場づくりから始めるな!~まちづくり交流会レポートPart.2 「わたしのまちで“好き”を育てる」クロストーク
- 公開日
- 2024/03/29
私たち、まちで“好き”を育ててます!
わかりにくいことを、わかりにくいままやっていくのを許してほしい。
僕のことを「淡路のことを頑張ってる人や」って紹介されて……うれしかった。
「自分たちの好きなことを、自分たちでやるんだからいいでしょ」ってゆるり家をやってきた。
自分の好きなことは、言わんとあかん。
面白がれば、まちはつくれる。
集まるな。相談するな。計画するな。何が生まれるかわからない正解の無さこそが、実はまちづくりの「正解」かもしれない――。「やらなければならないからやる」のではなく、「やりたいからやる」。そんな地域活動を目指し、2024年2月9日(金)、加古川市「かわのまちリビング」で、4人の“すごいすと”によるトークセッションならびに、30人を超える参加者とのまちづくり交流会が開かれました。
【ファシリテーター兼登壇者】
佐伯亮太(さえきりょうた)さん/(同)Roof 共同代表、播磨町まちづくりアドバイザー、佐用町縮充戦略アドバイザー
15歳で学び始めた建築から都市計画、地縁組織への関わりや市民活動まで、幅広い経験を活かしながら、兵庫県内各地のまちづくりに関わっている。
【登壇者(50音順)】
富田祐介(とみたゆうすけ)さん/ (株)シマトワークス 代表取締役
2012年、淡路島へ移住。イベント企画からインバウンド観光、発信サポート、企業支援まで、企画力を発揮しながら、淡路島の内と外を人とアイデアの力でつないでいる。
濱田理恵(はまだりえ)さん/みんなのお茶の間 ゆるり家 代表
子育てサークル仲間と共に、2009年、地域の大人や子どもがゆるやかに集う場を加古郡稲美町で立ち上げ。児童館のような駄菓子屋や、中高生のための自習室が人気。
若狭健作(わかさけんさく)さん/(株)地域環境計画研究所 代表取締役
地域のブランディングや情報発信などを通して、住民と行政の橋渡しをする地域プランナー。尼崎にさまざまな楽しい仕掛けをする、まちのお兄さん的存在。
「みんな何をしているのか、わからない人だった⁉
まちづくりの現場で活躍する、4人の“すごいすと”たちの自己紹介から始まったトークセッション。活動をするうえで、一般的には「大切だ」と思われている“肩書”へ話が広がりました。
佐伯
まずは若狭健作さん。8年前、カードゲームを作っていた若狭さんに「一緒にやろうぜ」って言われたのが、初めての出会いでした。
若狭
「尼崎トゥーザフューチャー」っていうゲームです。遊んでいるうちに、尼崎のまちのことも考えているというカードゲームです。
佐伯
続いて濱田理恵さん。稲美町で、何してるんでしたっけ?
お金を払って勉強する学習塾と、お金を払わずに勉強できる学習支援の場が、一つの建物に同居する不思議な空間を運営されていますよね。
濱田
何してるんでしょうね(笑)。家を一軒借りて、駄菓子屋をしたり子育て広場を開いたりしています。
佐伯
最後は冨田祐介さん。……最近、何してるんですか?(笑)
面白いことをしながら、ちゃんとお金を稼いでいる人という印象です。3年ほど前、ワーケーション空間をつくったんですよね。
富田
淡路島の中でできる、いろんな企画を考えることを生業にしています。面白いと思ったことは何でもやろうという精神で、活動を広げています。
佐伯
私は、播磨町でまちづくりに関わること……カードゲームづくりや仲間集め、友だちづくりを、この15年くらいやっています。
「みんな何をしているのか、わからない人ですよね。」と笑う佐伯さん。名前を付けることによって、こぼれ落ちるものがたくさんあると言います。肩書が示す属性に引きずられ、それ以上に面白いことが起こるイメージが湧き上がってこないからです。
例えば、濱田さんのゆるり家では、「勉強ができる場所」を「放課後居場所カフェ」と名前を変えたら、「行かせたい」という保護者の声がぱったり途絶えたと言います。
一方、若狭さんは、現在、尼崎で古本屋を運営中。店番メンバーたちの名付けがユニークです。その名も「ロッキン・チェアーズ」!
