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長田神社前商店街振興組合

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2016/06/25
村上季実子さん
(64)
兵庫県神戸市
長田神社前商店街振興組合

地下鉄長田神社前駅、神戸高速鉄道高速長田駅から北へすぐ、商店街の象徴である朱色の鳥居をくぐると長田神社の境内まで53店舗が軒を連ねる長田神社前商店街。神功皇后時代以来1800年の歴史を誇る、神戸内でも有数の古刹である長田神社の門前町として栄えてきた。
村上季実子さんは、生まれも育ちも長田区。ご両親がはじめた小売店の二代目店主として、子育てと仕事のみならず、長田神社前商店街振興組合の中心メンバーとして、商店街の賑わいを復活させるべく、新たな取り組みを次々と提案してきた仕掛け人でもある。

長田神社前商店街振興組合 地域活性化部長 村上季実子さん (兵庫県神戸市長田区)

どんな経験も無駄にならない

短期大学を卒業後、すぐにお惣菜店を継いだわけではなかった村上さん。親戚の「つて」で就職するという話もあったのだが、まずは自分で勤め先を見つけようと友人と一緒にアパレルメーカーの就職試験を受けた。時代はDCブランド全盛期。新卒採用となり、4月からOLとして勤務することになったのだが、配属先は希望とは真逆の総務部人事課だった。
人事課といっても、課長一人に部下の村上さん一人。従業員400名に新規採用が400人というありえない人事が行われた年度で、長時間残業は当たり前。仕事が終わらない日々に、53kgあった体重も48kgまで痩せたそう。

当時、会社は常に人手不足だったため、自分の部署である人事の仕事だけではなく、営業女子の接客業に居合わせれば手伝うなど、他部署のお手伝いもよく買って出た。5年間の会社員生活で学んだことは、のちの店舗経営や商店街振興組合の運営の際、思わぬところで役立っているという。「OLの時に学んだ知識が役立った経験が何度もありました。何事も無駄になりません。みなさんも何でも経験と思って、無理なお願いも受け入れてみては」

会社員から店主への転身、そして震災が・・・

アパレルメーカーに5年勤め、25歳で今度は両親の跡を継ぎ切り盛りするようになった。当時扱っていたのは食品メーカーから仕入れた練り物中心。しかし、会社員時代の経験から、食品業界の動向を調べ、「これからはお惣菜だ!」と確信した。店を継いだ時期は再開発事業の協議中、商店街の移転があり、仮設店舗での販売が間近に迫っていた。仮設が建つまでの二週間、ほかの惣菜店で研修をし、1日の流れを学び、仮設店舗で毎日おかず3品をメニューを変えながら「日替わりおかずセット」を販売。平成元年8月に既製品の店からフランチャイズ1号店、おかずふぁくとりーとしてオープンした。

時代を先取りした店の経営は順調だった。しかし、平成7年1月17日、阪神・淡路大震災が発生した。震災では、商店街の南半分が全壊。村上さんは「商店街全体がつぶれてしまうのでは」一瞬弱気な考えが頭をよぎったが、「こんな時だからこそ商売人は一刻も早く店を開けなあかん、南が復興するまで北の組合員で頑張ろう」と、半壊判定中の自身の店を翌月5日に再開した。

震災で崩れた長田神社前商店街の店舗

商店街の復興と地域の活性化へ

震災から一年が過ぎ、日常が戻りつつある中、新たな取り組みが始まった。広範囲な長田区で自分たちの商店街の認知度アップに、平成8年、長田商店街から「長田神社前商店街」へと名称を変更。6月には長田神社商店街の復興の象徴ともいうべき大鳥居の改修工事と竣工式を。まだまだ活性化への勢いは止まらず、7月に女優の黒田福美さんからの「神戸の復興支援を手伝いたい」という申し出を受け、カタログ販売「がんばってます KOBE」を発足した。さらに黒田さんの尽力により、被災地の頑張る姿をメディアが紹介すると、放送した瞬間から電話、FAXが鳴りやまない事態に。番組を見た視聴者が支援になればと、カタログの商品を注文してくれたのだった。その反応の大きさに驚き、その晩、村上さんたち商店街振興会のメンバーは緊急会議を開き、スムーズに商品を届ける仕組みを作ったという。

震災から復活した、現在の長田神社前商店街。復興の目印として商店街入口に鳥居が建てられた。

カード事業を通じた地域貢献

村上さんは震災後の復興事業の経験から、地域を盛り上げるには地元の商店街が盛り上がることが必要だと実感。自身の店舗経営と同時に、商店街振興組合の活動へ、より熱心に取り組むようになった。神社前にある商店街の特性で和菓子の老舗が多いことから発案された和菓子のギフトセット「長田物語」も取り扱う菓子の賞味期限の違いなど、商品化に至るまで苦労は尽きなかったが、毎週行う商店主たちによる会議でとことん話し合い、ひとつひとつ乗り越え、結束を固めてきたのだった。

毎月行われるグージー瓦版会議。情報共有をし、地域内での連携を高めている。

数々の地域活性化活動の中でも、平成25年にがんばる商店街30選(経済産業省)に選ばれるきっかけとなった事業に「タメ店カード長田」(現:萬福カード長田)がある。カタログ販売の発展形として平成13年4月1日より発足したこのカード事業は、ポイントを現金として使用できる以外に、購入金額の端数分を地域の婦人会やPTA、ほかボランティア団体に寄付できることが最大の特長。地元で買い物をすることで地域に貢献できる仕組みはかなり画期的だった。

地域を牽引していく、次世代の育成にも力を入れている。

福のあるまち長田神社前とともに

震災で商店の大半が全半壊という壊滅的な被害を受けた、長田神社前商店街。地元商店主の努力で神戸市内でも早期に再建できたが、門前町としての活気は薄れてしまった。そこで、街の変遷に合わせ、地域団体や周辺の学校と連携し、「夏越ゆかた祭り」「長田神社できもだめし」「おかしはべつばら」など数々のイベントやまちのシンボル、コンセプトづくりを進めてきた。

ゆかた祭りで賑わう長田神社前。開催まで、様々な団体との連携や信頼づくりがなくてはならないものだった。

様々な出店でスイーツを堪能することができる「おやつはべつばら」

近年、長田地域の高齢化、山麓部による交通の便の悪さによる買い物難民の増加などの問題を解決するために、商店街の各店舗で取り扱う商品が掲載されたカタログを配布し、注文配達の宅配事業に取り組んでいる。「同じ住民であるという商店街ならではの信頼関係が結果として、地域の活性化と安心安全な街、いつまでも住み続けられる町になり商売に繋がる。」
イベントが固定化してくれば活気がなくなる。この悪循環を防ぐため、昨年からは村上さんの長女たち、地域で商売をしている若者やPTAの保護者など30代が中心となって新しいイベント「コグージーMAZAR(マザール)」も展開している。自身の活動に加え、後継者の育成も視野に入れている村上さん。時代や街の変遷とともに、長田神社前商店街の進化は続くのだ。

(公開日:H28.5.25)

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