すごいすと取材記

加古川市で、認知症になっても
安心して笑顔で暮らせるまちづくりに取り組む、
吉田正巳さんの“共生”

加古川認知症の人と家族、サポーターの会 吉田正巳 さん(76) 兵庫県加古川市

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認知症になっても笑顔で暮らせる、やさしいまちを目指して

 

「一緒に散歩できて、しあわせそうやな。」「雨が降ってきたからビニール傘をどうぞ。」
吉田さんは、偏見を感じていた当初に比べ、かけられる言葉がやさしくなったと言います。特に印象深い思い出は、地元での盆踊りでした。
「やぐらを右へ回りながら踊るところを、家内は左へ回り始めたんです。すると周りにいた参加者の方々が、間違いを指摘することなく、家内に合わせて一緒に左回りで踊ってくれたんです。」

見張られていたよそよそしさから、見守られている温かさへと、周囲の変化を吉田さんは肌で感じていました。
「地域における認知症支援とは、本人だけを特別にケアすることではなく、地域の一員として他の住民と同様に活動に参加できるよう、地域全体をより明るく住みやすくすることだ。」と、町内会長に受け止められたことが感慨深かったと言います。

「認知症であっても、地域活動に参加することが大切です。例えば『今日は介護で時間のない吉田さんがゴミ当番だから、掃除を手伝ってあげよう』というように、自然に助け合えることが本当の認知症支援であり、地域づくりだと思うんです。『認知症になってしまった』と、誰もがためらいなく口にできる安心な社会をつくりたい。そのためには私自身も含め、受け入れる側が認知症を学び、認知症の人も心が生きていることを理解すること。それが明日の共生社会につながると信じています。」と言葉に力を込めます。

認知症になっても笑顔で幸せに暮らせる、やさしいまちを目指し、吉田さんはこれからも、妻の手を取り共に歩み続けます。

 

散歩中に近所の方と桜をバックに撮影

散歩中に近所の方と桜をバックに撮影

 

加古川市内で開講されている高齢者大学で講義を行う吉田さん

加古川市内で開講されている高齢者大学で講義を行う吉田さん

 

「元気会」の特徴は、認知症の本人が参加できること
この日は認知症の本人が講師として登壇後、完成した「元気会」のテーマソングの発表も行われた

「元気会」の特徴は、認知症の本人が参加できること
この日は認知症の本人が講師として登壇後、完成した「元気会」のテーマソングの発表も行われた

 

吉田正巳さんの座右の銘ひとりじゃない 仲間がいます いっしょに前に進みませんか

「私一人では、元気会を立ち上げることはできませんでした。」
みんなの応援に支えられたと話す吉田さんは「認知症の人も家族も孤独なので、仲間ができたことを喜ぶ会員さんが多い。つながると絆が生まれ、元気が出ます。人と人がつながってこそ地域社会。」と言います。
また吉田さん自身も、日々の生活が「引き算」から「足し算」に変わりました。
「退職後は、年賀状も同窓会もゴルフもやめよう、地域の役員も断ろうと『引き算』ばかりでした。でも家内の認知症をきっかけに、人との出会いや課題解決のための知識が増え、『足し算』生活になりました。その中でも元気会メンバーとのつながりは、人生の大きな財産です。」
そんな想いを届けようと、吉田さんたちは元気会のテーマソングをつくりました。
「一人じゃない、つながろう。大切な人と共に歩もうという歌です。ご主人を介護している会員が詩を書き、若年性認知症の奥様を介護されている知人が曲をつけてくれました。認知症になっても大丈夫なんだと感じてほしい。あなたはいつまでも大事な人だから、誰も見捨てたりしないというメッセージを、歌を通して送っていきます。」 

 

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