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ぐるっと生瀬運行協議会

CO+COすごい
2019/01/04
西宮市生瀬
ぐるっと生瀬運行協議会

西宮市生瀬地区のぐるっと生瀬運行協議会の地域活動、『ぐるっと生瀬』の事例をご紹介。

『ぐるっと生瀬』で
生瀬をぐるっと!

西宮市の北東部に位置する生瀬地域。豊かな自然が広がる街である。JR生瀬駅と武田尾駅間には、かつての路線を整備したハイキングコースがある。秋には紅葉が綺麗で、季節を味わいながら廃路線の上を歩いていると、ときどきトンネルが現れる。トンネル内部は昼間でも真っ暗で神秘的であり、子供から大人まで人気を博している。

山間のトンネルから『ぐるっと生瀬』がやってくる様子。撮影場所はJR生瀬駅前。分刻みの運行スケジュールの中、時間どおりに到着した。
山間のトンネルから『ぐるっと生瀬』がやってくる様子。撮影場所はJR生瀬駅前。
分刻みの運行スケジュールの中、時間どおりに到着した。

西宮市の中心部にはやや遠いものの、宝塚駅には、約1.5㎞と近く、便利である。古くからの歴史を誇る生瀬地区に加え、昭和50年代頃から、ニュータウン開発により山が切り開かれ、花の峯や青葉台などの地区が誕生するなど発展してきた。現在、地域内には9つの自治会が存在する。

宝塚駅にて『ぐるっと生瀬』への乗車の様子。バスのサイドにデザインされたポップなロゴが目印。阪急バスの停留所に留まるため、乗降は非常に便利である。
宝塚駅にて『ぐるっと生瀬』への乗車の様子。バスのサイドにデザインされたポップなロゴが目印。阪急バスの停留所に留まるため、乗降は非常に便利である。

 

エリアは広がったが、生瀬は今もひとつにまとまっている。「小学校はひとつのみ。子供がみんなそこに通っている」「一大イベントである小学校の盆踊りを通じて交流を深めている」といったことが、その鍵となっているようだ。

さて、こんな生瀬で、大きな課題となっているのが、坂の急勾配による問題だ。全体として坂道が多く、それも急勾配の箇所が少なくない。住宅地の中には平地よりも150mほど高いところもある。高齢化率が50%を超える地区も存在しており、ご年配の方にとって急坂の上り下りは非常に困難で、気軽に外出できないという状況が生じている。

 

『ぐるっと生瀬』の模型。なんと運行協議会メンバーの手作り。大変好評。クオリティの高さに皆目を丸くした。
『ぐるっと生瀬』の模型。なんと運行協議会メンバーの手作り。大変好評。クオリティの高さに皆目を丸くした。

ぐるっと生瀬とは

こんな状況を解決するために走り出したのが、コミュニティ交通『ぐるっと生瀬』だ。近年、地域住民の移動手段確保のため、コミュニティ交通を走らせる地域が増えつつあるが、多くは自治体が主導している。これに比べ、『ぐるっと生瀬』は、地域住民組織である、『ぐるっと生瀬運行協議会』を中心に、運行事業者(阪急タクシー)と行政(西宮市)とが三位一体となって運行が行われている、という点が大きな特徴である。

運行は平日のみで、1台のバスが約1時間30分かけて、宝塚駅発着の5ルートで生瀬をくまなく走破する。これを1日6回転(1部ルートを除く)。まさに、名のとおり生瀬をぐるぐると走り回るのが、『ぐるっと生瀬』である。 運賃は300円。一度の支払いで最大2ルートまで乗車可能。生活の足として利用することはもちろん、少し早く乗車して、他地区を巡ってみる方もいる。利用者によって用途は様々なようだ。

運行協議会の理事会の様子。常任理事であるボランティアの方16名、9つの自治会、老人会及び福祉社会協議会が協力して成り立っている。運行はもちろん、コース、停留所及び便数の決定や管理等のすべての事務について担っている月に一度開かれる常任理事会及び年に2回ほど開かれる理事会において話し合いが行われている。
運行協議会の理事会の様子。常任理事であるボランティアの方16名、9つの自治会、老人会及び福祉社会協議会が協力して成り立っている。運行はもちろん、コース、停留所及び便数の決定や管理等のすべての事務について担っている月に一度開かれる常任理事会及び年に2回ほど開かれる理事会において話し合いが行われている。

運行はこうして始まった 〜地域住民の大きな力〜

『ぐるっと生瀬』が現在の形となるまでには、様々な試行錯誤があった。その原点ともいえる取り組みは、青葉台自治会の有志が立ち上がったことにより、平成21年1月から始まった。

