目次
私たちは、朝来でいちばんカッコいい高校生!
「『地元ってどんなとこ?』って聞かれた時に、答えられた方がカッコいいと思う」。朝来市内の高校の生徒有志たちで活動する架空の学校「あさご高校社会活動部」。地元の魅力を「知る」「育てる」「伝える」活動を続けている。
2014年、地域おこし協力隊が始めた「あさごはんの会」に、高校生が手伝いとして参加したことが結成のきっかけ。「何かしたい、でも何をしていいのかわからない。そんな彼らに活躍の場をつくりたかった」。指導にあたる隊員・篠原諒太さんは語る。
テーマは「朝来のクリスマス」。モミの木のツリー、ステージイベント、地元の子どもたちとのダンスなど、「自分たちがやりたいことをやろう」と準備から当日の進行まで高校生たちが中心となって開催。大盛況のうちに幕を閉じた。
一日限りのイベントではなく、活動を蓄積してゆけるチームをつくろう。2015年2月15日「あさご高校社会活動部」がスタート! 自分のまちと初めて向き合う、もうひとつの“部活”が始まった。
現在の活動メンバーは6人。「先輩に誘われて、そんな活動もいいなと思って参加しました(左:足立季莉さん・生野高校2年)」「観光選手権の記事を見て、地元を好きな人間として参加したいと思った(右:太田隆介さん・生野高校2年)」
“入部”するまで、何もない「まち」だと思ってた
月2回の“部活”は野外活動が中心。体験や地域の人とのふれあいの中で、自分たちの育ったまちを改めて知る貴重な時間になっている。[写真:道の駅あさご「生野紅茶染め体験会」に向け、まず自分たちで紅茶染めを体験]
「参加しなさい」と誰かに言われるからじゃなく、自分たちが来たいから。やりたいことは、みんなで話し合って決めている。[写真:朝来の自然を全身で体験できる「フォレストアドベンチャー朝来」。自分の言葉で伝える大切さも学んだ]
楽しいと言いながら活動に参加する高校生たちは、言い換えれば楽しいと言いながら「まちと関わっている」ということ。まちに出て経験したことの価値は、その時わからなくても将来何かの形で生きてくる。[写真:茅刈り体験会]
「自分のまちが好きじゃない。だって何もないから。電車に乗り遅れたら時間をつぶすところもない。でも広報に載ったら、みんなが声をかけてくれて仲良くなれる。地域のつながりっていいなと思った。私のまちに、いいところがあったことに気がついた」
高校生は悩んでいる。限られた日程と限られた大人との関わりの中で決める進路。“部活”で現場に出ることで、地元には技術を持って暮らす多くの人と、たくさんの進む道があることを体験してゆく。[写真:紅茶づくりの魅力と担い手不足の課題を学んだ「生野紅茶の茶摘み体験」]
隣の大人に近づいてみた、みんな温かかった
「自分が育ったまちで、毎日声をかけてくれる地域の人に感謝の気持ちを伝えたい」。2016年3月27日、梶原菜々子さん(生野高校3年・当時)を中心にOBメンバーたちも力を合わせ、一日限定の高校生カフェ「菜の花」を開いた。
一緒に頑張った部員の足立さんは「今まで親や先生以外の地域の人と話す機会がまったく無くて、初めての経験だった。地域の人がたくさん来てくれたことに関われて、温かい気持ちになれた」[写真:梶原さん自ら製粉した米粉のお菓子。生野紅茶を添えてもてなした]
当日の会場は世代を越えた人たちの輪でいっぱいに。60名もの人たちが地域みんなで誘い合って足を運び、高校生メンバーたちに声をかけながら家路に就いた。「活動部を立ち上げて本当によかったと思った光景だった」。
「大人も関わり方を考えなくてはいけない」と篠原さん。 「子どもたちに地元に残って欲しいなら、彼らが困っていることに向き合ってやろう。大人が果たすべき役目だと思う」[写真:福島県での活動発表。「自分の夢を応援してもらえるのも、人の夢を応援するのも素敵なことだと思った」]
地域の人たちに変化が生まれ始めている。「いい活動ね」という共感や見守りから「こんなことができるよ」と、まわりの大人たちも一緒に行動に移そうとしている。子どもたちは大きな巻込み力を持っている。[写真:ゲストスピーカーとして招かれた「あさご・まちづくりカフェ」]
