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(株)ピーナッツ 代表取締役社長

すごいすと
2015/06/25
野﨑未知さん
(44)
兵庫県養父市
(株)ピーナッツ 代表取締役社長
但馬地域の中央に位置する養父市は、西部に県内最高峰の氷ノ山や鉢伏山、ハチ高原、若杉高原が、北部には妙見山がそびえるなど、雄大で美しい自然に囲まれている。

姫路で生まれ育った野崎未知さんは、結婚を機に養父市大屋町へ移り住むこととなった。婚約者に連れられて国道29号線を走り、但馬路に入った時、峠を越えた先に本当に人が住んでいるのかと不安に駆られたと言う。

「田舎が深い」と感じた養父市に暮らして21年。今やすっかり但馬の人となった野﨑さんは、地域を元気にするために会社を立ち上げ、地元商店と連携した通販サイトを運営するなど、地域活性化に取り組んでいる。

写真:(株)ピーナッツ 代表取締役社長	野﨑未知(のざきみち)さん

自然も人もやさしいところ

野﨑未知さんが婚約者と出逢ったのは、野﨑さんが勤務していた姫路の会社に、彼が但馬から1年間の研修に来ていた時のことだった。

「結婚しようと思った相手の勤め先が朝来市であり、たまたま家が養父市にあった」と言う野崎さん。知らない土地で少し不安もあったが、但馬は「自然と人がやさしいところ」だと感じた。地域の人は当たり前と思っているけれど、風が吹いても雨が降っても嫌な匂いがしない、そんな清々しい空気の中で暮らすことが喜びと感じられた。

結婚当初は夫の両親が営む小さな衣料品店を手伝いながら、3人の子育てをしていた野崎さん。昔は大屋に鉱山があり店も繁盛していたが、鉱山が閉鎖し大型店が進出してから、商売は円滑とは言えない状態になっていた。子どもに着せたい服、自分が着たいと思う服を置くなど工夫したが、若い人が少なく、売れなかった。次第に先が見えなくなってきた。

写真:養父市の風景

結婚してから野﨑さんは、「野﨑さんの家のお嫁さん」「野﨑さんの奥さん」「○○ちゃんのお母さん」と呼ばれ、一人称で呼ばれることがなくなった。誰かのための存在であることはかけがえのない事ではあるけれど、一生をこのまま過ごして良いのだろうかと思った。

専業主婦として持ち続けた“もやもや” を解消しようと野﨑さんが動き出したのは、3人目の子どもが2歳になり、保育園に通いだした時のこと。ハローワークに行き、航空写真から地図を作る「オーシスマップ」という会社を紹介され、アルバイトを始める。当初は「お嫁さんなのに・・・」という声が聞こえてくるかもしれないと覚悟したが、家族はすんなりと送り出してくれた。仕事で遅くなるときは義母と義姉たちがサポートしてくれた。「仕事を続けられたのは、家族のおかげ」と言う。

アルバイトからの出発

地元では珍しい航空写真測量会社でアルバイトとして仕事を始めた野﨑さん。測量を学び、航空写真を基に地図を描く仕事に携わった後、システム担当に転向。仕事を始めた当初は「上司の役に立ちたい」と思っていたが、やがて「会社のため」に変わり、「お客様の役に立ちたい」「仕事を通じて社会の役に立てる人間になりたい」と、働く気持ちが変化していく。気持ちの変化とともにキャリアを積んでいった野﨑さんは、アルバイトから社員に、さらに課長になった。

 

社会の役に立ちたいと考えていた野﨑さん。やがて、仕事を通じて地域を元気にしたいと思うようになる。

養父市には「学業を終えて帰ってくる子どもたちの働く場所がない」と感じていた。帰ってくる気持ちがあっても働くところがなければ、地域はどんどんすたれていく。大人が生活していて希望を持てるところでなかったら子どもたちは帰ってこない。3人の子どもの母親でもある野﨑さんは、「自分の子どもでなくても良い。帰ろうと思った子が帰れる所にしたい」と起業を決意し、会社を退職した。

廃校になった青渓中学校の校舎に株式会社オーシスマップと株式会社ピーナッツがある

廃校になった青渓中学校の校舎に株式会社オーシスマップと株式会社ピーナッツがある

ウルトラ但馬スマイル

地域の力になりたいと起業を決めた野﨑さん。生まれ育った地域を元気にしたいとUターンして起業したオーシスマップ社長・大林さんのバックアップを得て、会社を興すことができた。オーシスマップからの出向で一緒に仕事を始めることになった仲間と共に、ホームページ制作会社「株式会社ピーナッツ」がスタートを切った。

