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株式会社ICB

すごいすと
2019/03/25
瀧井智美さん
(45)
兵庫県神戸市
株式会社ICB

 

専業主婦からの復職を目指すも、厳しい現実を突きつけられた再就職活動の苦い経験と、スキルや資格を手にしても、なかなか就職できない女性たちを目の当たりにしたことから、女性の就労支援をサポートするキャリアカウンセラーに。活動を続けるうち、就職後も長く働き続けるためには企業の変革も必要だと気づき、ワーク・ライフ・バランスのコンサルティング活動をスタート。2010年にワーク・ライフ・バランスを推進する独立系コンサルタントが集まった専門チームWLBC関西を立ち上げ。さらに2015年、キャリア開発、組織の活性化、人材育成を支援する組織として、12年間フリーランスで行ってきた活動「オフィスICB」を株式会社ICBに法人化。企業や自治体での導入支援研修やコンサルティング、女性のための働き方セミナー、大学生のキャリアデザインなど、ワーク・ライフ・バランスの浸透と推進をめざし精力的に活動を続けている。

 

WLBC関西メンバー集合写真

WLBC関西メンバー集合写真

 

ICBを仲間とともに立ち上げ活動を精力的に展開

ICBを仲間とともに立ち上げ活動を精力的に展開

 

仕事に就けない! 採用面接さえ断られた日々

 

「実は再就職できるまで、本当に苦労したんです」 平成10年、営業事務として勤務していた職場を出産のため退職。その2年後、瀧井さんは再就職を目指し就職活動を開始した。しかし、どこに応募しても面接さえ受けさせてもらえなかった。子どもと一緒にハローワークへ行くと「子どもを連れて面接に行くのか」と言われ、保育所への入所を相談に行けば、共働き家庭の待機児童がたくさんいるのに無職では絶望的な状況だとわかり途方に暮れた。 「最後は近所の定食屋さんに、パートタイマーでいいから働かせてほしいと頼みに行くと『あなたは若いんだから、ちゃんと再就職しなさい』と言われました」 こうした日々を半年ほど過ごした後、やみくもに活動をしてもだめだと感じた瀧井さんは、職業訓練校で一時保育が用意されたパソコン教室に通い始めた。 「その教室で講師の方から『あなたはパソコンのインストラクターに向いている』と言われたんです。必要なのは資格じゃない、話しかけやすさだって」 平成12年、こうして瀧井さんはパソコンのインストラクターとして、ようやく再出発を果たすことになった。

 

瀧井智美さん

瀧井智美さん

 

キャリアカウンセラーという職業との出会い

 

パソコン教室で担当した40代・50代の女性クラスで、瀧井さんは現実の声に触れた。 「パソコンが使えるようになったからといって、すぐ再就職ができるわけじゃない。子どもの手が離れたので思いきり働きたいと思っても、年齢が壁となり雇ってくれるところがない。その悩みにはとても共感できました」 瀧井さん自身も、二人目の出産後の働き方をどうするか迷っていた時期だった。 「選択肢の少ない女性の働き方を、なんとかできないかとずっと思っていたんです。その頃受講したセミナーの講師の方が、女性のためのキャリアカウンセラーを育てる授業を始めるとおっしゃっていたことを思い出し、京都まで子連れで通いました」 平成15年、二女の出産から2カ月が過ぎた頃、瀧井さんにそのキャリアカウンセラー講師から一本の電話がかかってきた。 「同じセミナーの受講者だった加古川市の男女共同参画センターの所長が、女性の就業支援ができる人を探しているので、出会ってみてはという連絡でした」 面談後、すぐに採用が決定。平成16年、瀧井さんはキャリアカウンセラーとして活動を始めた。その後、神戸市のひとり親家庭支援センターでのシングルマザーの就業支援、若者しごと倶楽部でのキャリア支援など、キャリアカウンセラーとしての活動の場が広がるにつれ、瀧井さんにはある思いが芽生え始めていた。

 

兵庫県内にとどまらず全国を飛び回ってコンサルティングを行っている横山さん

兵庫県内にとどまらず全国を飛び回ってコンサルティングを行っている瀧井さん

 

