すごいすと取材記

KOJI OKAMOTO DESIGN OFFICE代表・デザイナー岡本剛二 さん(37) 兵庫県

ギャラリーを見る

故郷へUターン

東京でデザイナーとして仕事をしていた頃、帰省するたびに両親は但馬牛を用意して待っていてくれた。日頃食べられないような美味しい牛肉に舌鼓を打ちながら「この牛の皮は、どうなっているのか?」と考えた。肉と同じように資源になるのではないかと考え、但馬牛の服作りに取り掛かった。社内に「BLACK LINE」というサブラインを立ち上げていた岡本さんは、但馬牛の革でジャケットを作り、革をしなやかにするために、高温の湯で洗い上げることを思いついた。わざわざ湯を沸かさなくても、新温泉町は温泉処だ。源泉で洗う許可を取り、出来上がったジャケットを湯につけ、「BLACK LINE」の革ジャケットは完成した。

岡本さんは、新温泉町へ帰るたびに、シャッターを下ろした店が増えていくことに心を痛めていた。故郷を出て行った自分たちのせいだと責任を感じた。デザイナーとしての仕事は「東京である必要はない」

自分がこれまでに積み重ねてきた経験を活かして、大好きな故郷を元気にしたいという思いが募り、平成24年、家族と共にUターンする。「いつかパリコレに連れて行って欲しい」と言っていた中学校の同級生だった妻は少しがっかりしたが、いつ帰ってきてもアトリエにできるようにと、マンションの1階をガレージにして待っていてくれた父は、とても喜んでくれた。

新温泉町浜坂にあるKOJI OKAMOTO DESIGN OFFICE

新温泉町浜坂にあるKOJI OKAMOTO DESIGN OFFICE

アトリエの中。但馬牛、鹿、馬などの革ジャケットが並んでいる。

アトリエの中。但馬牛、鹿、馬などの革ジャケットが並んでいる。

故郷で独り立ちすることを決意したが、「なにもかも自分でしなくてはならない状況は不安だった」という。ありがたいことに、会社のスタッフが経営の相談に乗ってくれ、自分が作った「BLACK LINE」のブランド名は、独立後も使うことを許された。

東京で働いていた頃からもの作りにこだわり、産地に出向くようにしていた岡本さん。日本で見本を作り、海外で生産する企業が増えることが多くなり、技術を持った職人の跡を継ぐ人がいないことを憂慮していた。できる限り技術を形にして後世に伝えたいと、独立後はこれまで以上に伝統技術や産地にこだわったものづくりをするようになった。

西脇の播州織とのコラボレーションで作られた藍染のシャツ。

西脇の播州織とのコラボレーションで作られた藍染のシャツ。色落ちの速度が違う2種類のインディゴの糸を使っているので、着こむほどに風合いが変わっていく。ブランドタグにはブランド名を入れず、黒い1本の線が織り込まれている。デザイン帳に引いた1本のラインからイメージを膨らませていくことからブランド名は「BLACK LINE」とした。

ネット販売用に用意した写真は、自らが着て、アトリエで妻・舞さんがシャッターを押した。

ネット販売用に用意した写真は、自らが着て、アトリエで妻・舞さんがシャッターを押した。

1 2 3 4 5