真野地区まちづくり推進会
神戸市長田区

25年目の課題、未来へ残す震災の教訓

これまで真野地区では、震災から10年目、20年目といった節目となる時期に合わせ「感謝の集い」を開催。
震災を検証し、そこで得た教訓を様々な地域で共有してほしいとの想いで、様々な人を招待しながら取り組んできた。
25年目を迎える今回は、震災を経験した世代と知らない世代が一つのテーブルを囲んで、震災・復興・地域づくりについて語り合う、地元の人々に向けた祈念行事を開く。

「災害に対応できるコミュニティをつくるためには、過去の経験を共有するだけでは足りません。危機が起きた時、事前に想定しておく項目が多いほど、まちの再興は容易になります。」と清水さんは話す。

震災から25年、公害追放運動から半世紀。
住民一人ひとりが地域に向き合い、地域と関わり、世代交代を繰り返す中でも途切れることなくまちへの想いを次の世代へつなぎ続けた背景にあるもの。
それは住民同士の「信頼」だった。

 

阪神・淡路大震災25周年記念追悼式

令和2年1月19日に開催された「阪神・淡路大震災25周年
記念追悼式」では、講演のほか住民同士が語り合う安心・安全カフェが催された。

お互いを信頼する力、それが真野の地域防災力

「50年前、公害による切羽詰まった状況を、自分たちの手で克服したことで、自治会と住民の間に信頼が生まれました。」と宮西さん。

清水さんも「公害や震災は、我々がつくりだしたのではなく、課題の方からやってきたもの。手をこまねいていては、まちが疲弊してしまうため、自然と住民自らが立ち向かっていくコミュニティができました。推進会や自治会がてきぱきと方針を示せるのも、住民組織が速やかに実践できるのも、これまでに培われてきた信頼によるものです。」と話す。

そんな信頼関係を地域に築いてきたもの。
それは50年前から一貫して大切にしてきた「どんな議論も多数決で決定しない」という姿勢だった。

「少数意見を大事にしながら、何度でもとことん話し合います。それぞれの意見をしっかり出し切り、みんなで聴き入れ、相談を重ねること。それが地域の一体感を生んでいるんです。」と宮西さんは語る。

そうした積み重ねによる信頼の一例が、平成25年度に行った全世帯アンケート調査。回収率90%という驚異的な結果となった。

「回答から見えたまちづくりの課題に基づき、このたび20年後のビジョンを描いた第4期まちづくり計画が生まれました。『これからの真野プロジェクト』として、推進会が中心となって住民や工場、企業、行政に働きかけながら実現していきます。」と話す清水さん。
震災からの復興を通し、人と人との繋がりと地域が一つになった支え合いこそが、まちの安心・安全の基礎、すなわち地域防災力であることを示した真野地区。自治の力を継承しながら、真野のまちづくりは次の20年に向かって前へ前へ進み続ける。

 

(取材日 令和元年11月11日)

真野地区まちづくり推進会活動の3 つのポイント

  1. 地域行事の企画・運営に多様な地域団体が参画することで、 住民同士の連携と、自分たちのまちは自分たちでつくる意識を育てている。
  2. 少数意見を大切にし、とことん話し合って決めている。
  3. 広報紙やSNS を活用し、住民への地域情報の発信と共有をしっかり行っている。

わたしたちが大切にしている
真野への想い

中村博文さん

真野地区まちづくり推進会 副代表
中村博文さん

まちがこれから向かっていく方向と、自分の好きなことや取り組んでみたいことを、同じ目線で捉えていけたらいいなと思っています。 まずは自分が面白いと思えなくては、まちづくりそのものがつまらないものになってしまいます。 人のためでもあり、自分のためでもあり、まちのためでもある。 やればやるほど面白くなるようなまちづくりを続けていきたいですね。

伊藤鉄夫さん

真野地区まちづくり推進会 副代表
伊藤鉄夫さん

駅ができて地下鉄が通り、便利なまちになりました。 新しい家も増え、これからますます活気が生まれると期待しています。自治会長や推進会の副代表といった役職は、今も苦手なままですが、育ててもらったこの地域のためにも、この立場を好きになりたいんです。 「この地域から出て行くな」と言われているような、まちの力を感じています。

清水光久さん

真野地区まちづくり推進会 事務局次長
清水光久さん

公害問題や震災復興に取り組み続けることができたのは、真野のまちと人が好きだから、まちから出て行きたくないという想いだけでした。 自分たちを襲う問題に立ち向かう真野の人たちのエネルギーは、すごいものがあります。 その一方で、手押し車を押すおばあちゃんが倒れたら、助けに飛び出していくやさしさも併せ持つ人たちです。 私は、そんな真野の人間が大好きなんです。

三原廣巳さん

真野地区防災福祉コミュニティ 本部長
三原廣巳さん

40年にわたる地域との関わりの中で、一番印象深いのは子ども会活動が無くなったことです。 最後は3人のためだけに神輿をつくり、焼きそばを焼きました。 そんな少子化を考えれば、若い人の生活の場をつくることは大切です。 その一方で、防災においては空き地の確保も必要です。 仮設住宅を地区に建てる場がなく苦しんだ経験からも、空き地を守ることは地域を守る取組でもあると思っています。

山下才徳さん

苅藻通6丁目自治会長
山下才徳さん

自治会の課題の一つである空き家の建て替えでは、神戸市との交渉窓口として、住民の気持ちを分かった上でサポートをしてくれる推進会はありがたい存在です。私自身も、自治会長や民生委員という役割を通じて地域の人と関わることで、もっと人間的にも成長したいと思っています。

伊藤ゆかりさん

青少年育成協議会 真野支部 支部長
伊藤ゆかりさん

このまちに嫁いで38年になります。 下町ならではのつながりの中で、地域のみんなが子どもたちを見守ってくれました。ここで育つことができて感謝しかありません。 その子どもたちは今、地域の行事も率先して手伝ってくれます。 地域の中で育ててもらった子どもたちが、地域と共に生きることが、地域づくりの基礎だと思います。 若いお母さんたちに伝えていくことで、受けた恩をまちに返していきたいです。

宮西悠司さん

まちづくりプランナー・相談役
宮西悠司さん

日本全国でここまで育ったまちはないはずです。 人と人とのつながりにも、エネルギーが満ちる空間にも、地域力があふれるまちです。 日本一だと表現しても恥ずかしくないと思っています。 これからも、このまま前を向いて進むこと、若い次の世代が育つことを願っています。 その下地は十分にできました。大丈夫、真野は永遠です。

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