宝塚ふぁみりぃ劇場

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2021/06/25
宝塚市
宝塚ふぁみりぃ劇場

宝塚ふぁみりぃ劇場の地域活動をご紹介。

生の舞台鑑賞で、子どもたちに生きる力を育みたい!
宝塚のまちが大きな「家族」になる日を目指して。

生の舞台鑑賞で、子どもたちに生きる力を育みたい!宝塚のまちが大きな「家族」になる日を目指して。

 

生の舞台鑑賞で、子どもたちに生きる力を育みたい!
宝塚のまちが大きな「家族」になる日を目指して。

人形劇や舞台劇、コンサート、伝統芸能など、生で楽しむ芸術鑑賞。芋掘りやいちご狩り、野外キャンプ、お餅つきといった季節を感じる体験遊び。それぞれの取組を通じ、子どもたちに豊かな感性を育んで欲しいとの願いのもと、活動を続ける宝塚ふぁみりぃ劇場(以下、ふぁみ劇)。
会員同士の交流の場として始まった活動は、44年にわたる歴史の中で、宝塚市のすべての子どもたちのために、みんなで取り組む地域活動に拡大。育児相談や情報交換、異世代交流を行いながら、親子が居場所を持てる場として、孤立しがちな昨今の子育て中の親たちを支える役割も担っている。

【宝塚ふぁみりぃ劇場】
昭和30年代半ば、子どもたちの遊び場が、普及し始めたテレビに取って代わられる危機感を持った福岡市の母親たちが、生の舞台芸術に触れる機会を提供する会員制組織「おやこ劇場(*)」を設立。宝塚市では、その活動趣旨に賛同した8名の母親たちが、昭和52年「宝塚ふぁみりぃ劇場」と名付け発足した。
乳幼児から青少年、育児中の大人、祖父母世代まで、現在は約220名の会員が在籍。プロアーティストによる人形劇、舞台劇、音楽、伝統芸能の4分野の舞台芸術作品を年齢に応じてまんべんなく楽しめるよう、年間8本のプログラムを企画。その他、季節ごとの体験遊びや子育てサークル活動、地域団体とのイベント開催など、様々な活動に取り組んでいる。

 

*「子ども劇場」と名付けている団体もある

親子の時間が、人生の宝物になる場所

「入会当時、幼稚園児だった娘は29才になりました。ふぁみ劇で初めて鑑賞した人形劇は、二人とも今も覚えています。親子で共有した時間や思い出は、一生の宝物です。」
運営委員の金子ゆかりさんは、当時を楽しそうに振り返る。
「ふぁみ劇の基本は、運営者である自分たちが楽しいと感じられること。」と話す運営委員長の喜多河恭子さん。
発足から44年という月日を経ても、この活動への想いは変わらない。
一方、年数の経過とともに多様化する会員に合わせ、活動内容も拡がっている。例えば、幼児から小学生、中高生へと成長してゆく子どもたちに、世話役として力を発揮する活躍の場をつくろうと、平成元年には中高生を対象とした高学年委員会を発足。キャンプや祭りのリーダー役を通して、自主性を育む活動を続けている。

また、会員の中には、30年以上在籍し孫と共に参加する人もいる。そんな幅広い世代の隅々にまで発信が行き渡るよう、チラシや会報誌を発行し、ホームページも充実させている。
周辺地域では、少子化や子どもたちのライフスタイルの変化から会員が減少し、活動を休止せざるを得ないおやこ劇場も多い中、今もたくさんの会員とともに活動を続けているふぁみ劇。そのための工夫のひとつが、入会年齢に達するまでの小さな子どもたちと、その保護者のための子育てサロン「プチふぁみクラブ」の運営だ。

 

