スティールパン楽団「ファンタスティックス」
神戸市長田区

スティールパンは、人とのつながりを生む楽器

ファンタスティックスの演奏活動で、忘れられない思い出を尋ねると、平成27年9月に開かれた「KOBE 100PANプロジェクト(*)」という答えが返ってきた。100人でスティールパンを演奏しようという企画に、160人を超える応募が集まり、応募者全員で演奏したコンサートだ。その演奏を、高橋さんは「人とのつながりが生まれてゆく体験」と表現した。
「みんなで一緒に演奏する達成感は、言葉にできないくらい大きなものでした。もともと私は一人で読書や映画観賞をする程度で、趣味も持たない仕事人間でしたが、スティールパンに出会い、みんなで音楽を楽しむことに夢中になりました。スティールパンは、人とのつながりが生まれていく楽器なんです。」と語る。
さらに、兼田奈津子さんは、ファンタスティックスの設立のきっかけである防災という側面からも、つながりを生み出していきたいと言う。
「演奏前に防災についてのクイズやゲームを行なったり、神戸の震災をきっかけに誕生したことを紹介したりしています。そんな背景を持つ楽団があるのかと、みなさんの記憶にファンタスティックスを残すことで、多くの人と新たなつながりが生まれればと思っているんです。」
そして、最も強いつながりはメンバー同士に生まれている。
「お互いに助け合える楽団。それぞれの役割や立場を理解して共有し、自分ができることにしっかり取り組み、できないことは誰かに頼る。それが演奏活動を長年続けられているポイントだと思っています。」と言う斎藤さん。 そんなファンタスティックスには、さらにつないでゆきたいものがある。

 

*「KOBE 100PAN プロジェクト」:阪神・淡路大震災20年の節目に、100人のスティールパンプレイヤーによる演奏を企画。アマチュアプレイヤーによるこの規模の演奏会は国内初。

 

KOBEスティールパンカーニバル2019

目の前にはたくさんの人たちが


 

KOBEスティールパンカーニバル2020

長田名物、鉄人28号前での演奏


音楽の力を、明日の希望につなぐために

「ある時、中学進学と同時にスクールを離れた当時6年生の児童が、「また演奏したくなった」と社会人になって戻ってきた。
うれしかったです。もっともっと仲間を増やして、活動を続けていきたいと思いました。」と話すメンバーたち。子どもたちが大人になった時に戻れる場所として。定年を迎えた人たちが次の生きがいを持てる場として。小学生から年配の人たちまで、触れ合う機会の少ない異世代が交流を深め合えるよう、みんなで音を合わせる楽しさを感じ合いたいと話す。
「スティールパンの演奏は、私たち演奏者と聴いている人たちの間で、楽しい気持ちが循環するんです。」と言う兼田さん。演奏している自分自身が楽しむことで、聴いている人たちを笑顔にできる。そんな音楽の楽しさを伝えた先に、生きる希望が生まれて欲しい。それこそが音楽の力であり、メンバーみんながファンタスティックスの活動に込める願いでもある。
令和元年、防災教育の一環として、地元の小学校で『しあわせ運べるように』を演奏した時のことだ。
「震災を経験したことのない子どもたちに、どこまで想いが伝わるのだろう。」
そんな疑問を抱きながら、演奏を始めた時だった。児童たちがスティールパンの音色に合わせ、自然と歌を歌い始めたのだ。
「私たちの活動と想いは、きちんとつながっていくのだと感動しました。音楽の力はちゃんと伝わるのだと実感できた体験でした。」と語るメンバーたち。
明るい未来や希望につながる音楽の力を、ファンタスティックスはこれからも届けてゆく。

ファンタスティックス YouTube公式チャンネル

(取材日 令和3年7月4日)

ファンタスティックスのここが好き
「ファンタスティックスのいいところ」

菅原 一乙美さん


菅原 一乙美さん

子どもの頃、本場トリニダード・トバゴでのスティールパン演奏をテレビで観たことがあり、子どもながらに楽しそうだと思ったのがスティールパンとの出会いです。友だちが演奏している様子を目にした時、「子どもの時に見た楽器だ、やってみたい!」と思ったことがきっかけでスクールへ。その後、ファンタスティックスに参加しました。普段接することのない職業や年齢の人と一緒に叱られたり、笑い合ったりしながら、子どもに返ってコミュニケーションができる楽しい場所です。各自が役割を持ち、全員で一つのゴールに向かって取り組むイベントでは、会社で得られないことも多く、私にとって本当にいい居場所です。

斎藤 春美さん


斎藤 春美さん

学生時代の吹奏楽部では、打楽器を担当していました。社会人になり、引っ越しを機に紹介された吹奏楽団の定期演奏会で、出場していたファンタスティックスに遭遇。とてもきれいな音色に興味をひかれ、スクールの無料体験会を経て参加しました。 練習場に来ると、元気になれるんです。みんなの顔を見て、話をして、演奏すると、疲れていても元気になれるんです。仕事が終わってからの練習は、時にはしんどい時もありますが、演奏が気持ちを楽しく元気にしてくれます。だからみんな、ファンタスティックスが好きなんだと思っています。

兼田 奈津子さん


兼田 奈津子さん

兵庫県立舞子高校の環境防災科の出身です。防災活動を続けられたらいいなと思っていました。学生時代は吹奏楽部に所属していたため音楽にはなじみがあったんですが、スティールパンは初めて。ファンタスティックスが『しあわせ運べるように』を演奏されている様子に、音楽で防災の活動ができるなら私もやりたいと思って参加しました。 ファンタスティックスは、アットホームな雰囲気がいいところ。メンバー同士の間に、年齢や職業の垣根が無く関係がフラット。伝えたいことを正直に、本音で伝え合える人間関係がいいなと思っています。

小原 雅美さん


小原 雅美さん

東京に住んでいた頃、近所の公園でスティールパンを演奏している人を見かけたことが、何度かあったんです。それまで見たことのない楽器でしたが、キレイな音色が印象に残っていました。 関西に引っ越して来てからテレビの放送で再び目にし、ネットで 調べてスクールを見つけ、参加したのがきっかけです。もう14年も続けているので、今ではファンタスティックスは生活の一部。 楽しい雰囲気と、人間関係の良さがいいところですが、「もっと上 手になれたらいいな」と思い続けていることが、私の演奏活動が 続いている最大の理由かもしれません。

安里 春菜さん


安里 春菜さん

仕事に励むだけじゃなく、何か趣味が欲しいなと思い始めた頃、以前から知っていたスティールパンが楽しそうだと思い出しました。でも、神戸からの仕事帰りに大阪の教室まで通うのは無理だと、一度はあきらめたんです。その後、勤務先を退職したことで、もう一度探そうとした時、この長田区に教室があることを知りました。新規生徒募集の開始まで、半年間待って9月に体験会に参加し、スクールを経てメンバーになりました。年齢も職業も関係なく、お互いがフラットに接することができる場所とつながりがあることが楽しいんです。

高橋 直樹さん


高橋 直樹さん

平成23年の夏、須磨海岸を散歩中、偶然KOBEスティールパンカーニバルに出会いました。その音色にびっくりしたんです。パワフルな迫力は、音の波にのまれ、体の底から揺さぶってくるような初めての体験でした。耳で聞くだけじゃなく、体全体に響いてくるような音だったんです。さらに、演奏している人たちがめちゃくちゃ楽しそう! スティールパンという楽器や演奏している団体に興味を持ち、その後すぐスクールの体験会を経て参加しました。あれから10年。今では、僕にとってメンバーは家族の次に大切な仲間。本当に居心地がいい存在になっています。

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