NPO 法人上山高原エコミュージアム
新温泉町奥八田地区

一人ひとりにふるさとへの愛着を育み、地域社会を守り続ける「核」をめざして

「この上山高原は、地域住民にとってシンボルであり、誇りに思える場所。奥八田地区の財産として愛し、大切に見守り続けてきた存在です。上山高原が生かされるだけで、7集落みんなの心が一本化されたのだと思っています。」と小畑さん、植田さんが声を揃える。
中村さんは「住んでいると気づけない地元の良さも、自然の素晴らしさも、自らが体験してみないとわからないものです。活動に携わり上山高原の長い歴史に触れる中で、もっと早い時期から地元のことを知らなくてはいけなかったと後悔しました。」と気持ちの変遷を明かす。
そして、自らが悔いたからこそ、「地域住民一人ひとりが上山高原をはじめとする地元を見直し、奥八田地区の自然や生活、歴史の素晴らしさを、地域外の人々に伝え広められるようにならなくてはいけない。」と、これから取り組むべき課題について言葉を続けた。

 

自然体験プログラムとして開催された「かんじきハイキング」

自然体験プログラムとして開催された「かんじきハイキング」


「エコミュージアムの活動が地域の生活そのものになれば、若い人たちも後に続けるはず。そのためには、誰かが行動を起こしてくれるのを地域の中で待つのではなく、こちらから資料を携え、周辺地域に説明に出向かなくてはいけないと思っています。
自然体験プログラムに参加してくれた人が、ふもとの温泉に立ち寄り、居合わせた人に『上山高原はとっても良かったよ』と紹介してくれる。そういう輪を広げていきたいと思っています。」と想いを新たにしている。
一方、馬場さんは「そこにある貴重な自然、山、渓谷を守り生かすことで都市部との交流を重ね、活気ある地域づくりをしていくことがエコミュージアムの使命。今の取組みをさらに充実させ、交流人口をもっと増やしたい。地域が元気になるための核になりたいと思っています。」と言葉に想いを込めた。

 

第二・第四日曜に開催される「日曜朝市」にはたくさんの人が訪れる

第二・第四日曜に開催される「日曜朝市」にはたくさんの人が訪れる


活動から15年目を迎えた令和2年3月。上山高原にイヌワシのつがいの生息が確認され、繁殖の可能性があることが判明した。 「15年間頑張ってきた活動が、ようやく実績として一つの形になろうとしています。」
ふるさと館に響く中村さんのうれしそうな声が、奥八田地区の明日を明るく包み込んでいく。

 

(取材日 令和2年8月27日)

NPO法人上山高原エコミュージアム 活動の3つのポイント

  1. みんなが認める地域のシンボルを心の財産として共有することで、 地域住民みんなの目指す方向をブレることなく定めている。
  2. 自然を地域資源として最大限に活かし、 都市部との交流人口を増やすことで地域の活性化につなげている。
  3. 地域住民に、具体的な行動を積極的に呼びかけることで活動を活発化させている

奥八田地区の地域づくりに関わる私たちが感じる
奥八田のいいところ

中村幸夫さん

NPO法人 上山高原エコミュージアム  代表
中村幸夫さん

久しぶりにふるさとの山を歩いた時、小雨の中に広がる新緑のブナの林が、言葉にできない幻想的な美しさでした。この感動をもっと多くの人に伝えたい。自然の素晴らしさは、自分が体験してみないことには人に語れないものです。まだまだ地元の知らないところを体験し、伝え続けたいと思っています。私の夢は、小さなかやぶきの居酒屋をつくり、囲炉裏を囲んでお酒を酌み交わすこと。たくさんの人とゆっくりコミュニケーションをとりながら、エコミュージアムの活動を地域の日々の暮らしのひとつに溶け込ませたいんです。

小畑和之さん

NPO法人 上山高原エコミュージアム 顧問
小畑和之さん

奥八田のような谷あいの村の自慢は、やはり美しい風景と自然がもたらす資源です。決して豊富とは言えないまでも、暮らしを支えるだけの水資源や、生活をするうえでの作物が手に入る環境が整っていたことで、地域の歴史を積み重ねてこられたのだと思っています。忘れてはならないのは、その背景にあった先人たちの苦労です。米の豊作を願って水路を引き、あぜ道を整え、様々な努力を積み重ねてこられた結果だと思うのです。それが、自分自身の誇りでもあります。

馬場正男さん

NPO法人 上山高原エコミュージアム 事務局長
馬場正男さん

1メートルから、山あいでは多ければ4メートルも積もる雪で、冬は出稼ぎを余儀なくされる。交通の便も悪い。子どもの頃から苦労して育ってきた思い出ですが、自分の生まれたふるさとに誇りを持っているのはみなさんと同じです。都会から来られた方が「一日中ここにいたい」とおっしゃるので、「田舎の不便なところ」に愛着が生まれるような良さを、みんなで見つけていけたらいいなと思っています。それを後継者として、次の若い世代に伝えていきたいんです。

植田光隆さん

NPO法人 上山高原エコミュージアム 副代表
植田光隆さん

地域活動では「できる人が、できることを、できる時に、できるだけしよう」という発想が必要だと思っています。年齢を重ねると「自分はもう年寄りだからできない」と言いがちですが、得意なことやできることは必ず何かあるはず。それを活かそうという気持ちが大事です。若い世代に伝えたいのは、自分の家を守ること、そして自分の家を守るためには地域を守ること。生まれた地域は自分の原点です。地域との繋がりは、大切にしなくてはいけませんね。

田中薫さん

NPO法人 上山高原エコミュージアム 副代表
田中薫さん

私の集落の自慢は美しい川。子どもの頃から清流が大好きです。3年ほど前から京都府の中学生およそ80人が、河原で飯ごう炊さんをしに来ているんですが、集落の高齢者たちが大喜びなんです。もっと他にも企画をしようと集落の中で思案中です。長い間、地元を離れていましたが、戻ってきて改めて川魚のおいしさや、畑の野菜に四季を感じられることの楽しさを実感することができました。活動の中心に携わってまだ3年。自分にできることから頑張りたいと思っています。まずは草刈りですね。

植村博昭さん

新温泉町 企画課 地域再生協働員(奥八田地区)
植村博昭さん

令和2年度の4月から、新温泉町では初となる地域再生協働員として奥八田地区に関わっています。令和3年度には7集落のための交流拠点が誕生し、その施設で地域支援を続ける予定です。現在の活動で印象深いのは、毎月2回開く朝市に高齢者がお茶を飲みに来られ、楽しそうに話をされている様子。少子高齢化が進んでも、みんなが元気で楽しく暮らせることが活動の一番の目的です。楽しいと感じるためには、一人でも多くの人が参加すること。地域の当たり前の生活として、こうした風景がもっと広がってほしいと思っています。

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