NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト

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2023/03/24
神戸市須磨区
NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト

「できない」を「できた!」に変えるチャレンジを
須磨の海から全国へ広めたい!

「できない」を「できた!」に変えるチャレンジを
須磨の海から全国へ広めたい!

車いすで海を楽しむという、多くの人が諦めがちなアクティビティに、チャレンジを呼びかける人たちがいる。神戸市の須磨ビーチを拠点に活動を続ける、NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト(以下、SUBP) だ。障害者も健常者も、大人も子どもも、誰もが海で遊べる環境を整えようと、平成29 年、日本で初めてとなるユニバーサルビーチプロジェクトを開始。海遊びから山遊び、雪遊び、農作業など、活動フィールドを広げながら、令和5年には就労継続支援B型事業所(*1)の開設も果たした。みんなの「できない」が「できた!」に変わった成功体験を、新たな原動力に変え、人生へのチャレンジに向かうきっかけづくりの場所として、様々な活動を行っている。

【NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクト】
平成28年12月、須磨ビーチを、障害の有無を問わず海を楽しめるビーチにしようと集まった13人が、任意団体「須磨ユニバーサルビーチプロジェクト」を設立。平成29 年11月にはNPO法人化。車いすでも砂浜を進めるビーチマットや、車いすのまま海に入れる水陸両用アウトドア車いすを携えて、日本各地のビーチへ出向き、体験イベントやユニバーサルビーチづくりの講習会の開催サポートなどを行う「出張ユニバーサルビーチ」事業を通じ、全国のビーチのユニバーサルデザイン化に取り組んでいる。令和元年、「出張ユニバーサルビーチ」の普及活動により、IAUD国際デザイン賞2019(*2)金賞を受賞。

*1 就労継続支援B型事業所: 障害者総合支援法で定められた国の就労支援サービスで、障害者が就労機会の獲得や就労に必要な能力を身につけるため、雇用契約を結ばずに生産活動などの就労訓練に取り組む事業所

*2 IAUD国際デザイン賞: 「ユニヴァーサルデザイン(UD)の更なる普及と実現を通して、社会の健全な発展に貢献し、人類全体の福祉向上に寄与すること」を基本理念として活動する一般財団法人 国際ユニヴァーサルデザイン協議会が、民族、文化、慣習、国籍、性別、年齢、能力等の違いによって、生活に不便さを感じることなく、一人でも多くの人が快適で暮らしやすいUD社会の実現に向けて、特に顕著な活動の実践や提案を行なっている団体・個人を表彰するもの

車いすでも、海で遊べるんだ!

車いすに乗ったまま、海の中で笑顔がはじける女の子。
サーフボードに腹ばいになって海に浮かび、瞳を輝かせている男の子。木々の緑がまばゆい森の中で、車いすでツリーイング(ロープと安全ベルトを使って楽しむ木登り) を楽しむ人。オープンしたばかりのSUBPの就労支援施設の壁は、楽しそうな活動風景で彩られている。
「どれもいい笑顔でしょう? 私たちが活動に取り組む原点を象徴する写真です。」
紹介してくれたのは、SUBPの理事長を務める木戸俊介さんだ。交通事故により、感覚を失ってしまった下半身のリハビリテーションのために渡ったオーストラリアで、ビーチマットに出会ったことが活動に取り組むきっかけとなった。
「退院後、家族で訪れた旅先のビーチでは、車いすの車輪が砂に埋もれて前に進めませんでした。海岸へ行くには、足を取られる砂浜を、私を背負って歩いてもらわなくてはならず、迷惑をかけてしまうため、もう海には行けないと諦めました。」

その後、リハビリのために滞在していたゴールドコーストで目にしたのが、砂浜に敷かれた青いビーチマットだった。車いすのまま波打ち際まで近づくことができ、諦めていた海遊びを楽しむことができた。
「諦めを乗り越え、できなかったことができるようになるって、こんなに感動できることなんだ。」「生(なま)の感情」と木戸さんが呼ぶ、体の奥底から湧き上がってくる想いを感じた体験だった。
すぐに木戸さんは、「ビーチマットを、地元の須磨のビーチに敷きたい。」と、知人である海の家のオーナーに連絡。知人から知人へ次々に話が伝わり、帰国前にも関わらず、あっという間に様々なメンバーが集まった。
「障害がある人も無い人も、みんなが一緒に海を楽しめるよう、須磨のビーチのユニバーサルデザイン化を目指そう。」
木戸さんのチャレンジが始まった。