人生という経験を、仕事に活かせる職場をつくろう

 

当時、男女共同参画センターでのキャリアカウンセリングには、たくさんの女性たちが相談に来ていた。 ある時、「働いた経験がないなら就職は無理だと言われたけれど、私も働けますか」と、就職経験のない専業主婦が瀧井さんの元へやって来た。 「その方がこれまで一番頑張ったのは、不登校になった我が子のために、コミュニケーションについて勉強したこと。それは学童保育やフリースクールで、絶対に活かせる経験です。無事にフリースクールに就職されました」 さらに、転職の相談が多いことにも気が付いた。 「『育児経験で培った力を発揮したいのに、職場に復帰したとたん異動になった』『短時間しか働けないから任せられないと言われた』『新入社員時代の仕事に戻された』という内容が多かったですね」 キャリアとは仕事経験だけではなく、人生経験すべてを意味するという瀧井さん。人生経験というキャリアを活かしたい、限られた時間の中でも、働きがいを持ってチャレンジしたい。そう望んでも、企業側が働き方の選択肢を用意しない限り叶わない。 「希望を尊重し合い、応援し合える多様な働き方や風土を、どうやって企業の中に作ればいいのか。いろいろな人がいるからこそ、今までと違うアイデアやサービスが生まれるはず。働き続ける人のためだけじゃなく、戻ってきた人も活躍するための支援をしたいと思うようになったんです」 男女共同参画センターでの5年間、女性の就業の難しさを改めて実感すると同時に、企業への支援も必要だと気づいた瀧井さんは、ワーク・ライフ・バランス推進コンサルタントとして、フィールドを広げていくことにした。

 

できない…ではなく、どうしたらできるかを考える

できない…ではなく、どうしたらできるかを考える

 

みんなの「ライフ」を豊かにするために

 

「企業でのワーク・ライフ・バランスのコンサルティングで最初に行うのは、社員がどういう職場で働きたいと思っているかを聴くことです。その希望を実現するために必要なことを、みんなで一緒に考えていきます」 コンサルタントとして、「ひょうご仕事と生活センター」で瀧井さんが最初に担当したプロジェクトは、出産を機に退職を迷う女性社員と、辞めてほしくない経営者のケースだった。 「経営者は、出産後の復帰を支援するプロジェクトを立ち上げたい、しかしその女性社員は自分のためだけにみんなに動いてほしくない。そこで、その女性だけではなく、社員みんなの働き方を見直すプロジェクトを実行しようということになったんです」 育児中の人が育児休暇などを取ると、他の社員はその人の分まで仕事を引き受けることとなり、結果、引き受けた人のワーク・ライフ・バランスが実現しない、と考えている人も多いという。 「ワーク・ライフ・バランスの『ライフ』は、育児や介護に携わる人だけのものではありません。どうしたら限られた時間の中で仕事が上手く進められるのか、みんなで考えて工夫する。そうして生まれた時間を、社員全員が取り組みたいことを行いながら仕事の責任も果たし、なおかつ一人一人が自分にとって満足のいく豊かな時間として過ごす。それがワーク・ライフ・バランスです。私も私の仲間も、大切にしたいことを大切にできないのはとても辛い。個人の幸せも実現し、同時に組織や社会も成長し発展していくことに力を注ぎたいんです。みんなにライフはあるんですから」 それを叶えるのは、経営者の「想い」だと瀧井さんは言う

 

「ひょうご仕事と生活センター」のコンサルタントとして、ワーク・ライフ・バランスの推進も担っている

「ひょうご仕事と生活センター」のコンサルタントとして、ワーク・ライフ・バランスの推進も担っている

 

幸せになれる働き方、それがワーク・ライフ・バランス

 