マイカーでの運行、ボランティアによる運転、さらに運賃は無料という枠組みであったが、関係者にとっては大きな負担となった。そのため4ヵ月で継続を断念せざるを得なかった。

その後、地域公共交通アドバイザー(※)による指導及び西宮市の支援の下、コミュニティ交通についての勉強会や先進事例視察等を行い、徐々に見識と仲間を広げ、平成24年10月に、9自治会のうち、5自治会が協力し、2回目となる5日間の無料試験運転を行った。

その際にはアンケートを行い、住民から「有償でも利用したい」「(若者にとっても)荷物が多いときなどにはありがたい」などの声があがり、その後の運行に向けて大きく前進した。他方で、「乗り切れない人が発生したことがある」、「未参加の自治会があり、生瀬地区全体の取り組みとして共通理解・合意形成ができるのか」などといった問題も浮き彫りとなった。

そこで、まずは生瀬全体としてのまとまりを求め、目指す目標を、「坂の多い生瀬地域が、将来にわたって元気な地域であり続けること」とし、それを実現するための「ツールのひとつとして『ぐるっと生瀬』を運行する」という組み立てとした。コンセプトを進化させた結果として、9自治会すべての参加を得ることができた。

そして遂に…

平成25年4月に運行協議会準備会が発足し、新たに阪急タクシーをメンバーに加え、同年度及び平成26年度に有料での試験運転を経て、更なる改善を行った。そして、平成27年5月に運行の中心となる、『ぐるっと生瀬運行協議会』を設立。同年10月2日、ついに本格運行が始まった。ここに至るまでの苦労が報われ、出だしから好調。現在も増便が行われるなど運行は日々前進している。

忘れてはいけない大黒柱。それは、運転手さんだ。バス内には、より快適な『ぐる生LIFE』を提供しようと、様々な工夫が…!行き先を示すLED掲示板や情報提供用のコミュニティ板、ドアの手すり等々…まさに運転手さんの心意気だ。みんなの熱い想いを乗せ『ぐるっと生瀬』は今日も走っている。

単なる‘足’ではない〜3つの『繋ぐ』〜

①住民と安心を『繋ぐ』「もう坂道で転ばない!」

急な坂道でも、バスに乗れば安全。誰かの助けが必要だった住民も、自分1人で出かけられるようになった。

また、住民の乗ったバスが地域を周回することは、子供たちの見守り隊としての機能が期待できる。人の目がある、ということが犯罪予防にも繋がっている。

『ぐるっと生瀬』は住民により多くの安心を与えている。

②住民と生きがいを『繋ぐ』
「明日はバスでショッピング!」

『ぐるっと生瀬』の拠点は阪急宝塚駅。自宅近くのバス停で楽々乗車。駅に向かえば、たくさんの店、たくさんの商品があり、ショッピングを楽しむことができる。また、バス内では、新規店舗やセールなどの会話が弾む。「その情報を生かして、珍しい店やお気に入りのお店を発見したり、新商品を見つけたりするのがとっても楽しい」との声がある。

「バスの時間に合わせて、早起きしている。規則正しい生活リズムに繋がった」、「生活に張りが出た」などの声もある。

『ぐるっと生瀬』は、住民の生きがい発見に貢献している。

③住民と住民を『繋ぐ』
「バスに乗ったら新しい友達ができた!」

バスの利用者同士で、ランチやショッピングを楽しむ『バス友』という関係も生まれている。

というのも『ぐるっと生瀬』には、バス利用者同士の交流が生まれやすいヒミツがあるのだ。それは、最大乗車人数が13人(運転手を除く)という絶妙な車内空間だ。市バスのように広すぎては交流は生まれない。乗用車のように狭すぎても交流は生まれない。つかず離れずの絶妙な距離感が、『バス友』を生み出した。『ぐるっと生瀬』の『バス友』、名付けて『ぐる友』!(笑)

他にも、「頻繁に外出をするようになった」「外出範囲が広がった」「他地区へ初めて足を踏み入れた」「数年ぶりに友人と再会した」などという声がある。

人と交流をすることにより、世界が広がり生活が楽しくなる。近くに住んでいても、場がなければ交流は生まれにくい。いつの時代にも人との出会いは大切である。

『ぐるっと生瀬』は、交流が生まれる場を提供しているのである。

『ぐるっと生瀬』は「住民と安心」、「住民と生きがい」、「住民と住民」を『繋ぐ』を実現させている。

『ぐるっと生瀬』をPR

(取材日平成30年11月7日・平成30年11月19日)

3つの活動ポイント

  1. 地域住民組織が中心となって、コミュニティ交通の運行を行っている
  2. 関係者が活動の先に「地域おこし」という共通の目標を掲げている
  3. “助ける”だけではなく、“助け合う”という姿勢で活動を行っている