若狭
近所の米屋のおばちゃんから、「本屋をやるなら、これがいるやろ」ってロッキングチェアを渡されたんです。SNSで店番メンバーに「明日、空いてない?」って声をかけると、「店番します」じゃなくて「ロッキンします!」って返信が来る。するとみんなが「ナイス、ロッキン!」って返してる。これが、店番ボランティアって呼ぶと途端に萎えるよね。
名前の付け方や呼び方も含め、「遊び」にして面白がる。実はまちづくりにとって、とても重要なことでした。
仕事にしようとして、始めちゃいけない
「めっちゃ“しょうもない”ことを、ずっとやっていたら、いつの間にか仕事になっていたことが結構ある。」すごいすとたちの、共通体験です。
富田
淡路島のインバウンド観光の企画に携わってから、島の歴史を話す機会が増えました。情報収集の範囲をアジアや食の歴史にも広げたら、まちを歩くのがとっても面白くなった。神戸市内も地図を見ながら飲み歩き、歩いてきたルートの話を店主にしています。
若狭
そういうところから、新しい企画が生まれるよね、絶対ね。
相槌を打つ若狭さんは、「自分の好きなことは、言わんとあかん!」と言います。
若狭
2年前から大相撲を見始め、今年から囲碁も始めたんですが、相撲も囲碁も習得すると世の中が違って見えて、人生の解像度が上がるんです。相撲好きな人や囲碁を教えてくれる人に出会えると、全然違う興味の扉が開かれる可能性がある。それがめっちゃ面白い。まちをフィールドにして活動する楽しみって、そういうところです。だから、自分の好きなことは言わんとあかんのです。
佐伯
一年間、絶対白いシャツしか着ないって知り合いが、2年後には自分で白いシャツを開発して売り出しました。好きを形にしたいけれど、「何をしていいかよくわからない」とか「どうしたら面白くなりますか」って相談されますが、その知人みたいに、まず「縛り」を作ってやってみたらって思います。
人を集めて場をつくるのではなく、まず、「自分がやりたいことを始めてみよう」と勧める“すごいすと”たち。佐伯さんは「何かを始める時、みんなでやろうとするとうまくいかないから。」と言います。
ということで、すごいすとたちが「今気になっていること」「やってみたいこと」を語りました。
「やったらいいやん、やめてもいいやん」
富田
「食の学校をつくろう」って言い始めてから2、3年の間に、いろいろな人が集まってきて事業としての歯車が回り出しました。今、めっちゃ楽しいんです。
若狭
僕は、材木店さんに木の端材を分けてもらって、みんなでスプーンを削るだけの活動を、2年くらいやってます。スプーンを削るのは口実。いろんな人と定期的に集まって、話してることが面白いんです。
濱田
駄菓子屋も、子どもが子どもだけで行っていい場所。買わなくても遊べるから、買わない子も来たりするし。
何かを始めようとする時、「こうしなければ」「こうでなくては」と、対象や目的、コンテンツや意味から考えようとしがちです。しかし、「ゆとりや遊び、余白を持ちながらやったほうがいい」と話す佐伯さん。今、気になっているのは、播磨町に張り巡らされている水路だそう。
佐伯
自治会のみんなでやっている水路の掃除を、遊びにできそうだなと思って。「誰も気づかないけど面白そう」っていうことを、ずっと探してるんですよね。
そんな佐伯さんは、面白そうだと思うことなら「やったらいいやん」と勧めます。
若狭
しょうもないことでも、小さくてもいいから、思ったことを始めるといいよね。ただ、始めたら続けなくちゃって気負い過ぎてる気がする。やっているけど楽しみ方がわからないなら、やめたらいいやん。
「小さく始める」「やめてもいい」を実践しているのが富田さんです。
富田
知人との飲み会の様子をSNSで配信しています。誰にも知らせず二人だけでやってるので、いつでもやめられるんです。僕自身はこの取り組みに将来性をめちゃくちゃ感じてるんですが、それくらいスモールでもいいんじゃないかと思うんですよね。
一方、濱田さんは「やめたこと」で「始まったこと」が……。
濱田
自習室を開くため、ゆるり家でやっていた塾を家に移そうと、自宅のリフォームを始めました。すると、主人がテイクアウトのお好み焼き屋をやりたいって言いだして……。今、鉄板の厚みをどれくらいにするか相談中です。
佐伯
ぼくは濱田さんがNPOを始めたことより、そっちが気になってます(笑)。
会場が笑いに包まれる中、質疑応答へ。二人の参加者が、“すごいすと”たちにアドバイスを求めました。
「地域を巻き込む」「好きを貫く」 “すごいすと”たちは、どうしてる?
