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NPO法人あぼしまちコミュニケーション

CO+COすごい
2020/12/25
姫路市網干区
NPO法人あぼしまちコミュニケーション

NPO法人あぼしまちコミュニケーションの地域活動をご紹介。

姫路市網干区で自治会が母体となって
NPO法人を立ち上げ、地域自治に挑む!
合言葉は「網干はひとつ!」

 

姫路市網干区で自治会が母体となって
NPO法人を立ち上げ、地域自治に挑む!
合言葉は「網干はひとつ!」

歴史や伝統が色濃く残る町並みや、多くの神社仏閣がたたずむ、歴史遺産も豊富なまち姫路市網干区。
姫路市のごみ処理施設が地域内に移転されるのをきっかけに、住民が団結し地域の活性化を目指した活動が始まった。
自治会が母体となってNPO法人あぼしまちコミュニケーションを立ち上げ、「あぼしまち交流館」を拠点に、地域住民・市・県との協働により様々なまちづくり事業を実施するなど、地域自治に取り組み続けている。

【NPO法人あぼしまちコミュニケーション】 平成20年12月、網干地域の6自治会が母体となって設立されたNPO法人。住民の活動拠点として建設されたあぼしまち交流館や、網干区網干浜に整備されたごみ処理施設「エコパークあぼし(*)」内の姫路市立網干環境楽習センター、姫路市立網干市民センターを運営している。自治会母体ならではのネットワークを活かし、自治会と市・県とのコーディネーターとして地域活性化に取り組んでいる。

*エコパークあぼし:市民の快適で衛生的な生活環境を維持するため、老朽化した旧美化センターに替わり新たに整備された施設。ごみ焼却施設のほか、資源ごみの再資源化施設や、ごみ・環境問題を楽しく学び体験できる環境楽習センター、ごみ処理の過程で生じる余熱を利用した温水プールなどを備えた健康増進センター、さらに芝生広場や遊歩道など市民の憩いの場が整備されている。

ごみ処理施設受け入れから始まった、地域活性化への取組

「わたしたちの地域で受け入れよう」
長い年月をかけた議論の末、網干地域の6自治会が決断したのは、姫路市の新ごみ処理施設「エコパークあぼし」建設の承認だった。
受け入れにあたり、官民一体となって地域活性化の実現に努めるという目標を、自治会・市・県が共有。その目標達成のため、網干の歴史的町並みと調和した緑豊かな施設をつくり、市内外の利用者でにぎわう空間づくりを目指すことになった。
この「エコパークあぼし」の建設に際し、もうひとつ進められた議論があった。
NPO法人あぼしまちコミュニケーション(以下、あぼしまちコミュニケーション)理事長の勢川正澄さんが、当時を振り返る。
「網干地域の課題は、6つの自治会間にほとんど交流がないことでした。
網干地域全体で集まって会合をし、地域の力を活かすための場所をつくろう。
そんな想いで相談を重ね、住民の交流・活動拠点となる『あぼしまち交流館(以下、交流館)』を建設することになりました。」 「いかに網干をいいまちにするか。みんながその想いひとつだった」と言うのは理事の一人、長澤守さん。
副理事長の利根康広さんも「この交流館ができたおかげで、地域がひとつになって会合やイベントを開催できるようになりました。交流館が自治会の接着剤になったんです。」と語る。
交流館の運営のため、平成20年12月にNPO法人あぼしまちコミュニケーションを設立。
21年4月に交流館が、その翌年4月にはエコパークあぼしがオープンした。
エコパークあぼしの受け入れが、網干地域全体の活性化に向かう大きな一歩となったのだ。
現在、あぼしまちコミュニケーションは、交流館をはじめ、姫路市立網干環境楽習センター(エコパークあぼし内の1施設)や姫路市立網干市民センターの管理運営を行うと共に、様々な事業を実施している。

 

