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一般財団法人神楽(しぐら)自治振興会 理事長

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2015/05/25
足立徳行さん
(67)
兵庫県丹波市
一般財団法人神楽(しぐら)自治振興会 理事長
丹波市の北部、朝来市に隣接する青垣町の北西部に神楽(しぐら)地区がある。古くは但馬から京に続く街道として栄え、豊かな自然に恵まれた加古川源流の郷でもある。

人口減少が続くこの地区では、近い将来、空き家率は50%を超えるとみられている。そこで、限界集落への危機感を抱いた住民たちが立ち上がり、住民が自立し、自ら行動できる地域自治組織を立ち上げた。

平成22年11月、旧青垣町(現丹波市)にあった神楽村の山林等財産を管理する「財団法人 神楽会」、地域づくりを推進する「NPO法人神楽の郷」、神楽地区自治組織「神楽自治会長会」の三つの組織を一本化し、「一般財団法人 神楽自治振興会」が誕生。

理事長を務める足立さんは、古民家を活用した移住促進や環境保全活動など地域活性化に取り組んでいる。

写真:一般財団法人神楽(しぐら)自治振興会 理事長 足立徳行(あだちのりゆき)さん

跡取りの重責を担って

足立さんは4人兄弟の長男として生まれた。小学校5年生の時に父が交通事故で急死し、「跡取りとしてしっかり家を守っていくように」と祖父から言われた足立さんは、将来は地元に残り家を継ぐことが宿命だと思っていた。中学、高校と遊びたい盛りに山林日役(各世帯から1人山林作業に出す制度)や機械を使わない旧式の農作業を担っていた足立さんは、農業が好きになれず、高校卒業後は、地元の柏原公共職業安定所に就職した。

野球が好きだった足立さんは地元の野球クラブに所属。県大会などで「田舎者に負けるな」のヤジに発奮し、神楽をアピールしようという郷土愛が芽生えた。

写真:神楽地区の風景

神楽地区の風景

ふるさと再発見

足立さんは47歳の時に、神戸に転勤となり、単身赴任をすることになった。その後も県内各地に単身赴任し、週末を自宅で過ごすという生活が12年間続いた。

故郷を離れるまでは、山奥で不便なところという思いしかなかったが、単身赴任の経験は青垣町の美しさと心安らぐ場所であることを思い知らせてくれた。土日に裏山を見て過ごす時間を、何物にも代えがたい宝物のように感じるようになった。

「こんなにいいところだったんだ。」

都会では得られないものが故郷にはたくさんあることをつくづく実感したと言う足立さん。定年退職後、神戸での再就職の誘いを断り、地元で嘱託として、丹波地域の地元企業と大学生を結びつけるシステムの構築に尽力。Uターン就職希望者を登録し、地元企業への就職をあっせんする仕事に2年間従事した。

定年後の人生を地域の活性化にかける

神楽地区では、若者の域外流出と高齢化で人口減少が続き、農地山林の維持が難しくなるだけではなく、このままでは将来地区そのものが消滅するのではないかという危機感が広がっていた。先輩である足立宏之さんを中心に様々な活性化事業に取り組んでいたが、より効果的な推進のために、地区組織の再編までもが検討されていた。

そんな時、先輩から共に地域づくりの法人を立ち上げようと声をかけられた足立さん。

単身赴任中は地元のことにかかわってこなかったが、地元に戻ったことで故郷に対する愛着や想いが高まり、定年後の人生を生まれ育った地域の活性化にかけてみようと決断した。

平成22年、先輩とともに神楽自治振興会を立ち上げ、業務執行理事として地域活性化に取り組んだ足立さんは、平成26年4月に前理事長である先輩から地域づくりのノウハウや、空き家の利活用など神楽の地域課題を引き継ぎ、理事長に就任した。

現在、神楽自治振興会は青垣町桧倉の神楽の郷交流センターに拠点を置いて、田舎暮らし体験施設の運営や、バイカモ・ヒメボタルなど自然環境を活かした都市との交流行事を実施するなど、移住促進に繋がる事業を推進している。さらに、移住者のサポートやイベントスタッフとして、地元の若者や高齢者が活躍できる場を設けるなど、地域コミュニティの中心となっている。