「ピーナッツ」は、person(人)、earth(地球)、art(芸術)、nature(自然)、ultra tajima smaile(ウルトラ但馬スマイル)の頭文字から名付けた。メンバーと共に、人・まち・地球の笑顔を繋ぎ、地域の活性化を図っていくという気持ちが込められている。

オーシスマップ社長大林賢一さんと野﨑さん

オーシスマップ社長大林賢一さんと野﨑さん

写真:株式会社ピーナッツのメンバー

株式会社ピーナッツのメンバー

実績の無い会社だったので、野﨑さんはドキドキしながら飛び込みでの営業を重ねた。

「営業先では虫を払うよう扱われたり、人間性を否定するようなことを言われることもあり、随分落ちこみました。そんな気持ちを癒し、引き上げてくれたのは子どもたちと過ごす時間でした」

地道に営業活動を続けるうちに、人とのつながり、企業とのつながりを持てるようになり、会社は、徐々に軌道に乗り始めた。

写真:株式会社 ピーナッツの事務所

株式会社ピーナッツの事務所

やぶらぶウォーカー

ピーナッツでは、地域の企業や商店を元気づけたいと、全国に向けて養父市の魅力や特産品を丸ごと発信するオリジナル通販サイト「やぶらぶウォーカー」を運営し、養父市を離れて暮らす人にふるさとの食品や工芸品などを届けるとともに、全国に養父ファンを増やしている。最近は市外の商品も取り扱うようになり、但馬地域の特産品などがサイトの店頭に並ぶようになった。

現在このサイトにかかわる地元企業や商店は100を超える。年1~2回開く「やぶらぶサポーター会議」では「企業同士が出合い、化学変化が起こって新しいコラボレーション商品ができるというのも嬉しい」と、野崎さんは言う。

大型店舗にはない地元の商品を扱うことで商店が元気を取り戻し、近くの店が開いていれば、車で出かけられないお年寄りも買い物がしやすくなる。また、地元ならではの商品は、県外に住む人たちに懐かしい故郷の風を送ることができる。

最近、カタログ版も作り、紙面になったことで、高齢者の利用も増えている。地元の商品を知ってほしい、買って欲しいという気持ちが、新しいものを生み出し、但馬の魅力アップにつながっている。

写真:やぶらぶウォーカーのキャラクター「やぶっさん」

やぶらぶウォーカーのキャラクター「やぶっさん」

ネコの手サポート やぶらぶお買い物便

野﨑さんは、地元商店とのつながりを生かして、高齢者の生活を支える取組みにも力を入れている。

養父市では、高齢化により遠くの店まで出掛けることが出来ず、買い物が困難になった人が増えている。そんな人たちのために、養父市とヤマト運輸とピーナッツが連携した「ネコの手 やぶらぶお買い物便」が誕生した。

ピーナッツが電話による御用聞きをして注文品を商店に伝え、ヤマト運輸が回収して宅配するというシステム。複数の店の品を必要な分だけ、一括で届けることができる。

これまで通販で必要量以上に頼んでいた高齢者には「生活スタイルにあった買い物ができる」と好評だ。人手の欲しい時に借りられる“ネコの手”になっている。

注文を受ける時に世間話をしたり、健康状態の確認や、しばらく注文がない時の安否確認など、高齢者の見守りも兼ねているお買い物便は、1日中、誰とも話すことなく過ごすことも珍しくないお年寄りの気持ちに寄り添う大切な役割を担っている。

やぶらぶお買い物便

やぶらぶお買い物便

人、 皆 師

野﨑さんの好きな言葉は「人、皆 師」

「支えてくれているメンバー、ご縁を頂いている商店の皆さんから学ぶことが多い」と、周りの人に教えられ、支えられて今日があると、感謝の気持ちが込められている。一緒になってアイデアを練り、問題があるときは解決策を考えてくれたおかげで、思いを形にすることができた。

今、気がかりに思っていることは、1人暮らしのお年寄りが安心して暮らせる環境を整えること。例えば、雪かきができない家でボランティアが来るのを待つのではなく、確かに来てくれるということが保障され、不安なく生活できるようなシステムを作っていきたい。

自分たちも確実に年を重ねる。今、やっている地道な取り組みは確実に将来自分たちに返ってくる。

地域を元気にと願う野﨑さんは、次なる課題解決に取り組んでいく。

写真:好きな言葉「人、 皆 師」とともに。

(公開日:H27.6.25)

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