもカフェ。

新型コロナウイルス対策においても、積極的に取組に着手。
地域の高齢者や障害者への弁当の配達や、電話で話し相手を務める「10分間触れ合いコール」の開設、大学ボランティア団体との連携により、休校中の子どもたちの学習支援、お菓子の無料提供なども行ってきました。

「東灘こどもカフェでは、どんな相談や提案も断らないのがルールです。依頼を引き受けると『私ができます』と会員さんたちの中から声が上がります。ここは誰でも力を発揮できる場所なんです。」

例えば、77才から絵手紙を描き始めた男性は、周囲の人たちの希望に応え絵手紙教室を開き、88才の現在も継続中。カメラを提げて遊びに来た人がカメラ教室の開催を頼まれたり、洋裁が得意な80才の人はマスクづくりの先生になりました。84才の料理の先生は、おいしいてんぷらの揚げ方を教えています。

「こうした地域活動は、まず自分が楽しむことが大切。参加して楽しむ、役に立って楽しむ。最初から考えて取り組むのではなく、楽しいと思えることを提案したり引き受けたりしながら、自分たちで切り開いていく楽しさを大切にしています。」

頼まれごとを断らないこと、誰かに依頼することは、その人の役割をつくることだと話す中村さん。
「それがすなわち、居場所をつくるということです。子どもたちにも、お手伝いをするたびにスタンプが溜まるカードを用意して、楽しみながら役割を果たしてもらっています。東灘こどもカフェは、地域の困りごとを解決していく居場所でもあります。その解決方法の一つが、みんなが自分の持てる力を発揮することなんです。」
こうした活動の充実とともに中村さんの想いも広がり、地域にも少しずつ変化が生まれていきました。

*一般社団法人東灘なんでもお手伝いセンター:平成27年7月設立。東灘こどもカフェで約5年間活動していた「何でもお手伝いチーム」が一般社団法人化。

 

新型コロナウイルス対策として、大学ボランティア団体と連携して、休校中の子どもたちへの学習支援やお菓子の無料提供などを行っている

新型コロナウイルス対策として、大学ボランティア団体と連携して、休校中の子どもたちへの学習支援やお菓子の無料提供などを行っている

 

新型コロナウィルス対策として、子どもたちがお手伝いなどをしてスタンプをためる、「こどもスタンプカード」も実施

新型コロナウィルス対策として、子どもたちがお手伝いなどをしてスタンプをためる、「こどもスタンプカード」も実施

 

地域がひとつの家族になる、それが絆を結ぶ意味

 

東灘こどもカフェの活動を始めてまもなくの頃、ひとりぼっちの人の多さと共に、中村さんが気付いたもうひとつの地域課題。それは、阪神・淡路大震災から15年が経ち、挨拶を交わし合うことも少なくなった地域の姿でした。

「絆を結び直すには何をすればいいんだろうと、ずっと模索しながら続けてきた活動が、徐々に人と人を結び合わせてくれたように感じます。10年が過ぎた今では行き交う人が挨拶を交わし合い、地域が少しは家族のようになってきたと思います」と中村さん。

「こもれどに集まる人たちが、互いに気心の知れた関係になったり、子どもたちを孫のようにかわいがったり。人と人とのつながりが、地域の中に生まれ始めたと感じるんです。絆とは、神経細胞のようにつながり拡がっていくものだと思っています。会員さんの紹介で新しい人が来る、そしてさらにその友だちがつながっていく。そんな繰り返しの結果、虫捕り網の目のように人の繋がりの目が増えていけば、一つひとつが小さく詰まった目になります。そんな密度の濃い絆が地域に拡がることで、万一の緊急事態にも誰かが気付き対応できます。それが絆づくりだと思うんです。地域力とは、住民同士が知り合うこと。どれぐらい小さい網目で友だち関係を構築できるか。それが地域の安全を守る力にもつながっていくのだと思っています。」

自分たちが楽しむ場所づくりが、10年の歳月を経て東灘地域をつなぐみんなの居場所に育ちました。そんな地域活動の中で、中村さんには大切にしていることがあります。

 

「ほっとステーション」で行われている絵本の読みきかせ

「ほっとステーション」で行われている絵本の読みきかせ

 

「あたふたクッキング」では、手づくり弁当の昼食を高齢者などに提供

「あたふたクッキング」では、手づくり弁当の昼食を高齢者などに提供

 

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