俺たちの武勇田
香美町小代区貫田地区

棚田の絶景は無くせない!

「10年間で、今年の稲が一番美しかった。」
稲刈りの日の朝、田んぼを見渡した小林良斉さんの目に映ったのは、真っ直ぐ立ちあがった稲穂が一面に広がる風景だった。
「改善を重ねながらつくり続けた甲斐がありました。うれしかったです。」
耕作経験が無いに等しかった人々が挑む、棚田の米づくり。そのきっかけは10年前にさかのぼる。
「清松っつぁんとこの田んぼ、もう作り手がおらんらしい。」
平成26年の春を迎える頃、貫田地区にそんな話が広がっていた。日本の棚田百選にも認定された景観の中心部を担う一枚の田んぼが、高齢化によって放棄田になろうとしていたのだ。
田植えシーズンのゴールデンウィークを過ぎ、5月半ばになっても後継者が現れる気配はなかった。このままでは、棚田を撮影に来る人や観光に立ち寄る人たちが楽しみにしている、美しい景観が維持できなくなってしまう。 「誰かが個人的に耕作を引き受ければ、例年通りの景観は保てる。しかし、あっちの田んぼもこっちの田んぼも、きっとすぐ同じ状況になる。どうにかしなくては……。」
「みんなに言ってみいや」と知人に背中を押された小林さん。集まった地域の人々に「みんなで、うへ山の田んぼをつくってみんか?」と恐る恐る切り出すと、前向きな返事が返ってきた。
「声をかけるのが、めちゃめちゃ怖かったんです。それぞれ仕事を持っているので、農作業をするためには週末の貴重な時間を割くことになります。負担になることがわかっていただけに、ホッとしました。」と振り返る。
「観光スポットなのに、耕作を放棄した田んぼを見せるわけにはいかない。ちょっとでも役に立てたらと思いました。」と話すのは田尻幸司さん。
手探りの中、武勇田の米づくりが始まった。

 

うへ山の棚田

日本の棚田百選に選ばれるほどの美しさ


 

冬のうへ山の棚田

雪に覆われた棚田は、夏とは違った魅力


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