すごいすと取材記

加古川市で、認知症になっても
安心して笑顔で暮らせるまちづくりに取り組む、
吉田正巳さんの“共生”

加古川認知症の人と家族、サポーターの会 吉田正巳 さん(76) 兵庫県加古川市

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認知症の本人に寄り添い、共に苦境を乗り越える家族会をつくろう

 

立ち上げのきっかけは、吉田さんの妻に起こった小さな異変でした。
「生まれたばかりの孫の世話に電車で出かけた時、普通電車と間違えて特急電車に乗ってしまい、降りる駅を乗り過ごしてしまったんです。帰りには、ハンドバッグを構内のトイレに置き忘れ、探し回るという出来事がありました。」
そうした小さな違和感が少しずつ増えていった2年後、妻に下された診断は若年性認知症(*)でした。

「最初は、まさか家内が…と頭の中が真っ白になりました。誤診じゃないのかと思ったくらい本当にショックでした。」
認知症も、認知症になった人の心がどうなっているのかも、当時は全くわかりませんでした。
「進行を止めたい気持ちが先走り、イライラして大きな声を上げたり、家内にあたってばかりいました。」
何一つ知らない認知症について勉強しようと吉田さんが決心した理由は、もう一つありました。周囲の誤解と偏見です。

「家内と一緒に散歩をしていると、『私が誰がわかる?』と知人が声をかけてくるんです。家内が『〇〇さんやろ』と答えると、『なんや、ようわかってるやん。認知症と違うんちゃう?』と言われて……。何もかも忘れ、何もできなくなるのが認知症だという間違った認識を強く感じました。」
その後、吉田さんはある講演で認知症の家族会があることを知り、妻と共に出かけましたが、そこに妻の居場所はありませんでした。

「家内は耳に入る言葉の整理ができないために混乱し、家族会が開かれている1時間半の間、立ったり座ったりじっとしていられませんでした。その家族会には、認知症の本人をサポートする体制がなかったんです。」
本人に寄り添い、不安を抱えている家族の精神的な負担を和らげる家族会をつくりたい。悩みを打ち明けて終わる会ではなく、そこから一歩前に進んでいける会を。

そう思った吉田さんを、加古川市内で社会福祉法人を営む幼友だちが後押ししてくれました。家族会設立の計画を法人の機関誌に掲載したところ、「参加したい」「勉強したい」「悩みを聞いてほしい」という電話が相次いだと言います。
こうして平成22年4月、認知症の本人と家族、地域包括支援センター(*)や通所介護施設の職員など約40人が集まり、「加古川認知症家族の会」(現「加古川認知症の人と家族、サポーターの会」)がスタートしました。

 

*若年性認知症:65歳未満で発症する認知症。仕事、家事、子育てのキーパーソンとなる年代に発症するため、就労支援など高齢者とは異なる支援が必要となる場合がある。

 

*地域包括支援センター:保健師、社会福祉士、主任ケアマネージャーなどの専門職が配置され、その専門知識や技能を互いに活かしながら高齢者の暮らしを支援する総合相談窓口。

 

吉田さん夫妻笑顔で寄り添う吉田さん

吉田さん夫妻
笑顔で寄り添う吉田さん

 

お孫さんと一緒に近所を散歩

お孫さんと一緒に近所を散歩

 

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