すごいすと取材記

NPO法人淡路島アートセンターやまぐちくにこ さん(43) 兵庫県

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アートイベントをデザインする

他方、自身も主に絵画を通じた表現活動を続けていたやまぐちさん。

絵画教室で子どもたちにいろんな素材を使って絵を描くことを教える中で、自分自身が多くのことにとらわれていると気づいたという。

例えば、平面の絵画に奥行きを表現するにはおおよそ決まった手法がある。が、ある時、

「なぜこの手法に則って表現しなければいけないのか」。

そう思ったやまぐちさんは、平面の絵にでっぱりをつけ、立体にしてみたのだという。

「絵の具とか画材とかにしても、これはこうじゃないといけない、というのが全部疑問に思えてきた」。

それからは自分がとらわれてきた枠をどんどんはずし、絵画や立体といった形にまとめることにすらこだわらない表現を繰り返してきた。

「そうしているうちに、五感を通じて淡路島の良さや問題点を発見できる、そんなアートイベントを企画することが、私の表現活動となったんです」。

表現活動について語るやまぐちさん

今、やまぐちさんはアーティストだけでなく様々な人とつながりを持ち、島の至る所で「淡路島」のありさまを形にし、島に新たな価値観を加えるプロジェクトを進める。

 

例えば自然のなかにアーティストが整備した歩行ルートを、訪れた人たちが歩き、体感する行為そのものを作品とする取り組みがある。淡路島アートセンターが中心となって実施するプログラム、「五斗長(ごっさ)ウォーキングミュージアム」だ。作品展示もされるが、その歩く道のり自体を、アーティストが作品として制作するという。

洲本市のコモード56商店街では、今年で8回目となる「淡路島アートフェスティバル」に向けて、アーティスト林僚児さんを招へいする企画が立ち上がっている。林さんは沖縄の商店街で「民俗×アート×まちづくり」を展開するグループのひとり。ある地域に長期滞在し、その地に応じたアート制作なども行なう。その林さんに、洲本でも商店街での「滞在制作」を行なってもらうというのが今回の企画。制作にあたってはアーティストと商店主の意思疎通が欠かせない。そういったコミュニケーションが生まれることも含めた企画だという。

コミュニケーションということで言えば、淡路島の方言がならんだ『べっちゃない手ぬぐい』は、「わからなければ淡路の人に直接聞いてもらうために」対訳がついていない。販売から2週間で200枚が完売した。

べっちゃないてぬぐい

イラスト付きで淡路弁が並ぶべっちゃない手ぬぐい。べっちゃない、とは「問題ない」の意

淡路地域雇用創造推進協議会が進める「淡路島はたらくカタチ研究島」。「淡路島の資源を生かし、魅力的なはたらく人、はたらく場、はたらく機会をつくる」として、島内の観光業や農水産業をより魅力あるものにするための参加型研究会などが行われている。

地方の雇用創出を目的として、厚生労働省が地域ごとの企画と実施地域を募集していることを知ったやまぐちさんと映像作家の茂木綾子さん、建築士の平松克啓さんが発案し、県や市に協働を持ちかけた。

「私たちで進めればいいと始めたのですが、実はしっかり県や市にも関わってもらわなければならなかった。ただそれによって県や地元3市、商工会議所・商工会、労働関係団体と連携し、結果的に大きな動きになっていった」と平松さん。特に行政側とは使う用語なども異なり、初めは戸惑いも多かったが、自分たちの畑に歩み寄ってきてもらえたことで、今おもしろいものが生まれていると語った。

やまぐちさんと建築士平松さん

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