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コミュニティキッチン結良里

すごいすと
2014/04/25
森本淑子さん
(77)
兵庫県篠山市
コミュニティキッチン結良里
兵庫県篠山市の北西に位置する篠山市大山地区。

山々に囲まれた自然豊かで風光明媚な地域で、京阪神からも多くの人が訪れる。

コミュニティキッチン結良里は、そんな大山地区で、兵庫県の県民交流広場事業の一つとして助成を受け、平成17年に、旧JA大山支所を改修してオープンした。代表をつとめる森本淑子さんは、120年前から続くという伝統の郷土料理「とふめし」(豆腐めし)を多くの人に知ってもらい味わってもらおうと、さまざまな活動をしている。「とふめし」は「平成19年度ひょうごの農とくらし研究活動コンクール」では農林水産物加工の部で努力賞を受賞。平成24年、特許庁の商標登録を機に、ごはん2合分のレトルトパックを開発し発売した。栄養バランスのとれた安全・安心食品ということで地域の小学校給食にも採用され、児童たちからは「おばあちゃんのごはんが出た」と喜ばれている。最近は、近隣地域だけでなく、噂を聞いて京阪神の各地から「とふめし」を味わいに訪れる人も多いという。

コミュニティキッチン結良里代表森本淑子さん

「とふめし」は地域の宝物

篠山市大山地区には、市内で最も古いまちづくり協議会のひとつ、大山郷(さと)づくり協議会がある。地域山林経営、市民農園事業、里山オーナー事業などを行う一般財団法人大山振興会をはじめ、自治会長会、老人クラブ活動などを行う寿友会ほか9つの団体がこの協議会を組織し、それぞれの地域活動を行っている。

伝統食「とふめし」の製造・販売とコミュティ喫茶の運営を行うコミュニティキッチン結良里もその地域活動団体の一つ。代表の森本淑子さんは、もともと大山郷づくり協議会の会員として長く活動してきた。

平成17年、協議会が中心となって大山地区にくつろげるコミュニティ空間をという発案があり、それならば昔から地域に伝わる伝統食「とふめし」で地域おこしをしようと提案したのが森本さんだった。

「『とふめし』は地域の宝物です。私たちこの地域の者は、何かにつけて『とふめし』を作り、食べてきました。コミュニティキッチン結良里を始めた最大の理由は、そんな地域の宝物を、多くの人に広めたいという思いからです。これを商品化して、阪神間の人に食べていただき、この大山の地場産業に育てたかったんです」

ちょうどその頃、県では身近なコミュニティ施設を活用し、多彩な活動を通じたコミュニティづくりを応援する県民交流広場事業をはじめていた。

森本さんの提案は、この県民交流広場事業の助成を得て実を結び、コミュニティキッチン結良里がスタートする。森本さんは当初からスタッフとして参加していたが、その強いリーダーシップを買われて、現在、代表を務めている。

コミュニティキッチン結良里の厨房で「とふめし」の仕込みをするスタッフの皆さん

シンプルで奥深い伝統の味

広く、明るい厨房。大きな冷蔵庫や調理台などが並ぶ中、「とふめし」づくりが始まる。仲間がそれぞれの持ち場で忙しく働く空間に、てきぱきと調理の指示を出す森本さんの声が響く。

ごぼう、人参、油揚げを細かく刻んで油で炒める。そこにサバの水煮を加え、最後に茹でた木綿豆腐を入れて醤油を差しながら豆腐をつぶしていく。そうしてでき上がった具を、炊き上がったごはんの上に直接乗せ、あとは一気に混ぜ合わせる。炊き込みご飯とは違って、「とふめし」は混ぜご飯なのだ。

調理開始から1時間20分、森本さんが「地域の宝物」と語る「とふめし」が出来上がった。

「素朴な田舎料理だけれど、案外手間がかかるでしょ。それだけに奥深い料理なのよ」

「とふめし」の味の決め手となる地元の木綿豆腐を40分茹でる。

炊き上がった2升のご飯と別に調理しておいた具を手早く混ぜ合わせる。

120年のあいだ、地域の人々が営々として作り続け、食べ続けてきた「とふめし」。地域の誇るこの伝統料理の誕生には、歴史ある古い地域ならではの起源がある。

昔、この地域では、講の集まりや祭礼、冠婚葬祭のたびに、様々なご馳走をたくさんの小皿に分けてお膳を組むという手の込んだ食事を出していた。1村30戸ぐらいが集まるたびに、若いお嫁さんたちは日常の農作業や子育て、炊事、洗濯、掃除にプラスして、大量の料理を作らなければならず、これは大変な重労働となる。