自分のまちを語れると、自分のことも語れるんだ
部活の目標だった観光プランづくり。地域が求めるもの、朝来市の魅力、観光客が求めるものを念頭に課題を見定め、テーマは「観光から移住へ」に決定。夏休みを返上し、全員でプランづくりに取組んだ。タイトルは「朝来で暮らす3日間の旅~地域とつながる田舎体験プラン~」
2016年8月25日、「全国高等学校観光選手権大会」で62校113プランの中ベスト8に輝き銅賞を受賞! 「つくってきたものを全部出せた。みんなに聴いてもらえて楽しかった」[写真:生野町のみなさんに借りた法被姿でプレゼンテーション]
「知らなかった! こういうまちの顔も、人も、文化もあったんだ!」 活動を経験した高校生たちは、話す言葉が変わってくるという。出会った大人の言葉をどんどん吸収して、自分の言葉で伝えられるようになってゆく。[写真:朝来市から功績者表彰「ちゃすりん賞」が贈られた]
「当たり前すぎて見ていなかった自分のまちのために、何かしたいと思うまでになった」。竹村直登さん(生野高校3年・当時)は気持ちの変化を素直な言葉で伝えきった。まちと関わると、自分にできること・できないことがわかってくる。大人の話を聞く中で、足りないものが見えてくる。[写真:Asago Labo プラン発表会]
「卒業後、まちを出たOBメンバーが帰ってきてくれるのが、たまらなくうれしい」と篠原さん。活動部を通した目でまちを見てきた先輩たちが持ち帰る、経験からのアドバイスは現役部員たちも楽しく、うれしく、聞きやすい。地域を思うあさご高校社会活動部のみんなで同窓会を開くのが、篠原さんの夢だ。
グループ紹介
朝来市地域おこし協力隊が地域の人々と開催していた「あさごはんの会」をきっかけに立ちあげられた、高校生による地域活動グループ。架空の高校の部活動「あさご高校社会活動部」は高校生メンバーによるネーミング。2015年2月活動スタート。地域おこし協力隊員・篠原諒太さんの指導のもと、これまでの活動は52回。卒業生9人、現メンバー6人で取組んでいる(2017年3月25日現在)。 活動内容は高校生メンバーたちの話し合いで決定。地域の中へ飛び込み、現場での成功体験や失敗体験を通して「自分たちのまちについて語れるようになる」こと、その先に「自分自身について語れるようになること」をめざしている。 「目標を掲げろ、夢を持てと言われても、強制されてできることじゃない。個性は何だと聞かれてもわからない。現場に出て地域と関わり、自分のまちを知ることで進路が見えてきたり、大人と話す中で自分に足りないものがわかってくる。その時初めて個性に気づけることもある。」と篠原さんは語る。 「まずは自分たちが前のめりになるくらい、この部活動を楽しむこと。」自分のまちを好きになれたその先に、活動のゴールが待っている。
全国高等学校観光選手権大会2016決勝大会進出 銅賞受賞!
高校生が考える「体験型観光プログラム」を競い合うコンテスト。62校113プランの中、ベスト8に輝いたあさご高校社会活動部のプランは「朝来で暮らす3日間の旅~地域とつながる田舎体験プラン~」。例えば10月なら、地域のお母さんの料理や朝来自慢の秋祭りを体験する。若い力が地域のために頑張る姿に評価が集まった。メンバーの一人・太田隆介さん(生野高校2年)は「秋祭りは年に一度、地域の人が集まる場。誰とでも笑顔で挨拶できる大好きな地元を知ってほしい」とプランの実現に期待を込めている。
あさご高校社会活動部の良きアドバイザー朝来地域おこし協力隊・隊員 篠原諒太さん
2014年、地域おこし協力隊として朝来市に移住。学生時代、東北大震災後に訪れた宮城県で、被災者を自発的にサポートする高校生たちを著した一冊の本に出会ったことをきっかけに、このたびの活動が始まった。「高校生との向き合い方がわからない大人が多い。かっこいいことを言わなくちゃと思って距離を詰められない。大人は経験を持っているし、反面教師にだってなれる。もっと同じ立ち位置で話せたら。」
「周囲の方々に温かく見守られているからできている活動。すべて、人のつながりがあればこそ。高校生たちも感じるものがあると思う。」Uターンする卒業生が現れる日まで、部活の“顧問”を続ける覚悟だ。