【質問①】
もうすぐ小学校が廃校になります。地域を巻き込んで、活用方法を話せる場を開きたいのですが、皆さんならどういうイメージが湧きますか?
富田
みんなを巻き込む必要はないんじゃない?「これがしたいので、このスペースをください!っていうほうが、うまくいくんじゃないかな。
若狭
みんなで集まって「何する?」っていう相談からは“しょうもないもの”しか出てこない。予期せぬ成果や出来事が生まれることが、地域活動をやってる面白さ。
【質問②】
行政関係者です。テーマの「好き」を“貫く”ための自分軸やキーワードがあるなら、教えてほしいです。
若狭
好きなことは目移りするから、LOVEよりLIKE!
富田
わくわくすることを、5つ6つぐるぐる回している。好きなことが複数あるって結構大事。
佐伯
行政には、やれる範囲の中の最大リソースを、どこまで使えるか、どう遊べるかにチャレンジして欲しい。
話が尽きない中、トークセッションは登壇者を囲んでの「出会いつながる!交流タイム」へ場を移しました。
やりたい人が、やりたいことを始めよう
4人の登壇者それぞれの元へ参加者が集まり、4つの話の輪ができた中、偶然にも共通の話題は「あるべき答えにどうアプローチするかではなく、予期せぬことが生まれる楽しさを味わう。」でした。
生み出すためのきっかけづくりや、移住者と地元住人との関係性をベースにした視点について、さらに、まちで繰り広げられる活動を行政がどう面白くできるのかという話まで、それぞれのテーブルで熱いトークが続きました。
参加者の一人で、質疑応答タイムに廃校後の小学校活用について質問した男性(30代)は、「話し合い、仲間を集めて物事を進める。そんな段取りを踏まなくてはいけないという、凝り固まった考えに縛られていました。やりたいことを始めてから地域で動ける人を探せばいいんだと、楽に考えられるようになりました。」と話してくれました。
一方、まちづくりに関わる人たちのサポート業務に就いているという行政関係者の女性(50代)は、「気負い過ぎていた」と言います。
「『しなくてはいけない』ことを形にする力が足りないのに、“支援”という言葉を使うことにおこがましさを感じていました。でも、『やりたい人が、やりたいと思っていることを手伝えばいい。』と気付けたことで、少し肩の力が抜けました。」とホッとした笑顔を見せました。
“すごいすと”とは、「日々友だちを集めながら、面白そうだと思うことをやっている人のことじゃないかな。」と言う佐伯さん。わたしのまちで“好き”を育てるまちづくり。「自分がやりたいことをやる」という、シンプルなアクションから始めてみませんか。
軽快なトークの中に、笑いと本音と明日から動き出したくなるワクワクが、たっぷり詰まったトークセッションの様子は、ぜひ動画で全編をご覧ください。