網干環境楽習センターでの見学者案内
網干環境楽習センターでの見学者案内

交流館では、地元農家の野菜や総菜などを販売する「あぼしまち朝市」を毎週土曜に開催。その他、モーニングサービスなどを提供する「まちカフェ」や、高齢者を中心とした食事会「ふれあい給食」、子どもたちがものづくりを体験できる「キッズフェスティバル」といった事業に取り組んでいる。
一方、網干環境楽習センターでは、見学者の案内を中心に、空き瓶やリサイクルガラスを使ったハンドメイド作品の体験教室や、楽しみながら資源の大切さに触れ、エコについて考える「エコフェスタ」といった様々なイベントを開催。
環境教育の一端を担うとともに、地域住民がごみ処理施設をより身近な存在に感じるような活動を続けている。
令和元年度には交流館に約3万6千人、エコパークあぼしに3万5千人を超える人が訪れた。 その他、地域の魅力づくりとして、地元のボランティアガイド15人が網干地域の史跡を案内する「あぼしまちあるき」にも取り組む。
代表的な施設のひとつ山本家住宅には、年間500人近い見学者が来邸する。
さらに平成30年からは、「網干観光レンタサイクル」をスタートし、年間100組ほどの利用がある。 こうしたあぼしまちコミュニケーションの活動の特長は、事業評価の工夫と指定管理の受託方法だ。
「事業については、地域住民が喜ぶことを評価基準に据え、内容の改善が見込めないものは中止に、開催の要望が多いものは負担が多くても継続します。施設については、地元に密着し地域のことを熟知した施設管理ノウハウを持つ地元企業との共同事業体として、相互の得意分野を発揮しながら運営しています。地元の人々の働き口にもなっています。」と事務局長の丸喜法之さんは言う。
しかし、設立当初から順調なスタートを切れたわけではなかった。

 

地元農家の野菜や総菜などを販売する「あぼしまち朝市」
地元農家の野菜や総菜などを販売する「あぼしまち朝市」

 

高齢者を中心とした食事会「ふれあい給食」
高齢者を中心とした食事会「ふれあい給食」

自治会母体のNPO法人だからできること

「実はNPO法人がどんなものかさえ、理解できていませんでした。」という勢川さん。
丸喜さんも「設立申請書を提出するため、県の窓口に何度も足を運んだり、NPO法人の運営に携わっている知人にアドバイスを求めたり、当時の自治会長6人と私のそれぞれが勉強を重ねながらひとつずつ前に進め、設立に2年を要しました。」と振り返る。
設立後も困難は続き、網干環境楽習センターのオープン準備に奔走する中、近隣施設で爆発事故が起きた。
その影響で網干環境楽習センターのオープンも半年延期となり、経費面でも運営面でも「非常に辛い思いをした」と丸喜さん。
それでも、周囲の様々な団体や市の応援もあり、難局を乗り越えることができたという。 「NPO法人は、理事に自治会役員が就任しています。
地元の事情に精通している自治会役員が市や県と交渉することで、支援が得やすくなりました。」と利根さん。また、網干市民センターの館長を務める長澤さんも、自治会長として日頃から地元住民たちとコミュニケーションがとれているため、市と地域とのコーディネート役として施設運営もスムーズに行えるという。
「自治会役員が応援団として積極的に活動に加わる意識こそ、あぼしまちコミュニケーションが10年間も継続できている秘訣なのです。」と話す利根さん。
「活動を続けていくためには、地域がひとつになって頑張っている姿を見せること、さらに住民自らも参加して、自分の地域が元気になっている様子を実感することが大切だ。」と勢川さんも言う。

 

子どもたちがものづくりを体験できる「キッズフェスティバル」
子どもたちがものづくりを体験できる「キッズフェスティバル」

 

