目次
楽しみながら活動することで、
担い手の輪を広げる。
天満南地区は、稲美町の南西端に位置し、県下最古のため池「天満大池」を有するなど、水と緑に囲まれた自然豊かな地域である。また、都市部と隣接していることから、工業化や宅地化も進むなど、住環境も整った地域となっている。
しかし、昨今は少子高齢化が進み、地域の全人口が減少傾向にあり、小学生も減少、小学校では使用していない教室が増加している。また、地域内に文化的なコミュニティ施設がなかったことから、小学校を利用し、地域の人々が活用して、交流の機会と、場を生み出そうという気運が生まれ、天満南小学校を拠点とする「なんなんまちづくりの会」の活動が始まった。
設立は平成2年。以来28年間、活動メンバーが増え続けているとのこと。メンバー間の繋がりの強さを活かし地域活動を積極的に続けているこの会の秘訣を、リーダーの皆さんに伺った。
天満南地域の特徴
天満南地域は、多くのため池を有する稲美町の南西に位置し、白鳳3年(675年)に築かれたという記録が残る県下最古のため池「天満大池」がある。もともとは水が乏しかったこの地は、先人達の智恵と努力によって築かれた多くのため池により、水田に必要な農業用水を安定的に確保できるようになったことで、県下有数の穀倉地帯となった。
また、神戸市・明石市と隣接していることから、工業化、宅地化も進むなど、豊かな自然環境と住環境が調和した地域として、現在約4500人が生活している。 宅地化によって大きな団地が建設され、一時期は子ども達の数が増加していたが、現在は少子高齢化が進み、子どもの数が減少。『稲美町立天満南小学校』は、全校生徒数約190人の稲美町内5つの校区の中で一番規模の小さい小学校となっている。
なんなんまちづくりの会
平成2年に発足したなんなんまちづくりの会(以下、まちづくりの会)は、天満南地区にある8つの自治会や、PTA、子ども会、消防団、老人会や小学校の先生など、さまざまな団体の代表者の方を中心に運営がなされる、メンバー62名の大所帯だ。『みどり豊かな田園 こころ豊かな人々 ふれあい豊かなまちづくり』 をテーマに活動している。
設立当初から、「文化部」「体育部」「総務部」の3つの部門があり、それぞれ会長・副会長が中心となって交流イベントなどを実施していたが、県民交流広場を運営する協議会と合併したタイミングで「広場部」を設立。現在は4つの部門で地域のイベントだけでなく、日頃からの交流を積極的に行っている。
何度も検討を重ね、現在の建物を建替える際に建物の形態と、色彩に配慮するといった緩やかな基準を適用することで景観の修景を進めるという着地点を見出し、平成25年には念願の指定を受けた。「まちづくり部」では現在も斑鳩寺参道への案内図を含めた道標の設置や、花回廊の整備などに取り組んでいる。
地域の人が集まる「なんなん広場」
まちづくりの会の活動拠点は、天満南小学校内にある「なんなん広場」だ。
なんなん広場の開設当時は、地域の人であっても小学校へ立ち入ることを危惧する世論が強くあった。しかし、ここ天満南地区がある稲美町では、地域の目を犯罪の抑止力にしようという考えから、小学校の中に地域の人が集まる場を作るとの方針を掲げ、天満南地区では学校の中に「広場」を設置することとした。
「まちづくりの会では、少子化により空いた教室を「空き教室」ではなく「余裕教室」と呼び、その余裕教室を利用し、「貸し教室」と「ふれあい喫茶」を行っている。
貸し教室は、70以上の地域団体・サークルが利用。PTAや子ども会など、小学校と縁の深い団体はもちろんのこと、体操や英会話、マンドリンなど、様々なサークルの活動場所となっている。
「ひとつのグループが平均月2回ほど利用していますので、単純計算でも月に140教室くらいは、この広場を利用してもらっています。」と池田会長は話す。「気軽に利用できる使いやすさもあってか、一ヶ月前から予約受付をしていますが、開始から1~2日で埋まってしまうほどの盛況ぶりです。」と野田副会長は笑う。
また、ふれあい喫茶は、平日の10時~14時を営業時間として、ボランティア主体で運営を行っている。
小学校という立地を活かし、地域の方が集まりやすい雰囲気と、また生徒と地域の人が接点をもてる場として好評を得ている。
「給食後の清掃活動の時間帯など、子ども達が元気よく『こんにちは』と挨拶をしてくれます。普段から子ども達と顔を合わせられる環境があるということは、地域としても、とても良いと思っています。」と有馬副会長は微笑む。
「貸し教室」「ふれあい喫茶」ともに、利用する方が増えており、どちらも地域の人を呼び込むという点で相乗効果を発揮している。
イベントの企画・運営
