すごいすと取材記

城下町洲本再生委員会会長野口純子 さん(71) 兵庫県

ギャラリーを見る

映画館のお嬢さん

淡路、洲本、南あわじの3つの市からなる淡路島。野口純子さんは、母の実家がある阿万町(現在の南あわじ市)に生まれ育ち、3歳の頃、洲本市に移り住んだ。

父は洋画の封切館「洲本オリオン」を経営していた。一人娘だった野口さんは、「映画館のお嬢さん」として何の苦労もなく成長したが、高校3年生の冬、突然父が他界。この時を境に、「映画館のお嬢さん」は館を切り盛りする経営者になった。

新しい映画の上映が決まるとポスターに刷毛で糊を塗り、電信柱に貼ってまわった。「風に吹かれたポスターが顔に張り付いて困った」と、無我夢中だった青春時代を懐かしそうに語る。

映画の全盛期だった昭和20年代、淡路島には17館もの映画館があった。そのうちの一つだった洲本オリオンも、250席の映画館として地域に親しまれていた。近所の人が普段の生活の中で映画を観るような時代、作詞家の阿久悠さんや俳優の笹野高史さんも常連客の一人だった。この頃、淡路にはオリオンが輝いていた。

ブームが下火になり、洲本オリオンは淡路島で唯一の映画館になった。それでも野口さんは、館内が一つになって笑い、泣く、そんな空間を共有できる映画の火を絶やしたくないと頑張り続けた。スクリーンに愛の言葉を映し出してプロポーズの場を提供したり、亡き父と通った映画館で息子と一緒に映画を観たいというお客さんのために家族だけの貸切上映をするなど、小さな映画館だからこそできることをやってきた。

昨年秋、止む無く休館することになったが、今も不定期の映画上映やコンサート、大衆演劇のホールとして活用している。

映画館洲本オリオン

淡路島最後の映画館洲本オリオン(現在休館中)

 

1 2 3 4 5