楽しみながらエコについて考える「エコフェスタ」
楽しみながらエコについて考える「エコフェスタ」

地域みんなの気持ちがひとつになった「網干かき祭り」

利根さんは初めての「姫路とれとれ市網干かき祭り&ふれあいフェスティバル(以下、網干かき祭り)」が、NPO法人として活動を続けていく上での、大きな転機だったと振り返る。
「網干地区全体で取り組むイベントをしよう」 そんな呼びかけで始まったのが、「網干かき祭り」だ。
自治会をはじめ地元の漁業・農業関係者、姫路食文化協会などによる出店や、地域の幼稚園、小学校、有志団体による舞台パフォーマンスなど、様々な人や団体が参加するイベントだ。
8回目を迎えた令和2年2月の開催時には、2万人の来場者を記録した。あぼしまちコミュニケーションの中心的な取組のひとつになっている。
今でこそ、姫路市のイベントとしても定着した網干かき祭りだが、1回目の開催は苦労の連続だった。
「予算交渉に市へ出向いたときも、複数の自治会がひとつの行事に一緒に取り組む前例がないので、事業として検討できないと断られたんです。
話し合いを重ねようやく承認されると、何をどう準備すればいいのかわからない。警察・消防・行政関係との調整、駐車場の確保や警備の手配に奔走。
当日の参加者はせいぜい2千~3千人だろうという予想を、大幅に上回る1万5千人が来場し、駐車場も足りず何キロメートルも渋滞。
警察からお叱りをいただいてしまいました。イベントを楽しむ余裕もなく、地域のために始めたことが、地域みんなの大きな負担になってしまったんです。」と利根さんは言う。
しかし「もうやめよう」と口にする人は、誰もいなかったという。
「来年は企業の駐車場を借りよう、警備は専門会社に依頼しようなど、全員が次へつなぐための解決の道を探っていました。もしあの時、『こんなに負担の大きなことはやめてしまおう』と誰かが拒否していたら、あぼしまちコミュニケーションの進む方向が変わっていたかもしれません。」
「網干かき祭りを続けよう」 みんなの気持ちがひとつになったことが、その後の地域づくりの大きな後押しになったと話す利根さん。
「勢川理事長をはじめとするリーダーたちのけん引力と、自治会が持つ地元ならではのネットワーク力が下支えになったんです。」 そこには自治会が母体となって立ち上がったNPO法人が持つ、地域自治の力が生きていた。

 

様々な人や団体が参加する「姫路とれとれ市網干かき祭り&ふれあいフェスティバル」
様々な人や団体が参加する「姫路とれとれ市網干かき祭り&ふれあいフェスティバル」

地域内から地域外へ、コミュニケーションの場を拡げたい

今年はコロナ禍により、イベントや会合が中止や延期を余儀なくされている。
長澤さんは「例えば、一斉清掃はまちを美しくするだけではなく、地域住民のコミュニケーションの役割を果たします。そういう機会が失われることで、人離れを起こさないか、このまま地域活動が衰退してしまわないか心配です。」と不安を口にする。「培ってきた住民同士のつながりや絆が薄れることのないよう、みんなが気軽に参加でき、自治会内を活性化させる催しを開きたい」と言う。
その先で目指すのは、網干地域を地域外から人が集まるまちに育てることだ。

 

ボランティアガイドが網干地域の史跡を案内する「あぼしまちあるき」
ボランティアガイドが網干地域の史跡を案内する「あぼしまちあるき」

「『ワンあぼしプロジェクト』の名のもと、網干地域の情報を発信する方法を模索中です。地域のホームページを立ち上げて、最新情報をチェックできる仕組みをつくろうとしています。
例えば、70以上ある神社仏閣に協力してもらい、大茶会や仏像の写真など、他地域にはない網干ならではの魅力に特化した情報を発信していきたい。
最新情報の発信拠点として交流館を育てることが、地域外との交流に必要なことだと思っています。」と利根さん。
また、新たな交流機会を創出するヒントも生まれている。網干出身の大学院生が卒業論文の研究テーマに網干のまちづくりを選び、市の協力のもと網干の地域資源の発掘と揖保川流域のネットワーク形成に取り組んだのだ。
「網干の歴史や地域資源について、改めて知る機会になりました。」と勢川さん。
研究成果は、地元住民をはじめ神社の宮司や教師など約60人が参加した発表会で報告され、好評を得た。 「太子、龍野、山崎、宍粟といった揖保川流域の縦につながるエリアを一本の道と捉え、ストーリーを作れたらいいなと思っているんです。
それらのエリアが力を合わせ、観光誘致につなげる企画を考えられたら。」と丸喜さんも期待を寄せる。 こうした様々な企画もアイデアも、みんなが集える場所として交流館が存在していることで生まれるという勢川さん。
「かつて網干は、近隣からみんなが集まってくる場所でした。今は他地域に大手商業施設ができ、人の流れが移りつつあります。だからこそ私たちは、網干はいいところだと発信しなくてはいけない。網干に住んでいてよかったと、地元の人たちに思ってもらいたい。その中心的な存在が交流館です。 会合ができる、発表の場にもなる、買い物だってできる。これからも、ここにしかないものを開発し、地域内はもちろん地域外からも人が集まりたくなる場所に育てたい。」
そう語る勢川さんをはじめ、あぼしまちコミュニケーションを支える人々には、ある共通する想いがあった。

 

