NPO法人あぼしまちコミュニケーション
姫路市網干区

ごみ処理施設受け入れから始まった、地域活性化への取組

「わたしたちの地域で受け入れよう」
長い年月をかけた議論の末、網干地域の6自治会が決断したのは、姫路市の新ごみ処理施設「エコパークあぼし」建設の承認だった。
受け入れにあたり、官民一体となって地域活性化の実現に努めるという目標を、自治会・市・県が共有。その目標達成のため、網干の歴史的町並みと調和した緑豊かな施設をつくり、市内外の利用者でにぎわう空間づくりを目指すことになった。
この「エコパークあぼし」の建設に際し、もうひとつ進められた議論があった。
NPO法人あぼしまちコミュニケーション(以下、あぼしまちコミュニケーション)理事長の勢川正澄さんが、当時を振り返る。
「網干地域の課題は、6つの自治会間にほとんど交流がないことでした。
網干地域全体で集まって会合をし、地域の力を活かすための場所をつくろう。
そんな想いで相談を重ね、住民の交流・活動拠点となる『あぼしまち交流館(以下、交流館)』を建設することになりました。」 「いかに網干をいいまちにするか。みんながその想いひとつだった」と言うのは理事の一人、長澤守さん。
副理事長の利根康広さんも「この交流館ができたおかげで、地域がひとつになって会合やイベントを開催できるようになりました。交流館が自治会の接着剤になったんです。」と語る。
交流館の運営のため、平成20年12月にNPO法人あぼしまちコミュニケーションを設立。
21年4月に交流館が、その翌年4月にはエコパークあぼしがオープンした。
エコパークあぼしの受け入れが、網干地域全体の活性化に向かう大きな一歩となったのだ。
現在、あぼしまちコミュニケーションは、交流館をはじめ、姫路市立網干環境楽習センター(エコパークあぼし内の1施設)や姫路市立網干市民センターの管理運営を行うと共に、様々な事業を実施している。

 

網干環境楽習センターでの見学者案内

網干環境楽習センターでの見学者案内


交流館では、地元農家の野菜や総菜などを販売する「あぼしまち朝市」を毎週土曜に開催。その他、モーニングサービスなどを提供する「まちカフェ」や、高齢者を中心とした食事会「ふれあい給食」、子どもたちがものづくりを体験できる「キッズフェスティバル」といった事業に取り組んでいる。
一方、網干環境楽習センターでは、見学者の案内を中心に、空き瓶やリサイクルガラスを使ったハンドメイド作品の体験教室や、楽しみながら資源の大切さに触れ、エコについて考える「エコフェスタ」といった様々なイベントを開催。
環境教育の一端を担うとともに、地域住民がごみ処理施設をより身近な存在に感じるような活動を続けている。
令和元年度には交流館に約3万6千人、エコパークあぼしに3万5千人を超える人が訪れた。 その他、地域の魅力づくりとして、地元のボランティアガイド15人が網干地域の史跡を案内する「あぼしまちあるき」にも取り組む。
代表的な施設のひとつ山本家住宅には、年間500人近い見学者が来邸する。
さらに平成30年からは、「網干観光レンタサイクル」をスタートし、年間100組ほどの利用がある。 こうしたあぼしまちコミュニケーションの活動の特長は、事業評価の工夫と指定管理の受託方法だ。
「事業については、地域住民が喜ぶことを評価基準に据え、内容の改善が見込めないものは中止に、開催の要望が多いものは負担が多くても継続します。施設については、地元に密着し地域のことを熟知した施設管理ノウハウを持つ地元企業との共同事業体として、相互の得意分野を発揮しながら運営しています。地元の人々の働き口にもなっています。」と事務局長の丸喜法之さんは言う。
しかし、設立当初から順調なスタートを切れたわけではなかった。

 

地元農家の野菜や総菜などを販売する「あぼしまち朝市」

地元農家の野菜や総菜などを販売する「あぼしまち朝市」


 

高齢者を中心とした食事会「ふれあい給食」

高齢者を中心とした食事会「ふれあい給食」


自治会母体のNPO法人だからできること

「実はNPO法人がどんなものかさえ、理解できていませんでした。」という勢川さん。
丸喜さんも「設立申請書を提出するため、県の窓口に何度も足を運んだり、NPO法人の運営に携わっている知人にアドバイスを求めたり、当時の自治会長6人と私のそれぞれが勉強を重ねながらひとつずつ前に進め、設立に2年を要しました。」と振り返る。
設立後も困難は続き、網干環境楽習センターのオープン準備に奔走する中、近隣施設で爆発事故が起きた。
その影響で網干環境楽習センターのオープンも半年延期となり、経費面でも運営面でも「非常に辛い思いをした」と丸喜さん。
それでも、周囲の様々な団体や市の応援もあり、難局を乗り越えることができたという。 「NPO法人は、理事に自治会役員が就任しています。
地元の事情に精通している自治会役員が市や県と交渉することで、支援が得やすくなりました。」と利根さん。また、網干市民センターの館長を務める長澤さんも、自治会長として日頃から地元住民たちとコミュニケーションがとれているため、市と地域とのコーディネート役として施設運営もスムーズに行えるという。
「自治会役員が応援団として積極的に活動に加わる意識こそ、あぼしまちコミュニケーションが10年間も継続できている秘訣なのです。」と話す利根さん。
「活動を続けていくためには、地域がひとつになって頑張っている姿を見せること、さらに住民自らも参加して、自分の地域が元気になっている様子を実感することが大切だ。」と勢川さんも言う。

 

子どもたちがものづくりを体験できる「キッズフェスティバル」

子どもたちがものづくりを体験できる「キッズフェスティバル」


 

楽しみながらエコについて考える「エコフェスタ」

楽しみながらエコについて考える「エコフェスタ」


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