ある時、村の長老が「こんなことではそのうち嫁のきてがなくなるぞ。お膳の上のご馳走を、みな一緒に混ぜてしまえ」と号令をかけたとか。結果としてはこれが正解で、長老の号令から出た苦肉の策が、長い年月を経て「人の集まるところに『とふめし』あり」とまでいわれ言われる大山の名物料理になった。

ゆらり定食

日替わりのおかずが付くゆらり定食

スタッフの調理風景

注文に応じて「とふめし弁当」もつくり地域に配達する。この日は50食の弁当をつくるスタッフ。

地域が集う大台所

森本さんの活動を支えるのは、かつてデイサービスで一緒にボランティアを務めていた仲間たち。今もコミュニティキッチン結良里の厨房に交代で立ってくれている。大山郷づくり協議会の各組織との連携も緊密で、結良里は地域の人々が集まりくつろげる大台所になっている。

協議会の森本事務局長によると、大山地区のコミュニティの結束が強いのは、長い歴史の中で培われた「趣法(しゅほう)の精神」という相互扶助精神が今も生きているからだという。このふるさと意識を支える価値観を共有する森本さんは、要請があれば各地の小学校などにも講演に行く。

「『とふめし』の歴史や、それがいかに安全で優れた食べ物であるかをいつもお話ししています」

また、毎年秋に開催される丹波篠山味まつりなど、さまざまな地域おこしイベントに足を運んで「とふめし」の普及やPRに努めている。各地のデパートなどで開かれる丹波フェアでもPRと販売を行う。地元大山の収穫祭では、地域の台所として、毎年500食の「とふめし」が振る舞われる。

「こういう幅広い活動ができるのも、すべて地域の仲間が力を合わせて助けてくれているおかげ。ほんとうにありがたい」

〈趣法の精神〉

藩政時代、篠山藩では、厳しい年貢と土地生産性の低さから、幕末には大山地区も貧民が多くなり、地区では苦境を乗り越えるために、共同林を設け、植林事業に着手した。後年、そこから得たお金で、学校や橋を作り地区の貧しい人を助けた。この山は、趣法山と呼ばれ、今日まで受け継がれている。趣法とは、村を立て直す事業、財政再建方法の意味であり、ふるさとを守り育てていくためには、区民一体となり、新しい取組みを積極的に導入する「趣法の精神」が今も大切に受け継がれている。

森本さんと松尾さん

仕事を終えて喫茶スペースで休憩中の森本代表(左)とスタッフの松尾さん(右)

筆で書かれた結良里の思い

喫茶スペースの額。コミュティキッチン結良里の思いが掲げられている。

膨らむ夢

県民交流広場に対する助成は終ったが、活動は今も元気に続いている。

しかし、活動を支える仲間は、ほとんどボランティアに近い待遇なのが現状だ。もっともっと多くの人にこの「とふめし」を広めて売り上げを伸ばし、仲間の努力に少しでも報いたい。そうすることを通してさらに地域を元気にしたい。それが森本さんの願いだ。

「自立せよということね」

そう語る眼は微笑みながらも鋭い。

「そのためにも、他地域からもっともっと多くの方に大山に来てほしいわね」と語る森本さん。枝垂れ桜で有名な『高蔵寺』や、国の登録有形文化財になっている『西尾家住宅』、旧大山保育園舎を改装して作ったカフェなど、数々のお勧めスポットが飛び出してくる。

「春の桜、秋の紅葉と、季節ごとにすばらしい自然を満喫できる場所なのよ」

ステップを踏む森本さん

美味しく感謝

森本さんの好きな言葉は「美味しく感謝」。

「この仕事の最大の魅力は人の笑顔が見られること。お客様が『ごちそうさま!』と言って帰る姿を見る瞬間がたまらなく嬉しい」

県民交流広場を契機にした伝統料理「とふめし」による地域おこしの取り組みは、ふるさとに受け継がれる趣法の精神のもと、多くの人たちに支えられ、広がっている。

美味しく感謝

 

 

(公開日:H26.4.25)

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