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北須磨団地自治会会長

すごいすと
2013/07/25
西内勝太郎さん
(72)
兵庫県神戸市
北須磨団地自治会会長

自治会活動が活発な北須磨団地では、「安全安心のまちづくり」の取組みが行われており、全国から各種団体の視察も絶えない。

北須磨団地自治会長の西内勝太郎さんに話を伺った。

北須磨団地自治会会長西内勝太郎さん

まちをよくする住民の力

神戸市須磨区友が丘の北須磨団地は、神戸の中心地までバスと地下鉄を乗り継いで30分程度。戸建と集合住宅合わせて約2,700世帯、約5,600人が暮らす住宅地。商業施設も近く、教育施設なら保育所や幼稚園、小学校から高校、大学のキャンパスまでが揃う。

北須磨団地の入口

北須磨団地の入り口。「友愛のまち」が掲げられている

「まちがきれいなことが、まず自慢のひとつ」と語る西内さんが、「ちょっと見てごらん」と指さす先は屋根付きのバス停。住民の手によってきちんと整えられた傘立てや掲示板が見える。掲示板には古い掲示物はなく、地域の通信、学校や児童館だより、将棋大会のお知らせ、防災ニュース、熱中症の注意喚起など、いろいろな情報が貼りだされている。バス停を通る人が立ち止まって読んでいく姿も見られる。

北須磨団地のバス停

北須磨団地のバス停。住民による管理が行き届いている

地域の清掃も住民によって熱心に行われている。広い団地全体をブロックにわけ、そこの住民がそれぞれを持ち回りで掃除をしている。まるで「いつも、どこかで、誰かが掃除している」ように見えるという。もとよりポイ捨て自体がないようにと、自動販売機を設置しないという念の入れようだ。

団地の南には80本の桜が植樹された桜の丘がある。県民まちなみ緑化事業で植樹されたこの丘は、ソメイヨシノと八重桜両方が植えられており、長い期間桜を楽しむことができる。この桜の丘、桜だけでなく紫陽花や、「その数神戸一」という200本の梅も植えられ、住民によって管理されている。今年はそこにもみじも加わって、季節ごとにその変化を楽しめる丘となっている。

住民が気軽に散策できる竹林道もある。「竹林がこんな近くにあるというのがいい。歳いったら京都までいけないでしょ」西内さんは冗談めかして話す。団地造成以降手つかずだった隣接する竹林を、15名ほどのボランティアグループが約4,000本の竹を手作業で切り出し、3年かけて整備した。切り出された竹は子ども向けの工作教室に利用され、整備された竹林では、さつま芋や原木を使ったしいたけなどが栽培されている。

北須磨団地の住民の高齢化率は45.41%。高齢化が進んでいるというが、これだけのものが住民の発案と日々の努力で保たれている。

竹林内のしいたけ園

竹林内にあるしいたけ園。秋にはしいたけ刈りも楽しめる。

安心していきいき元気に暮らせるまち

まち並みを保つ活動だけが北須磨団地自治体の取組みではない。「すくすく、キラキラ、ピンピン」を合言葉に、子どもも大人も安心して元気に暮らせる仕掛けがたくさんある。

しゃべりーなでの西内さん

年をとっても楽しく「ピンピン」と暮らすために、団地のなかには楽しめる場が多く用意されている。そのひとつが喫茶「しゃべりーな」。住民の手で運営されている喫茶スペースだ。

 

この「しゃべりーな」、午前10時~午後8時までと1日中利用することができる。喫茶メニューに加えて、日替わり定食やビールも取り扱うなどメニューも豊富。団地内にある障がい者小規模作業所で作られるケーキもここで販売され、ご近所の人たちのお土産としても重宝されているという。近くの地域福祉センターで、卓球、囲碁、カラオケやダンスなどの活動が日々行われていることもあって、活動を終えた地域住民でお店は賑わう。

ちなみにここ「しゃべりーな」で使えるコーヒーチケット、自治会が運営する施設でのボランティア活動のお礼としても配られている。お礼も自治会活動に還元される仕組みなのだ。

しゃべりーなで集う女性たち

たくさんの人が集うしゃべりーな

次世代の子どもたちへ残したいと長年続けられている活動もある。

団地に隣接する奥須磨公園では、その昔ゲンジボタルが多く見られたそう。再びホタルが住めるようにと、公園周辺の環境整備、ホタルの放流や育成に試行錯誤を続けてきた。この日は年に一度の「ホタルの夕べ」。今年で活動から10年、また飛びはじめたホタルを見ようと多くの住民や子どもたちが集まってくる。中には、かつて団地で育った子どもが成人して、自らの子どもを連れている姿も見られる。「この形になるまでに長かった」と西内さんも感慨深げだった。