ぐるっと生瀬運行協議会の
ここが好き・いいところ

ぐるっと生瀬運行協議会

阪上理事長さん

「一番大切なのは『継続すること』だと考えています。」

準備会の発足時より協議会を支え続ける。「『ぐるっと生瀬』の場合、協議会組織の『継続』がバス運行の継続に直結します。中心メンバーの不足や高齢化が課題となっています。」
「現役世代で、空いた時間に協力してくれる方もいますが、やはりメインで動くとなると難しい。」
他にも、「頻繁に外出をするようになった」「外出範囲が広がった」「他地区へ初めて足を踏み入れた」「数年ぶりに友人と再会した」などという声がある。
人と交流をすることにより、世界が広がり生活が楽しくなる。近くに住んでいても、場がなければ交流は生まれにくい。いつの時代にも人との出会いは大切である。
「継続には大変労力が必要です。生瀬のみなさんの協力が必要です。」
今後も『継続性』をキーワードに、組織運営の舵取りを行っていく。

ぐるっと生瀬運行協議会

石原事務局長さん

「初めはバスの運行に反対でした。」

「理由は、生瀬に来たのはその方の自己責任。だから、たとえ移動が困難になっても自分でどうにかすべきなのでは、と思っていたんですよ。」
しかし、青葉台自治会長になったとき「本当に地域の方が3人くらい、私の後を付いて歩かれるんです。『助けてください』と。それで本当に助けが必要なんだな、とわかりました。」同様の内容の手紙も、たくさん受け取ったという。
そんな時に目にしたのが、原点となる平成21年の取り組みの記録だった。「初めて尽くしの中、様々な困難に立ち向かわれたことに、心を打たれました。先輩方の頑張りを無駄にしてはいけない。私も頑張らないと、と思いました。」
今もなおボランティアで第一線に立ち続ける原動力だ。

ぐるっと生瀬運行協議会

阪急タクシー(花田さん)さん

「我々は、地域の方がおでかけしやすい環境を提供したい、という想いで参加いたしました。」

「当時は、タクシー事業以外に手を出したことがなかったので、コミュニティ交通の運行に携わることは、かなりのチャレンジでした。ただ、地域の皆様との結びつきをもっと強めたいと以前から願っておりました。そこで、思い切って参加を決意したんです。最初は苦労もありました(笑)勉強して事業免許を取ったり、新たにバスの運転免許を取得してもらったり。でも、本当に参加してよかった、と思っています。」
「運転手の皆さんも、ドライバー人生の花道として住民の皆さんの助けになれたことに感謝している、と言ってくださいます。私自身も生瀬のこの取り組みが、だんだんと楽しみになっています。」

ぐるっと生瀬運行協議会

地域公共交通アドバイザー(山室さん)さん

「我々よそ者だけでできる取り組みではない。間違いなく、そう思います。」

地域公共交通アドバイザーとして平成23年春頃から関わり続けている。相談があるたびに、もう一人のアドバイザーである富山大学の猪井准教授とともに、アドバイスを行っている。
「コミュニティ交通が本当に上手く機能するには、地域のために頑張ろうという想いを持ち、実際に考え、動く『人』がその地域にいらっしゃる、集まるということが最も大切です。」
「生瀬には、私たちが何も言わなくても、自発的に活動をされる方々がたくさんおられます。すごいことだと思います。これからもどんどん前進して、健康づくりや地域活性化に繋がってほしいですね。」
「なかなかたくさんの思い出がありますので、数分では語りきれませんね(笑)」

ぐるっと生瀬運行協議会

西宮市(山本さん)さん

「交通困難を解決した模範事例だと考えています。」

西宮市に対して「コミュニティバスが欲しい」と要望が寄せられることは少なくない。「市役所に相談に来られた方々には、『ぐるっと生瀬』の活動を紹介しています。実際に試乗をされた方もいらっしゃいますよ。他地域の方々も大変勉強になる、とおっしゃっています。」
「生瀬の頑張りを、西宮市の各地域に広めて行きたいと考えています。ゆくゆくは『第2第3の生瀬』が登場してほしいと思います。」
「『ぐるっと生瀬』のますますの快走。それが他地域に波及し、ひいては西宮市全体の活性化に繋がることを大いに期待しています。」

ぐるっと生瀬運行協議会

吉田副会長さん

「私たちの地域は、高齢化率が40%の後半なんです。生活する上で、バスの存在が非常に重要だと考えています。」

ぐるっと生瀬運行協議会

青山副会長さん

「私たちとしても助かっています。また、70歳を超える方が免許の返納を進んで行っている、と聞きます。」

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