ごみ処理施設の過程を見学する子どもたち
ごみ処理施設の過程を見学する子どもたち

「網干はひとつ」交流館が育んだ地域力の 継承を目指して

「人のために動く」 丸喜さんは、あぼしまちコミュニケーションの原動力をそう表現する。 「たくさんの壁にぶつかってきた中で、営利を目的に動くとうまく運ばないことや、地域のみんなのために動くとスムーズにいくことを、身を持って知りました。
住民が転勤や引っ越しなどで定着しないため、自治会による地域自治が難しい地域も増えつつある今、『網干のような地域がまだあるのか』と驚かれることもしばしばです。今後も地域のよりどころになれるよう、力をつけておかなくてはいけないと思っています。」 そのためにも、みんなが喜ぶことを提供し、気持ちをひとつにする大切さを伝え続けることが必要だという長澤さん。
「活動を続けていて一番うれしいのは、イベントに多くの人が集まってくれること。みんなが喜ぶって、シンプルですがとても大切です。事業を続ける醍醐味であり、地域の活性化につながっていくものですから。」
勢川さんも「地域のみんなが集まる機会を少しでも多くつくり、足を運んでもらおう。そんな想いで工夫を重ねてきました。それが、これからの地域自治を担うNPO法人としての、あぼしまちコミュニケーションの使命です。」と力強く言い切る。
「網干はひとつ」「地域のために」 あぼしまち交流館の誕生をきっかけに、地域に生まれた二つの想いを大切にしながら、あぼしまちコミュニケーションは網干のまちと共に元気を育んでいく。

 

(取材日 令和2年9月15日)

3つの活動ポイント

  1. 自治会母体ならではの地元ネットワーク力を活かし、自治会と市・県との コーディネーターとして地域自治事業に主体的に取り組んでいる。
  2. 活動場所である「あぼしまち交流館」を網干地域のシンボルとして位置づけ、 交流および情報発信拠点として活用・育成している。
  3. 地元密着という得意分野を生かして、施設管理のノウハウを持つ地元企業と共同で地域の 施設の指定管理を受託し、活動資金を調達するなど、積極的に団体運営を行っている。

NPO法人あぼしまちコミュニケーションの
ここが好き・いいところ

NPO法人 あぼしまちコミュニケーション理事長

勢川 正澄さん

かつて知人の市議会議員の方が、地域課題を解消し住民の要望をかなえることで、地域を良くしてこられた様子を間近で見ていました。「地域の役に立ちたい」「恩返しがしたい」という想いが芽生えた頃、自治会役員に選ばれ、活動を開始しました。人は誰でも、与えられた役割があるのだと思います。少しでも地域の人に喜んでもらえるよう、後継者の育成を視野に入れながらこれからも取り組んでいきます。

NPO法人 あぼしまちコミュニケーション 副理事長

利根 康広さん

人は誰かに求められれば、頑張れるものです。できる人が、できることをする。それが地域に暮らす者としての責任だと思い、活動に携わっています。自治会がNPO法人を立ち上げるという先例もない中、組織をつくり上げた先人の知恵と挑戦には、敬意と感謝しかありません。さらに10年以上もの間、NPO法人と自治会が力を合わせて活動を続けてきたことは、この地域の誇りです。あぼしまちコミュニケーションを、網干地域全体で永久に守っていくことが、この地域が元気であり続けるための基になると思っています。

NPO法人 あぼしまちコミュニケーション 理事

長澤 守さん

新型コロナウイルスによる活動自粛の影響を受けたことで、これからますます地域を元気にする活動が求められます。事業を企画し参加者を集めることの大変さを実感している中、さらなる工夫とアイデアが必要です。そのための最も大切な役割を担っているのが、あぼしまちコミュニケーションです。地域みんなのために、いかに網干のまちを盛り上げていくか、これからが本当に必要とされると思っています。

NPO法人 あぼしまちコミュニケーション 事務局長

丸喜 法之さん

法人設立時には自治会をはじめ関係諸団体の団結力により、交流館建設や、資金調達のための市施設の指定管理受託などが実現できました。それらをもっと喜んでいただけるようアレンジし、地域の皆さんに提供する手腕が今後は求められます。特に地元ならではの商品開発に力を入れたいですね。11年目を迎え、「NPO法人は企業である」という意識が大切だと改めて感じます。地元企業との連携強化や、後継者づくりも含めた組織力をつけていきたいと思っています。

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