灘地域活動センター(N.A.C)

兵庫県神戸市
灘地域活動センター(N.A.C)

22年目の復興支援ボランティア

平成7年に起こった阪神・淡路大震災。避難所で支援活動に取り組んだことがサークル立ち上げのきっかけ。[写真:平成9年HAT神戸の建設風景/撮影:大木本美通 提供:神戸大学附属図書館震災文庫」

避難所から「高羽仮設住宅」「大和仮設住宅」へ移った被災者たちのコミュニティ支援へと活動が拡大。[写真:鹿の子台仮設住宅/写真提供神戸市]

その後、災害復興住宅へ場所を移し、住民たちが近所同士のつながりを育めるよう「お茶会」と戸別訪問によるサポート活動に取り組むことに。

立ち上げから22年。大学生による「総合ボランティアセンター」と「学生震災救援隊」というボランティア団体の中の、ひとつのセクションとして活動中。

代々の活動歴がつづられている議事録ノート。立ち上げの趣旨も、先輩たちの震災復興への想いも引き継ぎ続けている。

住民をつなぐお茶会活動

毎週土曜は「県営岩屋北町住宅」と「HAT神戸灘の浜」2か所の復興住宅で、住民同士がつながるためのお茶会を開催。

参加する住民は高齢者が中心。歌や体操、工作やゲーム、学生の手づくり料理など、様々なレクリエーションを通じて気持ちが一つに。

「これが生きがい」と待っていてくれる住民たち。住民と学生、お互いが相談し合える信頼関係が築かれていく。

毎週の活動に加え、年4回季節に合わせたイベントを開催。住民たちの笑顔に出会えることが次の活動への原動力。

イベントでは手づくりチラシを戸別に配布。それをきっかけにイベントやお茶会に参加してくれる人も。新しい顔に出会えるのは最高にうれしい瞬間。

人の喜びが、自分の喜びに

イベント企画は1回生が担当。先輩の後をついていくだけの活動から、自らすすんで住民たちを気遣えるメンバーへ成長。

夏休みにはちょっと遠出して合宿へ。学習会やフィールドワークの報告に取り組む中で、仲間同士の親睦も深まる。

N.A.C.の活動を通して、社会の課題と向き合うきっかけや将来への道が生まれることも。

被災地の経験から生まれた活動に贈られる「1.17防災未来賞 はばタン賞」を平成27年度に受賞。

活動で返ってくるのは「喜び」と「楽しさ」。目の前の人に貢献しながら、自分も楽しむこと。それがきっと、ボランティアの入り口。

「場」をつくり「場」を守る

復興借り上げ住宅、認知症、孤独死問題など様々なテーマで学習会を開き、みんなで知識を深め合う。住民にもっと寄り添うために。

毎年7月には阪神・淡路大震災の復興祭として始まった「灘チャレンジ」に参加。震災をきっかけに立ち上がったサークルとして、震災を学び、伝える機会を大切に。

東日本大震災を支援しようと開催された「神戸復興塾3.11支援集会」で日頃の活動を発表。平成29年には東北被災地でお茶会を開催。

22年の活動をつないで確信するのは、住民が仲良くなった関係を維持するための機会を、「つくり続ける」ことが必要だということ。

人とのつながりが元気を生む。ご近所のコミュニティという「場」をつくり、作った「場」を守り続けること。それがN.A.C.の復興支援。

グループ紹介

灘地域活動センター(N.A.C)

平成7年に起こった阪神・淡路大震災をきっかけに平成9年4月に、立ち上がった神戸大学のボランティア団体。
毎週土曜日、JR灘駅近くにある復興住宅「県営岩屋北町住宅」と「HAT神戸灘の浜」で、住民を対象にしたお茶会を開催。慣れない土地で、慣れない暮らしを余儀なくされた人たちにとって、孤独や寂しさを忘れられる、悩みを相談できる、友達に会える、友達をつくれる、そんなご近所同士のつながりを育める場所になるようにと、コミュニティ支援を続けている。

利用者は70代・80代の高齢者を中心に、およそ75人前後。「毎週楽しみにしている」という声、「楽しかった」と帰っていく人、「また一緒に!」と声をかけ合う人……。
「住民さんたちが楽しそうに話しているのを、見ているだけでうれしい!」とリーダーの田中さん。
活動を続けていてよかったと思えるのは、そんな光景を目にする瞬間だ。
時には住民の愚痴を学生が聞き、時には就職活動で疲れた学生を住民が励ます。長年にわたる活動で生まれた信頼関係が、お互いを支えている。
「住民同士の関係性を崩さないためにも、こうした出会いの場は大切。提供を続けたい。ボランティアだと固く受け止めず、おじいちゃんおばあちゃんとまったりする感覚で、自分の楽しみとして気軽に参加してほしい」と、学生ボランティアの参加を呼びかける。

結成から22年が過ぎた今でも「震災があってのボランティアサークルN.A.C.」という想いは変わらない。平成29年9月には東北の被災地で、“家に閉じこもらず外へ出よう”、“仲の良い友だちをつくろう”、“人とのつながりができることで元気になれる”、“孤独死だって防げるはず”、そんな想いとともにお茶会を開いた。
「新しくできた公営住宅でチラシを配り、集まってもらいました。自治会の方が『閉じこもりがちだった人が、ご近所同士でつながれたのは大きな意義がある』と言ってくださった言葉がうれしかった。」

「コミュニティをつくり、守ることが本当の復興支援だと思っています」と言う田中さん。仲良くなるだけじゃなく、仲良くなった後こそ大切。“住民が集まる場”、“住民と学生が出会える場”、“そんな場をつくり、守ること”。N.A.C.の活動は、これからも続いていく。

N.A.C. 田中裕大(たなかゆうだい) 神戸大学経済学部3回生

N.A.C. リーダー紹介

実は、ボランティア活動がしたかったわけじゃなかったんです。
「サークル活動に参加したい、自分でもできることって何だろう」と考えた時に浮かんだのがボランティアでした。
N.A.C.では、高齢者の皆さんとひたすらおしゃべりをします。皆さん人生経験が豊富なので、話を聴いているだけで勉強になることが多いんです。感覚的にはボランティア活動をしているというより、週一回、住民さんたちと仲良くなりに行っている感覚。今ではすっかり自分の楽しみになっています。

一番楽しかったのは、1回生の時に自分が企画を担当した秋のイベント。ハロウィンの飾りや、かぼちゃの茶巾絞りを一緒に作ったり、自分が頑張って準備したものが住民さんたちに喜ばれたのが、一番の思い出です。楽しんでもらえてうれしすぎました!
人に喜んでもらえることが自分の喜びなんだと、N.A.C.の活動を通じて気が付いたんです。それがきっかけで、人に喜んでもらえる仕事がしたいと思うようになりました。

リーダーになってから、ますますN.A.C.が好きになり活動が楽しいと思えています。その一方で、22年も続いているサークルだけに責任の重さも感じます。メンバーが減ってきていることを考えると、これからも活動を続けていけるだろうかって不安もついてまわりますが、僕たちが辞めたら、住民さんたちが出会う場がなくなってしまう。借り上げ住宅の問題や孤独死など、震災から生まれた課題はまだ完全には無くなっていません。問題を抱え続けている人がまだいるからこそ、そんな人たちを気に掛け合えるきっかけをつくるこの活動は、絶対に必要だと思っているんです。

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