まちづくりの会では地域イベントの企画・運営も行っている。当初は年間3~4つであったが、活動の中で「子ども達に伝統的な行事に触れる機会を作りたい、体験させたい」「3世代交流できる機会を増やしたい」という考えが出てきて徐々に増加、現在は年間8つとなった。
増えたイベントの一つ、天満南小学校運動会への参画『バラエティー競争』がスタートした背景には、生徒数の減少もあった。
小学校の運動会といえば、子ども達・父兄が楽しみにする地域の一大スポーツイベントの一つであるが、天満南小学校は、現在全学年1クラスずつということもあり、クラス対抗リレーといった競技の実施が難しかった。
種目も限られ、午前中で終わってしまうという状況だったため、まちづくりの会で「小学校の行事に参画して盛り上げよう」という声があがり、まちづくりの会主催で演目の1つを担当することとなった。「自治会に協力をお願いして実施しています。子どもが大きくなり、小学校と関わりのなくなった親御さんも地域にはたくさんおられるのですが、そういう方たちも小学校の運動会に参加する機会ができます。地域のおじいちゃん、おばあちゃん、おじさんやおばさんが沢山参加してくださり、子どもたちから大人まで一緒に楽しめるイベントとなっていますよ。」「天満南小学校の校長先生がまちづくりの会のメンバーに入っていることも、小学校行事への参画や企画が出てからスムーズに実施ができたポイントでした。」と池田会長はにこやかに話す。
その他、子どもたちが地域の伝統に触れる機会を増やそうと始まった『どんど大会』についても、天満南校区の消防団長がメンバーに入っていることで、万全の体制で実施でき、多彩なメンバーを擁していることが、まちづくりの会の活動を広げている。
担い手の輪を広げるために
地域の様々な団体の主要メンバーを中心に構成されるまちづくりの会。
また、冬のクリスマス時期から年始にかけて斑鳩寺周辺で行われる「キャンドルナイト斑鳩」のイルミネーションは、毎年協議会メンバーのお手製のもので、参拝者へのおもてなしとして、ぜんざいや甘酒をふるまっている。
各団体の長に就任することが入会のきっかけとなる。それぞれの団体の長としての任期には定めがあり、1年もしくは2年で交代ということになるのだが、現在のまちづくりの会は、任期が終わっても続けるメンバーが増え始め、現在は設立時の約2倍となっている。
その秘訣として心がけていることが、2つあるという。
1つめは、5月の総会後に開催する「委員研修交流会」だ。当該年度メンバーの初顔合わせとなる場であり、全員を対象に活動内容の説明を実施する。中には、知り合いが全くいない方も少なくない。
真面目な話を中心に据えつつも、一緒にお弁当を囲む、4部会に分かれてのゲーム、自分たちの地区や団体の話をするといったプログラムを通して、まずは仲良くなるきっかけを作ることで、組織に入りやすい環境を作っている。
2つめは、メンバー間の「積極的な声かけ」だ。会議などで集まった際には、名前を呼びあい、積極的に声を掛け合うことで、一つの団体としての士気を高める。「初めて来られた方は慣れない間、何したらいいのか分からない状態だと思います。何もせず、集まりに来るだけだったら『参加しなくてもいいかな』と思ってしまう。活動メンバーは大切な仲間ですので、我々役員(リーダー)は、ほったらかしには出来ません。積極的に名前を覚えて、声かけをしています。」「個々のメンバーにとって、まちづくりの会が居心地の良い場になることが一番ですし、楽しんで活動するということが大切です。」と池田会長は話す。
まちづくりの会が現在取り組む課題は、「リーダーの育成」だ。役員15名、三役はほぼ固定という状況をどう変えていくか。
今般、規約改正により、会長任期を3年と期限を定めた。
地域のさまざまな活動を楽しみながら、率先して活躍するメンバーが集まるまちづくりの会だからこそ、さらなる『活動の担い手の輪を広げることができる』という思いとともに、地域が一体となった『みどり豊かな田園 こころ豊かな人々 ふれあい豊かなまちづくり』の実現へ向けて、日々の活動とともに組織の発展を着実に進めている。
(取材日平成29年12月5日)
英会話教室にお邪魔しました
なんなん広場の貸し教室で、英会話グループが活動をされていたのでお邪魔しました。
この日は8人の方が活動。教室内の会話は全て英語で、取材陣のために、皆様が自己紹介をしてくださいました。和気藹々とした雰囲気と、流ちょうな英語での紹介に、日頃の成果を実感しました。活動歴の長い林さんは「みんなで活動できる場があるということで利用しています。ボケ防止で活動を始めましたが、とても良い環境で、長く続けられています。」とのこと。メンバーの方が活き活きと英会話を楽しまれている姿が印象的でした。