江川地域づくり協議会
佐用町江川地区

「小学校の閉校で失われそうな、地域の元気を取り戻そう」

目の前を江川川が流れる山のふもとに、ひときわ目を引く建物がある。門柱に掲げられているのは、平成26年3月に閉校した佐用町立江川小学校の校名だ。

「小学校があった時は、苗づくりから田植え、草引き、稲刈り、脱穀、餅つきまで、全校生徒が住民と一緒に農作業を行っていました。住民たちも運動会に積極的に参加するなど、小学校を中心にして11の集落が一つになっていたんです。そんな小学校が無くなったことで、地域の元気まで無くなったように感じます。」

協議会の会長を務める木村政照さんが、少し寂しそうに語る。

また、元気な高齢者まで減少傾向にあり、入院やデイサービスへの通所者、施設への入所者が増え、伝統文化の一つである秋祭りも行えない集落が現れ始めたという。

「江川地域のいいところは11集落の仲の良さ。お互いが助け合いながら、暮らしやすい里づくりに取り組んでいます」と胸を張る木村会長。
発足から13年間、様々な地域づくり計画を実践してきた協議会が、最も手応えを感じているのが、平成22年10月より実証運行を開始した地域デマンド交通「江川ふれあい号」(*)だ。

*地域デマンド交通「江川ふれあい号」:事前予約で指定された場所へバスが走るドアツウドアの過疎地有償運送

 

旧佐用町立江川小学校

平成26年3月に閉校した佐用町立江川小学校。現在はドローンスクールとして民間企業が活用している。

「江川の谷に、みんなのバスを走らせたい!」

「コミュニティバスの説明を聞いてみないかと、佐用町役場から声をかけられている。」

協議会のセンター長を務める岡野俊昭さんが、役員たちに相談を持ち掛けたのは平成18年のこと。
当時まだ路線バスが運行していたこともあり消極的だった協議会だが、住民アンケートをきっかけに事態は変わった。同年7月、地域づくり計画の策定に向け、江川の地域課題を高校生以上の住民全員に尋ねたところ、93%という驚異的なアンケート回収率の中、最も多かった回答が交通問題だったのだ。

「高齢者は、路線バスの停留所に出て行くだけでも大変。そのうえ廃線になったら、買い物や病院にどうやって行けばいいのか。」という不安の声が地域住民の中から上がっていた。
地域交通の研究に取り組む大阪大学の研究室によるサポートの下、佐用町役場とも連携し、コミュニティバスの導入準備を始めることになった。

警察や陸運局への手続きに始まり、運転手の確保や講習の実施、料金設定、予約システムづくり、さらに道路の拡幅、安全地帯の確保、横断歩道の設置など課題が山積みしていた。地域交通の研究に取り組んだ5年間は、バスの導入が『できる』『できない』といった議論の繰り返しだった。

「本当に江川地域はバスを走らせるのか?」という周囲の声が出ていた平成21年8月、佐用町豪雨災害が発生。「これでもう実現は無理だろう」と誰もが思った3ヵ月後の11月、ついに初めての試験運行を実現させた。

 

江川ふれあい号

平成22年10月より実証運行を開始した地域デマンド交通「江川ふれあい号」

 

「住民みんなの願いを、どうしてもほっておけなかったんです。とにかくバスを走らせたいとの想いで一生懸命でした。試験運行の日は地域のみんなが集まって、それはにぎやかでした。」と楽しそうに木村会長が振り返る。

その後も試行錯誤と試験運行を繰り返し、平成24年4月ようやく本格的な運行がスタート。翌年4月には佐用町の手を離れ、社会福祉協議会との連携による協議会主体の運行が始まった。

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