写真:一般財団法人神楽自治振興会が事務所を置く丹波市立神楽の郷交流センター

一般財団法人神楽自治振興会が事務所を置く丹波市立神楽の郷交流センター

田舎暮らしを体験 古民家で「とき」を味わう

古民家を活用した移住促進事業では、神楽に「お試し滞在」してもらい、自然環境のすばらしさを肌で感じてほしいという思いから、築120年の古民家を再生し、田舎暮らしを体験できる「かじかの郷」をオープン。

古民家の改修には足立さんの住む菅原集落の「若者の会」が積極的に関わった。約30年前、足立さんの友人たちで結成されたこの会は、ほとんどが夫婦で参加する27人の会員で、年1度の食事会など互いに親睦を深めてきた。

その会員が囲炉裏を作ったり、大きなテーブルを作るなど、それぞれの得意分野を生かした作業を買って出て、田舎暮らしを存分に味わえる環境を整えた。

1か月単位で借りることができる体験古民家は、月間滞在する家族や週末ごとに利用する家族で半年先まで予約が入っている。

この田舎体験を機に田舎暮らしを始める人や、稲作オーナーとして農業をするために通ってくる家族も徐々に増え始めた。先月滞在した大阪府の家族は、娘が化学物質過敏症の為、アレルゲンの少ない生活環境を求めて、現在、神楽地区やその周辺地域で借家を探していると言う。

写真:築120年の古民家を再生した「かじかの郷」

築120年の古民家を再生した「かじかの郷」

写真:かじかの郷で古民家体験をする大阪府堺市の東屋さん夫妻

かじかの郷で古民家体験をする大阪府堺市の東屋さん夫妻

古民家体験を繰り返し、稲作オーナーとして神楽に通う明石市在住の池藤さん夫妻

古民家体験を繰り返し、稲作オーナーとして神楽に通う明石市在住の池藤さん夫妻

神楽ファンは地元から

神楽自治振興会では、移住者を増やすために、古民家体験だけではなく、歩きながら神楽の景色を楽しむノルディックウォーキングなどの様々なイベントの開催や、空き家の状況を調査し、売却や賃貸の可能な住宅を希望者に斡旋している。

丹波市でも「都市と農村の交流促進によって定住人口を確保していこう」というテーマを掲げ、神楽地区に Iターン、Uターンしてくる人たちのための市営住宅や分譲賃貸住宅を建設しており、ハード面は整いつつある。

写真:神戸市から移住し、念願だった野菜作りを楽しむ星見美乃里さんは、神楽自治振興会のスタッフを務める

神戸市から移住し、念願だった野菜作りを楽しむ星見美乃里さんは、神楽自治振興会のスタッフを務める

地元でのワークショップや移住者を対象としたアンケートから、これからの地域づくりは「多様な生態系の保全、環境と景観を保全することが大切」という取組みの方向も明らかになった。そこで、「加古川源流の里エコルネッサンス事業」と名づけ、昭和25年頃の自然環境に戻そうという目標を立て、取組みを進めている。

放置林を有志が整備し、昆虫採取やどんぐり拾いができる“神楽っこくぬぎの森”を作ったり、小学校にビオトープを作ってバイカモを再生する授業を継続し、神楽にある7つの自治会の1つ、桧倉自治会が中心となって努力を重ね、清水川にバイカモを見事に再生させた。恵まれた環境を守り維持することで、神楽への愛着が育まれ、将来にわたって地域が存続できるのではないかと考えている。

「神楽を訪れた人たちが神楽を好きになってくれる。しかし、迎える側が『こんな不便なところ・・』と言っているようでは、来る人を拒んでいるようなものだ」と、足立さん。

「まずは、神楽に暮らす人が神楽を好きになってくれないと、Iターンは進まない。」

地元の神楽ファン発掘が第一だと考えている。

ビオトープ学習会

ビオトープ学習会

逃げない ごまかさない 諦めない

足立さんが「人生訓」として挙げた言葉は「逃げない ごまかさない 諦めない」という言葉だ。

物事は、できるだけポジティブにとらえ、「逃げず」に乗り越えてきた。「ごまかさず」自分が納得するまで徹底して取り組む。いくつになっても“夢”を持ち「諦めず」にその実現を目指していきたい。

単身赴任がきっかけで、生まれ育ったところの素晴らしさを知った足立さん。Iターン、Uターン者が増え、神楽の元気の素となってほしいという夢は着々と進行している。

写真:好きな言葉「逃げない ごまかさない 諦めない」とともに。

(公開日:H27.5.25)

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