「働き方改革とは、残業を減らすことや業績を上げることが目的ではありません。社員それぞれの事情を大切にしながら働いてほしいという、経営者の想いの形です。企業なら社員の幸せのため、自治体なら住民の幸せのために働くこと。幸せにつながらない仕事の時間を削ること。これが本当のワーク・ライフ・バランスにつながるんです」 例えばある企業では、しなくてもよい業務をして徹夜になりミスを重ねたり、会議に招集しても社員が集まらないなどの課題があった。 「お客様も世の中も幸せにするために、自分たちは商品を作っている。だからまずは、自分たちが幸せになるために根本から見直しを図ろうと全員で話し合い、働き方改革が進みました」 他にも、育児休暇を取って初めて地域に参加することにより居場所ができた男性社員や、ワーク・ライフ・バランスに取り組むことで評価も業績も上がり、社員40名ほどの規模に就職活動の学生エントリーが2,000人を超えた中小企業もある。 「特に兵庫県は、仕事と生活の調和推進宣言企業が1,896社(平成31年1月31日現在)ある上、認定企業や表彰企業も多く、ワーク・ライフ・バランスの先進地域だと言われています。こうした元気な企業が増えれば、取り組んでみようと思う企業も増えるはず。それが地域全体の活性化につながっていくと思うんです」 そのために瀧井さんは、様々な新しい取り組みに挑戦している。

 

働き方改革のセミナー講師を務める

働き方改革のセミナー講師を務める

 

新たな働き方は、今までの枠を超えた先にある

 

「一つの場所や一つの役割、一つの考え方に縛られず、いろいろな可能性を広げたいんです。これからは、一つの組織に所属しながら別の組織でも活動する人が増え、時間の使い方の工夫がもっと必要になってきます。ワーク・ライフ・バランスだけにとらわれず、今までにないイノベイティブなものを生み出したい」 その一つが「組織や企業の枠を超え、みんなで一つのことに取り組む事業」だと言う。例えば企業なら、指導者やアドバイザーを社外にも求め、他社の社員も一緒に育成する。在宅勤務を採り入れたい事業所同士が集まって案を出し合う。人事評価を見直したい企業同士で、専門家を共有し勉強会を開く。パートタイマーからステップアップしたい人の新しい働き方をどう整え、戦力化していくかを学び合う。また大学では、新しいキャリア教育の形として、オンラインを利用した講義に大学の垣根を越えて参加し合ったり、関西一円の大学が連携しチームを組んでワークショップをするといったものだ。 「自分自身が新しい働き方、新しい組織づくりを率先して形にする実践者でありたい」と語る瀧井さん。その背景には、支えとして持ち続ける信念がある。

 

企業・行政・NPOなどセクターの壁、組織内の部署の壁、専門分野の壁など、立場の違いを超えた対話により、協調アクションを生み出すフューチャーセッションの開催

企業・行政・NPOなどセクターの壁、組織内の部署の壁、専門分野の壁など、立場の違いを超えた対話により、協調アクションを生み出すフューチャーセッションの開催

 

通常の創造的にアウトプットをつくる「ワークショップ」の要素に加えて、お互いの人としての関係性を大切にし、問いをしっかりと深めて行く「ダイアローグ」の要素を大切にしている

通常の創造的にアウトプットをつくる「ワークショップ」の要素に加えて、お互いの人としての関係性を大切にし、問いをしっかりと深めて行く「ダイアローグ」の要素を大切にしている

 

できない…でなく どうしたらできるか

 

「『できない』じゃなく『どうしたらできるか』を考え続けた20年でした」 再就職すると伝えた時、夫にも親にも反対された。誰からの応援もない中、周囲の人に助けを求めながら子育てと仕事に取り組んだ。 「できないと思うと、思考が停止してしまいます。これは働き方改革も同じです。どうしたらできるかを考えたら、自分たちに合った方法が見つかり、見つけることができれば取り組もうと思えます。実現したいことは、絶対に叶えられるんです」 「リード・ザ・セルフ」という言葉が好きだという瀧井さん。 「自分で自分をリードするという意味です。自分から何かを始めたら、周囲も『自分に何かできることはないか』と変わり始めます。今までなかったこと、『それっていいね』ということを、共感してくれる人たちと実現したい」 家族、職場、社会の幸せは、私たちが幸せになった先にあるもの。ワーク・ライフ・バランスとは、一人一人が自分の幸せを実現するためのものなのだ。

 

瀧井智美さん(公開日:H31.03.25)

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