私たちが住んでいる新温泉町にある岸田川。その岸田川は、この町になくてはならない存在だ。
岸田川とは扇ノ山に源を発し、新温泉町で日本海にそそぐ川だ。全長は24.8キロメートル、流域面積は193.8平方メートルになる。岸田川には、魚だけではなくゲンジホタルなどの昆虫やイシマキガイなどの底生動物も豊富に生息している。
河川水は、水田の農業用水や、冬場の消雪用水および新温泉町の水道水、発電用水などに利用されている。また、流域内では、県指定文化財である川下祭りや泰雲寺の巨木、しだれ桜がある。
そんな岸田川では、周辺でたくさんのイベントを行っている。例えば、「岸田川渓流釣り大会」だ。これは、毎年5月ごろに開催されており、アユやイワナなどたくさんの魚を釣ることができる。他にも「岸田川クリーン作戦」「新温泉町岸田川駅伝競走大会」「岸田川灯篭流し」などがある。
これらを通して、岸田川は新温泉町にとって必要不可欠であり、偉大なものであるということがわかった。私たち自身も知らないことがあったこの岸田川を、新温泉町を越えてもっと広く発信していきたいと思った。
そばにあるのに知らないことだらけ
ところで、私たちの生活に寄り添い、いつでも当たり前のようにそばにある存在のことを、普段みなさんは意識しているだろうか。
校歌や町民歌の歌詞にある山川などの自然のこと、自分がよく利用する施設の歴史、地域で行われる祭りの由来を、誰かに説明することができるだろうか。
私たちは、総合的な学習の時間を利用し、私たちが暮らす新温泉町について調べ、それを「高校生のすごい○○」の中で発表することにした。
4つのテーマから1つ興味を持ったものを班になって調べていくことにした。
私たちは「岸田川」というテーマを選び、同テーマを選んだ同級生4人と班を作って岸田川の何について調べるか話し合った。何より小さなころから見たり触れたりしてきた存在だ、「ちょっとしたこと」をテーマに据えて調べればいい、そう考えていたからである。
だが、いくら話をしてみてもテーマは一向に決まらなかった。小さな案はいくつか出たものの、どれもあまりピンとこない。「ちょっとしたこと」はないだろうかと頭の中を探ってみてもろくに浮かんでこない。
そこで気づいた。そもそも、私たちはあまり岸田川のことを知らないのではないかと。そこに在ることが当たり前で、身近すぎて、ほんの少しの気づきさえなく今まで意識してこなかったのではないだろうか。
みんなの川魚へのイメージは?
身近に岸田川がある私たちでもよく知らなかったので老若男女、誰にでも親しみを持ってほしい、現代っ子は魚嫌いの人が多いので、おいしく食べられるようなレシピを考えたいという話し合いから、私たちの活動の目標は「川魚をおいしく調理して、岸田川をみんなの身近なものにしよう」に決まった。
みんなが川魚をどう思っているのか知りたかったので、イメージアンケートをとってみました。まずは、「川魚は好きですか?」という質問に対し、「好き」と答えた人は65%、「好きではない」と答えた人は20%、「どちらでもない」と答えた人は15%で、好きな人が過半数いたので少し安堵感を覚えた。そして、「川魚のイメージはどんな感じですか?」という質問に対して、「魚の臭みが気になる」という回答が50%あり、「塩焼きにして食べるイメージがある」という回答は10%、「その他」の回答が40%で、魚の臭みを気にしていた人が多かった。そして、川魚が好きでないと答えた人の理由を聞いてみると、「臭いから」、「においを取り除きにくいから」、「食中毒の危険性が海魚よりも高いから」など、やはり臭みやにおいを気にしている人が多かった。そこで、私たちはこのアンケートを元に臭みがなく、誰でも食べやすい料理を調べてみた。
魚嫌いだけどおいしく食べられた!
私たちは、川魚に苦手意識を持っている人や、子どもでも食べやすい料理を考えてみた。そして、コロッケにしようと思った。
川魚のイメージアンケートで問題に上がった臭みを取るために、白ワインを使ったり、皮を丁寧にはいだりした。また、食べやすくするためにカレー粉や粉チーズ、ケチャップを混ぜてみた。
試作品を先生方や生徒に食べてもらい、アンケートに答えてもらった。その結果、ケチャップ味が一番人気だった。魚が苦手だという生徒からも「おいしい!」と食べてくれたことが一番うれしかった。
反省点は、「ジャガイモにあまり火が通ってなくて、ゴツゴツとした塊ができてしまい、主役である魚をあまり目立っていない」とこという意見をもらったことだ。魚の身をほぐしすぎてしまったことも、魚が目立たなかった原因だと思った。
これらの反省をいかし、もう一度、調理をした。魚の風味をしっかりと残すために、味付けを少し薄くし、じゃがいもの量を減らした。自分たちで試食してみると、一回目に作ったものよりおいしくできた。
想像していたより簡単に臭みを取ることができたので、こういった簡単な調理方法を伝えていくことで、もっとたくさんの人に川魚を食べてもらえたらいいと思った。
この活動を通して、川魚の魅力を再確認することができた。アンケートで川魚が好きではないと答えた人の理由が「臭いから」、「においが取り除きにくいから」など川魚へイメージが悪かった。
しかし、調理工程に少し工夫を加えることで「食べやすかった」「魚が苦手だけどおいしく食べられた」などの感想が得られ、私たちのテーマである川魚をおいしく食べるという点では良い結果だった。
岸田川は、生息する生き物や植物を守るとともに、私たちの生活も力強く支え、祭りなど新温泉町の文化に深く根づいてきた。このことは、岸田川の魅力であり、新温泉町の魅力であると思う。今まで気づくことのなかったそのことに、調査をする中で気づくことができた。
私たちは岸田川に支えられて毎日を過ごしている。ならば、自分たちの生活を支えてくれるその存在を私たちは守っていくべきだと思うし、なにより地域に寄り添う岸田川の魅力をこれから先、広く知ってもらいたい。そのためにも、今回の私たちの活動を通して、岸田川に少しでも興味を持ってもらえたらと思う。
1年生の「総合的な学習の時間(基本総学)」の中で取り組んで頂きました。
新温泉町にある様々な地域資源の中から、岸田川、農業、福祉、但馬牛の切り口で、みんなが知っている地域情報を出し合うワークショップからスタートしました。
1学年全員(約80人弱)で授業に取り組んできましたが、とてもアットホームな雰囲気だったのが印象的でした。
記事には入っていませんが、放課後に友達と釣りに行く生徒や、アユ釣りの大会で優勝したり、鳥取市まで釣り道具を買いにいく熱心な生徒もいました。
そういった岸田川と触れ合う生活環境があるからこそ、岸田川の水質変化を心配する意見も出ていました。
「川魚を料理する」というユニークな発想から岸田川の魅力を再発見するプロセスや、先生や友達にアンケートを取って裏付けしていくことも、生徒自身が考えて自主的に進めていくことができました。
岸田川に関する情報を出し合うワークショップ
一眼レフカメラに触れる
プロカメラマンによるカメラ講座