人形劇
この日は幼児向けの人形劇を開催、
家族単位で座れるように座席を作り、親子で鑑賞

親も子も一人にさせない、子育てサロン

プチふぁみクラブは、平成23年、保護者同士の交流や情報交換、育児経験のあるふぁみ劇会員による子育て相談の場としてスタート。工作や絵本の読み聞かせ、親子体操、ふれあい遊びをはじめ、サロンの庭で一緒に育てたサツマイモを使ったクッキングや焼き芋大会など、親子で参加したくなる多彩な活動を展開。年間のべ200組以上の親子が参加している。
「プチふぁみクラブを通じ、若いお母さんたちとの交流が生まれ、入会者が増えていきました。会員さんたちから舞台劇の感想を聞くと『そんなに楽しいなら入りたい』という気持ちになるようです。」と話すのは、運営委員の大西登司恵さんだ。
「お子さんが入会対象年齢になる頃から、お母さんは忙しくなります。お子さんとゆっくり過ごせる時期に、ふぁみ劇のことを知っていただく機会が欲しかったんです。自分の時間をつくるために子どもだけを預けたいというかつてのニーズから、父親も一緒に参加して家族で楽しみたいという流れが生まれ始めている今こそ、私たちの取組が求められていると感じます。」と話す。
さらに、子どもたちの孤立を防ぐためにも、保護者以外の大人の支えが必要だと言う大西さん。ふぁみ劇の在籍年数が長い会員は、子ども会員たちを乳幼児の頃から見守り続けている。いわば「親戚のおばさん」のような立場から、思春期を迎え生きづらさを抱える子どもたちに、気軽に声をかけられるというのだ。また母親からの相談にも、「あの子の性格なら、こうしてあげては?」と具体的にアドバイスができるという。こうした関わりが一つずつ経験として積み重なってゆくことで、次の世代へ上手に子育てのバトンを送ることにつながっている。
そんな子育てサロンに加え、ふぁみ劇の活動を拡げるためのもう一つの工夫が地域との連携だ。

 

地域で活動を共有することが、ふぁみ劇のエネルギー!

「ふぁみ劇会員だけでなく、宝塚市の子どもたちみんなのために活動をしよう。」
ふぁみ劇が掲げる活動の想いに呼応するかのように、地域全体で子どもを育てようという機運が、宝塚市全体に生まれ始めていると言う喜多河さん。そんな背景から、公益財団法人宝塚市文化財団(以下、文化財団)や宝塚市男女共同参画センター、宝塚市の福祉コミュニティ公益財団法人プラザ・コムといった地域の団体とイベントを共催することで、ふぁみ劇の活動を知られるきっかけが増え、入会者が増えていった。
「地域の子どもたちを守り育てたいという想いで活動を続けている方々と、一緒にイベントに取り組むことで新たなつながりが生まれています。44年間ふぁみ劇の活動を継続できていることが、子育て支援の受け皿のひとつとして地域に受け入れられている証であり、存在している意義なのだと思っています。」と喜多河さんは言う。
例えば「たからんまつり」もそんなイベントの一つだ。毎年3月に、宝塚市文化団体連絡会、文化財団とともに、様々なワークショップやコンサートなどを催している。実はこのイベントが誕生したきっかけは、20年前に始めたふぁみ劇の段ボール遊びだったと、元事務局の光田惠子さんが教えてくれた。
「宝塚市内の公園や河川敷で活動していたんですが、会場の許可申請の関係で継続が難しくなった頃、文化財団から子どもたちのお祭りのアイデアを求められ、ふぁみ劇の段ボール遊びを提案したんです。それが『たからんまつり』となり、ワークショップやコンサートといった内容を充実させながら10年になります。子どもたちが楽しく遊ぶことが私たちの活動の原点。ふぁみ劇独自の取組を地域で共有することで、多くの人に体験してもらい広めてもらっていることは、私たちの活動のエネルギーになっています。」
さらにふぁみ劇には、もう一つ大切にしているイベントがある。

 

プチふぁみクラブ
工作や絵本の読み聞かせ、ふれあい遊びなど、
親子で参加したくなる多彩な活動を展開

舞台鑑賞
鑑賞の前に、始まりのあいさつと観劇中の
「3つのおやくそく」を担当する子どもたち

中高生の成長を支えるサードプレイスとして

平成23年の東日本大震災をきっかけに、大阪で生まれたイベント「びっくり箱」。文化芸術団体、ホール、地域が一体となり、様々な舞台芸術やパフォーマンスを通して、震災の風化を防ぎ被災地を支援しようという取組だ。平成26年に阪神・淡路大震災の被災地である宝塚市に開催地が移り、ふぁみ劇も関わるようになった。
チラシの配布や当日の会場整理などに加え、大切にしている活動が、東北での被災地支援活動に参加した高校生や青年たちが、イベント当日に行うボランティア体験の発表。被災地で目にしたこと、現地の人と話したこと、そこで感じた自分の思いを、自分の言葉で伝える取組だ。家庭や学校以外のサードプレイス(第三の居場所)で、子どもたちが力をつける機会を与えられていることへの感謝を口にする喜多河さん。次の世代にも、こういう場をつくってゆくことが自分たちの役割だと話す。
光田さんも「2年、3年と取り組み続けるにつれ、子どもたちが大きく成長していく様子を目にすることができます。『社会に出た時、この経験が自分の中核になる』と聞いた時、子どもたちにそこまで影響を与えるこの活動は、1年単位の点ではなく、2年、3年という縦に長い線で見守っていくことが大切だと感じました。」と言う。
こうした子どもたちの成長を育む様々な活動がある中で、やはりふぁみ劇の原点は、生の舞台芸術鑑賞にあると、喜多河さんは改めて言葉に力を込める。