ホタルの夕べ、西内さんのあいさつの様子

ホタルの夕べ。集まった子どもたちが西内さんの話を真剣に聞いている

自分たちのまちは自分たちで守る

こうした熱心な取組みが見られる住民自治のまち、北須磨団地。まち開きは、今から46年前の昭和42年。兵庫労働金庫と兵庫県労働者住宅生活協同組合が連携して建設された。自治会が結成されたのは翌年の昭和43年。かつてを振り返って西内さんは語る。「当時は何もなかった。バス停はない、学校もない、食堂もスーパーマーケットもなかった」。暮らしに必要なものは行政と交渉して誘致し、それでも足りないものは自治会で作ってきたのだと話す。例えば保育所や幼稚園。増加する子どもの保育施設が必要と考え、自治会と地域住民によって、全国で初めて生活協同組合立の北須磨保育センターが昭和44年に設立された。現在でいう幼保一元構想が盛り込まれた施設としてスタートしたという。

 

その北須磨団地で、平成9年に起きた児童殺傷事件が地域に大きな衝撃を与えた。この事件をきっかけとして、翌年の平成10年に民間の交番とも言える「友が丘防災防犯センター」が自治会によって設立された。当時、団地内には交番がなかった。そこで各地域団体から資金を集め、住民の手でセンターの設立にこぎつけた。「安全安心コミュニティ宣言のまち」を掲げるこのセンターは、自治会役員がボランティアで運営している。現在月曜日から土曜日まで4つのグループが交代で常駐し、見守りやパトロール活動を行っている。交番ではないものの、警察官の立ち寄り所ともなっているという。小学校の下校時には何組もの子どもたちがセンターに立ち寄り、中にいるボランティアと談笑していく姿があった。

友が丘防災防犯センター

「防犯のまちづくりは“あいさつ”から」との考えから取り組まれているのは、北須磨団地を全国的に有名にした「あいさつ運動」だ。向こう三軒両隣のみならず、出会う人みんなとあいさつをする。こうして気軽に声を掛け合うことから、顔の見える関係が作られ、安心して暮らせる基盤になる、という仕組みだ。「『あ』…明るく元気に、『い』…いつでも、『さ』…先に、『つ』…続ける、簡単なことでしょ?」と、西内さんは笑う。

あいさつ運動は地域の子どもたちの見守りにも活かされている。毎日小学校の登校時間には、地域住民と校長が揃って校門の前に立ち、子どもたちとあいさつを交わす。「校門の前に立っている地域の人は、10年間自主的にやっている。この前高校生から彼らに『毎日ありがとう。おかげで卒業できました』というお礼状が届いた。そんなこと言われたらなかなかやめられないな」と西内さんは楽しげに話す。

登校時のあいさつ運動の様子

「この団地には自分の家が欲しいと考えて、それを手に入れた人たちが集まっている。ここが自分の終の棲家やと思ってみんな住んでる。だから自分たちで何とかしようと考える」。そう西内さんは語る。

自分のまちを楽しみ伝える力、まきこみ力

そんな北須磨団地自治会の3代目会長である西内さん。西内さんが北須磨団地に移り住んだのは、昭和47年。自治会にはその頃から副会長として関わっている。会社員として企業勤めの傍ら、副会長の責務も果たしていた。「大事な会合は、会長に随行して出席してたよ。有給休暇の半分は毎年使ってたな」

定年退職後、北須磨団地自治会会長に就任。「今まで会社でよく働いたし、次は世の中の役に立たなくてはと思って務めてる」。会長となり、10年が経過した。

北須磨団地自治会の会議風景

北須磨団地自治会の三役会議。この日は行政担当者も出席し、団地内の道路整備についての話もされた

西内さんが自治会の活動を語る時、たくさんのエピソードが飛び出してくる。登場する人物の人柄や、数値上の成果までもが盛り込まれ、聞く人を惹きつける。

会議でも次々に上がる報告をまとめ、全体を采配する一方、「2丁目の誰々さんは100歳やで」「あそこの側溝で誰々がけがをしたらしい」と細かなことまで把握されている。

会議中の西内さん

副会長で婦人部会長の下山さんは「会長の話っていうのはやっぱり聞いてしまうよね」と話す。「なんかこう、人を引き込むのが上手やなぁって」

同じく副会長の西山さんはこう語る。「僕はね、西内会長は遊びが大好きなんやと思うよ。そこから学ぶものは多いと僕は思う。楽しいことは人が寄ってくるでしょ。楽しいことさせてもらったんやから協力しないとと思うしね」

イラストになった西内さん

パンフレットにも笑顔で登場

最後に失礼を承知で、役に立っている実感はありますかと質問した。返答は一言「立ってるな」
「施設ができる、桜も梅も咲く、若い人も年寄りも元気がある。それを見てたら、役に立ってると思える。人生、一生生きるんだから楽しく元気でないとあかんでしょ」

「あいさつするのは簡単でしょ? 掃除は自分の家の前をしたらいい。それをみんながすれば、やね。それだけです。何もむずかしいことはいらない」

西内さんの座右の銘は「悔いを残さない」。楽しく元気に、今日も地域を歩く。

西内勝太郎さんの座右の銘、悔いを残さない

 

(公開日:H25.7.25)

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