すごいすと取材記

NPO法人おおやアート村 理事長田中今子 さん(51) 兵庫県

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動き出したアートによるまちおこし

よりよい創作環境を求めて移り住んできた田中さんは、かつて郵便局だった築100年を越す建物の2階に暮らし始めた。「この頃はまちおこしに関わるなんて微塵も考えなかった」と振り返る。

ところが、制作した作品を常設する場がなかったため、移住から3年目の平成20年、1階を改装してギャラリーをオープンしたところ、まちの人たちが訪れるようになった。そして、それまであまり親しい付き合いのなかった人たちと顔を合わせ、言葉を交わしているうちに、田中さんの中に新たな思いが芽生えはじめた。

「よそ者の私たちを受け入れてくれたこのまちを、私のアートの力で元気づけることはできないだろうか」

こうして田中さんは、自身の創作活動だけでなく、まちおこしにも目を向けるようになっていった。

写真:ギャラリー内部の風景

まちおこしに関わるきっかけになった田中さんのギャラリー「BlueBird」

ちょうどその頃、大屋で毎年開かれるアート展や地元作家の創作活動といった芸術資源と、大屋が持つ自然や歴史などの地域資源を結んで新しいまちおこしを目指す「おおやアート村構想」が動き出していた。田中さんも地元作家の一人として意見を求められたことをきっかけに、活動に関わることになる。

平成24年4月、その拠点として、廃校を活用した「おおやアート村 BIG LABO(ビッグラボ)」がオープン。さらに、アートを中心に据えたこの地域振興活動を本格化するためにNPO法人を設立することが決まり、平成25年1月、田中さんは周囲に押される形で、NPO法人おおやアート村の初代理事長に就任した。

「私は賑やかなことが好きな性格なので、どうせならいろんな人と交流したいと思って引き受けました。まちおこしには、若者、よそ者、ばか者が必要だと言われますが、外から来てしがらみのない私が適任だったんでしょう。もう若者ではありませんでしたけど」と笑う。

訪れる人が鑑賞するだけでなく、体験や制作もできる場として生まれたビッグラボを拠点に活動するおおやアート村。展覧会の企画、木彫や絵画などのアート教室の運営、子どもたちの遊び場としてのマンガ図書室や子ども工作室の提供など、活動の幅は多岐に渡る。そこには、田中さんの「アートへの敷居を低くしたい」という思いが根底にある。

また、他地域の作家の創作拠点になればと、ビッグラボでは貸しアトリエもある。アート村の活動を知り、一度は東京や大阪に出ていた地元出身の作家の卵がUターンして創作活動を始めるケースも出てきている。

写真:山とマークが写真上で重なり、校長先生が出現

借景を利用したアート作品「大屋富士男校長先生」は遊び心から生まれた人気撮影スポット

来春にはビッグラボ内に、地元の農産物を使った料理を楽しめるカフェをオープンする予定だ。そこで提供するパンやピザを焼く窯を、一般から広く参加者を募りワークショップ形式で製作している。

「カフェは地元に外食する場があまりないことから生まれたアイデアです。アートを目当てに来る人、農や食を目当てに来る人など、より多くの人たちに施設を訪れてもらえます」

 

今年の11月8日、9日、豊岡市の但馬ドームで「~出会い・感動~夢但馬2014 ふれあいの祭典 コウノトリ翔る但馬まるごと感動市」が開かれる。そのPRチラシやポスターの元となった原画は、去る5月25日にビッグラボで開催された「第4回大屋手づくり市」会場で制作されたもの。「たじまの夢」をテーマに、田中さんらの指導のもとイベントに参加した子どもたちが書き上げた作品だ。デザイン原画は、感動市の当日、会場に展示される予定だ。

写真:絵を描く子どもたち

子どもたちが思い思いの絵を描き、作品「たじまの夢」が完成した。

 

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