 

たからんまつり
子どもたちに大人気のダンボール遊び

観る力は、子どもたちの生きる力になる

「新型コロナウイルスによる影響で活動自粛が続いた後、令和2年9月の再開一作目がノリのいいリズム感にあふれた作品だったんです。みんなが喜んでくれて、いい作品を上演できてよかったと思いました。」と話すのは、出演団体との交渉や会場の調整などを引き受ける事務局長の伊藤紀久子さん。「演者と観客の間で交わされるやり取りで、盛り上がっていく生の舞台の迫力を感じました。コロナ禍を経て改めて、生で鑑賞する大切さがわかりました。」と言う。
そんな生の舞台芸術鑑賞について、喜多河さんは「観る力は、生きる力だ。」と話す。
「鑑賞には力が必要です。目には見えませんが、そういう力が0歳や1歳の頃から身についていくのを感じるんです。」
芸術鑑賞では、0歳児、1歳児も含め約80人もの親子が人形劇を鑑賞することもある。始まる前は「静かに観ることができるか」「会場がざわつかないか」と、一瞬不安が頭をよぎるが、子どもたちは始まると同時に舞台の世界に入り込み、演者との掛け合いも楽しみながら、プログラムに集中しているという。
「まわりの子どもたちが舞台に集中していると、自分も観なくてはいけないと思うのでしょう。アーティストが一人ひとりに語りかけながら真剣に演じている様子に、自分のために演じてくれているのだと子どもながらに感じているんです。そんなキャッチボールが客席と演者との間にあり、子どもたちにも通じるからこそ舞台に引き込まれ、みんなで観るんだという空気が生まれていくのだと感じます。
また、シンプルな背景の舞台劇では、例えばそこに野原が無くても、存在している様子を想像しながら子どもたちは観ています。そうした集中力や想像力、ちょっと大げさに言えば『生きる力』は、幼い頃から生の舞台を観ることで養われていくのではないかと思うんです。」
そう話す喜多河さんの視野には、地域にいるすべての子どもたちが入っている。

 

びっくり箱
開催されたプロブラムの一つ、ソリオまちなか劇場
「忍者修行-しろくまくんをさがせ!の巻」

サマーキャンプ
水遊びを楽しむ子どもたち

芋掘り
「お芋掘りしたい!」という声から生まれた企画、
たくさんの家族が参加し、芋掘りを楽しんだ

ふぁみりぃ劇場の名に込めた想い「地域は家族」

令和2年、おやこ劇場の活動を卒業論文のテーマに選び、取材にやってきた大学生がいた。翌年には、ふぁみ劇の会員だった青年が、地域活動としてのふぁみ劇を紹介するため、留学生たちを連れてきたという。
「若い世代の人たちが、こういう活動に興味を持つのは大切なこと。」と言う喜多河さん。大学生や中高生たちに、この活動の良さをつないでゆくために、あらゆる世代が参加できるようなバランスの取れた企画を考えること、どんな小さなことでも一人ひとりが活躍できる場を、ふぁみ劇の中につくってゆくことが大切だと話す。

 

忍者遊び
お寺と参道を舞台に忍者修行、お店や地域の協力のもと、
みんなで忍者になって遊んだ

 

草すべり
ダンボールの長い滑り台を作り、楽しむ子どもたち

「例えば、自分で焼いたパンやお菓子を会員さんに販売することで、自分の趣味が人に喜ばれ自己実現につながっている会員さんもいます。チラシを作ったり、子どもの見守り役を引き受けたり、事務所の掃除をしたり、いろいろな世代の人が、その時その場でできることで、活動に関われるようにしたいんです。」
国のほとんどが「おやこ劇場」という名前で活動している中、「ふぁみりぃ劇場」と名付けたふぁみ劇。
「私たちはふぁみ劇を通して、大きな『家族』をつくっているんです。」と微笑む喜多河さん。
想いを共有している仲間、人と人とのつながりが、地域という家族を育み続けてゆく。

 

