すごいすと取材記

認定NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸 理事長中村順子 さん(68) 兵庫県

ギャラリーを見る

元気スパイラルを支えに

中村さんは様々な活動の中で、困難を抱えていても、後押しがあれば、人のために役割を果たすことができることを目の当たりにしてきた。

母親を亡くし、営んでいた喫茶店も全壊した60代男性は「自分だけ生き残った」と悔やみ、アルコール依存症になっていた。10回目の訪問で仮設住宅のドアを開けてくれた男性に、「日曜喫茶」を持ち掛けた。同じ仮設住宅に住む高齢女性が白いエプロンをしてウエートレスを買って出た。たてたコーヒーの香りに誘われ「客」が集まった。

「元気のスパイラルのスイッチが入った」と中村さんはいう。

移動が困難な人を送迎する活動では、下半身に障がいのある男性から「人の世話になってばかりでなく担う側になりたい」と申し出を受け、改造車でドライバーとして運転技術を活かした。

ボランティアの食事を作っていた主婦グループが役目を終え解散しようとした時には、独居高齢者へ弁当を届けるコミュニティビジネスを提案した。栄養に配慮しながら数十食も作れる力を途絶えさせるのはもったいないと思ったのだ。今年90歳になる太美京(たみきょう)さんは、不整脈や五十肩、腰痛など痛みにおそわれるたび引退を申し出たところ「治ったらまたやれるよ」という中村さんの言葉に勇気づけられた。「治そう」という気持ちが薬となって、昨年末まで20年務め上げた。

こうした人とのかかわりが、中村さん自身の心の支えになっている。

太美さん(右)らが始めた炊き出しから発展した「あたふたクッキング」

震災時に太美さん(右)らが始めた炊き出しから発展した「あたふたクッキング」は、メンバーの体調不良などで存続危機に陥ったが、今年から中村さんの夫・保佑(中央)さんが代表を務める「東灘こどもカフェ」に引き継がれた。

東日本大震災の被災地にも何度も訪れている中村さん。岩手県大槌町では「中村さんが来た!また怒られるー」と、笑顔で迎えられる。「当事者の力を削ぐような手助け」を防ぐため、神戸での経験をもとにワークショップなどでアドバイスする。それらは地元の相談員や支援員の口からは言い出しにくいことでもある。

地域内で被害の少なかった住民が仮設住宅で料理を作ってふるまう際、「酒1本つきで500円」など料金制にしてみると、ふだん行事に参加しない男性が顔を見せるようになった。次は外へ出よう、と「ふれあい農園」に発展し、男性の参加人数が増えているという。

岩手県大槌町で被害の少なかった人と仮設住宅に暮らす人を結ぶ「男の料理教室」

岩手県大槌町で被害の少なかった人と仮設住宅に暮らす人を結ぶ「男の料理教室」。

大槌町で、自立を促す支援者のためのワークショップ

大槌町で、自立を促す支援者のためのワークショップ。

1 2 3 4 5 6