NPO 法人More 繁盛
宍粟市一宮町繁盛地区

地域の中にあるものを、地域づくりに活かしたい

初めてのイベントを終え、委員会では新たな企画に向けて動き始めるはずだった。
「しかし、その会議では『あんなに大変だったイベントを、また開催するなんて無理』という後ろ向きな意見ばかり出たんです。自治会の会長は2年ごとに交代するため、そのたびに委員会のメンバーも入れ替わります。活動を続けていくには、同じ想いを持った専属メンバーが必要だという結論になりました。」と米田さん。
こうして平成28年4月、米田さんや梶浦さんに声をかけられ集まった有志や、メンバー募集に応じた人たち13人で、繁盛地区まちづくり協議会More繁盛を結成。地域づくりに向け、再出発を図ることになった。
「活動を始めるにあたり、すべて地域の中にあるものを活用しようと決めました。地域に目を向けることで、自分たちの手で地域を変えるんだという意識を、住民みんなに持って欲しかったんです。」と梶浦さんは言う。
しかし、自分たちの地域のどんなものが、地域づくりにつながるのかわからなかった米田さんたちは「地域おこし協力隊を呼ぼう!」と協議会のメンバーたちと相談。平成29年9月、繁盛地区に着任した地域おこし協力隊員との出会いが、地域の大きな転機につながった。
「米づくりが好きな協力隊員だったんです。いつも食べている繁盛地区の人は気づいていなかったおいしさを協力隊員に教えられ、初めて自分たちの米の価値がわかりました。」と、More繁盛の事務局長を務める福原祥雄さんは言う。 地元の「いいもの」を再確認しながら、地域づくりにつながるものを発掘し特産品化を目指そう。そんな想いで企画したのが、地元有志たちが地区で採れた農産物などを持ち寄って出店するイベント「秋穫祭」や、繁盛でとれた米でつくったおむすびを楽しむ祭り「おむすび食堂」。今では定期的なイベントとして、地域内外の交流を生むきっかけになっている。
そんな協力隊員の着任と同じ頃、More繁盛の「仕掛け人」と呼ばれる人物が活動に参加することになった。

 

地域の中にあるものを、地域づくりに活かしたい

「実は、娘婿です。」と福原さんが紹介するのは、「外から吹いた新しい風」と称される石本泰之さんだ。
「妻の故郷なので、いつの間にか私も活動に関わっていました。」と笑う石本さんは、神戸市在住。毎週末に車で2時間かけて繁盛地区に通いながら、More繁盛のマネージメントに携わっている。
石本さんと協力隊員が、地域の特産品として最初に提案したのが、減農薬や無農薬栽培米のブランド化だった。米づくりに取り組む農家の西村昌三さんや田中栄次さんは「無農薬で米をつくりたいと言われた時は、戸惑いました。」と当時を振り返る。住民たちは不安を抱えながらも、「とにかく一度やってみよう」と減農薬米や無農薬米の栽培に挑戦。その結果、兵庫安心ブランド(*)の認定を取得した減農薬コシヒカリと、無農薬栽培のイセヒカリを「繁盛米」というブランド化に成功。農協へ出荷するだけだった米を、自分たちの手で販売する特産品として扱うようになった。
「新しいことに挑戦するハードルをひとつ越えられたのは、協力隊員と石本君の発想があったから。」と田中さんは語る。
令和2年からは、この繁盛米と緑米(古代米)をブレンドした甘酒も商品化。無添加の手づくり甘酒として、神戸市や姫路市の物産館などを中心に販売数を伸ばしている。さらに桑の古木を活かし、摘み立ての葉を手もみで製茶した「桑茶」など、繁盛地区ならではの特産品化に積極的に取り組んでいる。
一方、地域外との交流機会を増やそうと、令和元年から取り組むのが自然体験事業だ。都市部から家族連れや外国人も参加する無農薬米の田植えや稲刈り体験の他、地元のひょうたん栽培・加工の名人に指導を受けた、手づくりひょうたんランプのワークショップなどを開催。これらの体験事業に、令和元年は地域外から年間約140人の参加者が訪れた。
令和2年は、新型コロナウイルス感染拡大予防のため、すべてのイベントが中止になってしまったが、令和3年には新たな取り組みとして、積極的に繁盛地域の外へ出て、ひょうたんランプづくりのワークショップをはじめとする様々なイベントの開催を検討している。
「新しく設計するのではなく、この地域に昔からあるものにアイデアを添え、付加価値をつける発想です。」という石本さん。その中で特に代表となるものは、繁盛地区という地名のブランド化だ。

 

*兵庫安心ブランド:化学肥料・農薬3割低減等生産方法、品質等に個性や特長、地域性があり、かつ食品衛生法等の遵守などの基準を満たした「ひょうご推奨ブランド」の審査基準に加え、化学肥料・農薬の使用を5割以上減らし、残留農薬等が国の基準の1/10以下とするなど厳しい基準を満たした安心感のある食品を兵庫県が認定。

 

秋穫祭

地元有志たちが地区で採れた農産物などを持ち寄って出店する「秋穫祭」


特産品

繁盛米や甘酒など、繁盛地区ならではの特産品化に積極的に取り組んでいる


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