エルフェスタ
宝塚市男女共同参画センター・エルの催し
「エル・フェスタ」にも参加

(取材日 令和3年5月14日)

3つの活動ポイント

  1. 「生の舞台芸術鑑賞」という原点をぶらさず、 自分たちが楽しいと思えることを大切にした活動を続けている。
  2. あらゆる世代の会員がそれぞれの立場で参加し、 今できることでつながりを持ち続けられるよう、活躍の場を作っている。
  3. 地域団体との連携を図ることで、ふぁみ劇の取組を地域で共有する機会を作り、 新たなつながりと活動PRの場を増やしている。

宝塚ふぁみりぃ劇場の
ここが好き・いいところ

運営委員長

喜多河 恭子さん

会員歴は25年。12代目の運営委員長に就き6年になります。緊急事態宣言により活動も会議も中止になった中で、同じ価値観、同じ目標を持っている仲間がいることが、コロナ禍の生活において大きな励みになりました。
活動のすべての基本は「楽しいこと」。一人で楽しむのではなく、みんなで楽しむ。楽しいことは、人と人をつないでくれます。若い世代に伝え、つないでゆくことが、これからもふぁみ劇の活動を継続させていくことだと思っているんです。

事務局長

伊藤 紀久子さん

3人の子どもたちと一緒に入会して、16年になります。2年前から事務局の仕事をさせていただいています。引き継いだばかりの昨年、新型コロナウイルス感染予防のため活動を自粛。再開が決まると同時に、何カ月も先の予定を考えたり、業務の忙しさについていくのが大変ですが、いろいろな方との出会いや学びが楽しいです。事務局長という役目柄、やっぱり会員が増えて欲しい。活動への参加を、どんどんおすすめしていきたいと思っています。

事務局

谷川 晃江さん

友だちに誘われプチふぁみクラブに参加したことがきっかけで、3年前に入会しました。事務局のお手伝いを始めて2年になります。
小1の息子は、通っている学校以外の友だちができることが楽しいようです。キャンプなどを通して、自分で考えて行動できるようになってほしいと思っています。
私の楽しみは、たくさんいらっしゃるお料理上手な会員さんのおいしい食べ物と、自分にできることで役立てるうれしさに出会えること。親も子も、ふぁみ劇での体験一つ一つが喜びです。

運営委員

光田 惠子さん

主人の大阪勤務をきっかけに宝塚へ。市民会館で見つけたポスターのお芝居が観たくて入会しました。事務局長を務めていた時、阪神・淡路大震災に被災。大変な時期を乗り越えてきたんだなと、最近つくづく思います。
中2の孫がよく質問してくるのですが、私の答えが彼の想像外らしく「え?」と驚かれます。14才の子どもたちが「こういう考えの人もいるんだ」と思う「え?」を、いっぱい自分に貯められるふぁみ劇にいられる自分は幸せだと思います。若い人たちに育てていただいている身として、ここで楽しく過ごしたいです。

運営委員

岩元 京子さん

子どもの通っていた幼稚園で、当時事務局長をされていた光田さんと友だちになり、「おもしろいよ」と誘ってもらったことが入会のきっかけです。副会長や運営委員長を経験させていただきながら、35年になります。会員みんなの人柄や雰囲気が大好きなので、これからもずっとずっとふぁみ劇と関わり続けていくために、元気で長生きすることを一番の目標にしているんですよ。

運営委員

大西 登司恵さん

28年の会員歴の中で、やはり人との出会いやつながりが一番の魅力です。3人の子どもの育児に追われ、社会から隔離されていると感じていた頃、ふぁみ劇を通じて他のおやこ劇場や文化芸術団体の方々をはじめ、世の中とつながっている実感を味わえることが新鮮で、楽しかったのを覚えています。
今は孫がふぁみ劇で育っています。まだ1歳7カ月で言葉は出ませんが、人形劇を観ると母親に劇を再現しろと言わんばかりに人形を渡すんです。小さくても、しっかり観ているんだってうれしくなります。

運営委員

金子 ゆかりさん

4年前、子どものお友だちのお母さんに誘われて入会しました。今ではその方より会員歴が長くなっています。同窓会に参加しても楽しいと感じないんですが、ふぁみ劇は価値観が同じだったり、見ている方向が同じ人が多いからでしょうか、何時間しゃべっても楽しいんです。年齢差も感じず世代の垣根もないところがいいですね。ふぁみ劇は私のライフワークの一つになっているので、元気に活動ができるうちは自分にできる範囲のことに取り組みながら、人生を楽しんでいきたいと思っています。

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