すごいすと取材記

たつの市で、オーダーメイドの整形医療靴を作る。
想いに応えるおしゃれな一足で、
心豊かな生き方をかなえる菅野ミキさんの“一歩”

靴工房「&MIKI(アンドミキ)」代表・義肢装具士 菅野ミキ さん(33) 兵庫県たつの市

ギャラリーを見る

今に一生懸命取り組むことが、未来の靴づくりにつながっていく

 

ある日、20代半ばの男性が、仕事用の靴を求めてやってきました。採寸や打ち合わせで来店するたび、その男性はいつもきまってスウェットの上下を身に着け、カジュアルサンダルを履いていました。
「20数年間、ずっと変わらないスタイルだそうで、おしゃれに全く興味のない方だと思いました。どんな靴がご希望なのか尋ねても『わからない、派手でない靴がいい』とおっしゃるだけだったんです。」
2足目のデザインを決める打ち合わせの日、同伴していた姉に背中を押されて男性が選んだのは、初めての明るい色味のデザインでした。後日、仕上がった靴に男性が足を入れた瞬間、菅野さんは涙が出そうになりました。
「この靴に合う洋服を買いに行きたい!」と、男性が声を弾ませたのです。
「この方は、ファッションに興味がないのではなく、履ける靴がなかったために、洋服も選ぶことができなかったのだと気付きました。『服を買いに行かなきゃね』と、その日同伴されていたご両親と楽しそうに帰路につかれる背中を見送った時、この男性の生きていく世界が今日広がったのだと思いました。履きたい靴をあきらめないことは、生きたい人生もあきらめないことなんです。」
一足一足の整形医療靴から生まれるストーリーを重ねてきた5年間、百人以上のお客様と関わってきた菅野さんは、長く工房を続けていくことが一番の目標だと言います。

「1足目に納品した靴が修理に返ってきた時、『こんな靴を作っていたのか、今はもっと履き心地のいいものを作れる!』と思いました。でも当時の私も一生懸命製作し、自信を持って納品したことに間違いはありませんが、未来の自分から見れば、今の自分が一番下手です。10足目を作っている未来の私が、3足目を作った今の私の靴を下手だと思えるようになるためにも、今目の前にある仕事に一生懸命取り組まなければならないと思っています。ものづくりは、一日一日手を動かしていれば必ず上達します。作り続けてさえいれば、1足目よりも2足目、今日より明日、必ず腕は磨かれます。靴づくりも、その繰り返しだと思うんです。」
人に必要とされることが、人生を豊かにしてくれると話す菅野さん。フィッティングで足を入れた瞬間、「私、こんな靴が履けるんですね!」と喜ぶお客様の姿から、仕事の楽しさを実感できることが一番の幸せだと言います。障がいの有無にかかわらず、本当に履きたい靴を求める人たちが明日に向かう一歩のために、今の自分にできる精一杯の技術と想いを注ぎ続けます。

 

今の自分にできる精一杯の技術と想いを注ぎ、靴づくりに取り組む

今の自分にできる精一杯の技術と想いを注ぎ、靴づくりに取り組む

 

20代半ばの男性に製作した麻痺紳士靴

「20代半ばの男性に製作した麻痺紳士靴

 

菅野ミキさんの座右の銘「人間万事塞翁が馬」

菅野ミキさんの座右の銘

自営業を営んでいる義父が教えてくれた言葉です。私の仕事そのものを表しているなと思っています。よくできたと思っても、最後に履いていただいたら「ここが痛い」とお客様からご指摘をいただくことがあったり、私としては足先が丸くなりすぎてしまったなと思って納品しても、こんなに幅広く作ってもらえて履きやすいと喜ばれたり。人生もこんな風に、良いことも悪いことも表裏一体で予測できないものです。幸が不幸に転じることもあれば、逆に不幸から幸になることだってあります。
一喜一憂して安易に振り回されず、ありのままを受け入れていくこと。日頃から、地道に一生懸命励んでいる姿を、お客様に見ていただくこと。3歩進んで2歩下がるように、「確実に進む1歩こそ大切」という意味だと受け止めているんです

 

1 2 3 4 5

取材記の印刷用PDF

もっと詳しくふるさと情報

&MIKI

&MIKI Instagram

県の支援メニュー等

起業

西播磨県民局