初めて海に入った喜びで、とびきりの笑顔を見せる女の子
車いすでツリーイングを楽しむ写真が壁一面を彩る

須磨の海を、誰もが楽しめるユニバーサルな海岸にしよう

1か月後、帰国した木戸さんは、オーストラリア滞在中につながった仲間でミーティングを開催。海の家のオーナーやライフセーバー、サラリーマン、公務員などのメンバー12人とともに、任意団体「須磨ユニバーサルビーチプロジェクト」を立ち上げた。
ビーチマットは国内で生産されておらず、アメリカから輸入しなくてはならないこと、また100 万円以上という高額な製品であることを知った木戸さんたちは、クラウドファンディングに挑戦し、集まった多くの支援でビーチマットを手にすることができた。
平成29 年5月28 日、国内で初めてとなるビーチマットの青い道が、須磨のビーチに現れた。当日は、車いすの家族連れや、ベビーカーを押す親子連れなどが訪れ、波打ち際までビーチの散策を楽しむことができた。その後、車いすのまま海に入って海遊びを楽しめる、水陸両用アウトドア車いす「ヒッポキャンプ」も寄附で購入。毎年、海水浴シーズンには、須磨のビーチにビーチマットとヒッポキャンプを設置し、海遊びのサポートを続けている。

プロジェクトの始動にあたり、砂浜にビーチマットを敷きたいと話すと、「利用者は、そんなに多くないだろう。」と、周囲から一蹴された木戸さんだったが、「当事者である自分があんなにうれしかったのだから、他の人も絶対に同じように感じるはずだ。」と思っていたと言う。
「やってみなければ、わからないというのが、私の行動の原点。障害者は、危ないからやめろと制止されたり、我慢しなくてはならなかったりすることがよくあります。やりたいのにやれないという抑えられた欲求を満たすことに挑戦し、乗り越えた時に感動できるチャンスは、健常者より多いと思っているんです。」
揺らぐことのない信念の元、平成29 年11 月、SUBP をNPO法人化。「みんなの『できない』を『できた!』に変える」を活動のテーマに掲げ、仲間たちとともに活動を加速させていった。

車いすやベビーカーも波打ち際まで近づくことができる
「できない」が「できた!」に変わる最高の瞬間

目指せ! 全国のビーチのユニバーサルデザイン化!

その仲間の一人が、事務局長を務める土原翔吾さんだ。
「ボランティアスタッフとして活動に参加するうちに、運営にのめり込み、中高一貫校の教師を辞めてしまいました。できないと思っていたことが、できたときのみんなの笑顔を、もっと見たくなったんです。今は広報・事業支援などを手掛けながら、SUBP の社員として取り組んでいます。」
一方、車いすユーザーとしてSUBP に参加したことをきっかけに、ボランティアスタッフを経て、運営に携わり始めたのが内藤夕貴さんだ。
「喜んでいただく側として、もっと活動に関わっていきたいと思い、社員になりました。SUBP では、『やってみて』と言ってもらえることが心地いいんです。以前の職場では、やる前から『あなたには、できないでしょ』と決めつけられ、仕事を回してもらえないという経験もしていました。SUBPに参加する中でチャレンジすることが増え、『できる?』と聞かれたら『やってみます』と言えるようになっています。」と話す。

スタートからわずか3か月後の8月、須磨のビーチから始まった活動は、日本中のビーチのユニバーサルデザイン化という夢に向かい、一歩を踏み出すことになった。茨城県の大洗サンビーチで活動をするライフセービングクラブから、ビーチマットのレンタルを依頼されたのだ。
SUBP のスタッフたちが大洗のビーチへ駆けつけ、ビーチマットの体験会をサポート。参加者から高い評価を得たことをきっかけに、ビーチマットやヒッポキャンプなどをレンタルしたり、SUBP のサポートスタッフが帯同し、ビーチマットの体験会やユニバーサルビーチ化の講習会を開催したりする「出張ユニバーサルビーチ」をスタート。
これまでに、全国延べ25都道府県42か所のビーチへ出向いている(令和5年1月現在)。活動の活発化に伴い、一緒に取り組みたいという新たな仲間や企業も現れ始めた。

日本中のビーチのユニバーサルデザイン化が目標
ビーチマットとヒッポキャンプの導入にあたりユニバーサルビーチ講習会を開催した

人へ、企業へ、全国各地へ、つながり広がる活動と想い

令和元年6月のある日、活動に興味を持った愛知県南知多の有志から、「ビーチマットを体験したいので、来てほしい。」とSUBP に依頼が届き、現地を訪問したことをきっかけに交流が生まれた。様々な活動をサポートするうちに、もっと連携した活動を目指そうと想いが一致。
SUBPの「きょうだいプロジェクト」事業が誕生し、一般社団法人南知多ユニバーサルビーチプロジェクトが、設立されることになった。
現在、「きょうだいプロジェクト」は、福岡、高知、鳥取、奄美大島、北海道へと拡大。それぞれの地域のビーチで、ユニバーサルビーチプロジェクト事業が展開されている。

一方、企業からは、連携イベントの依頼が入るようになった。例えば、プロサーファーによるサーフィン大会では、障害者を含めた一般参加者向けの体験会を開催。スキューバダイビング専門のウェブメディアとの連携では、ダイビング体験会を開くなど、「健常者も障害者も、みんなで一緒に海を楽しもう。」という想いに共鳴する連携先が増えている。
「こうして連携先が生まれることで、つながる人たちの多様な視点や活動に触れる機会も増えます。想いを持ってSUBP に来た人が挑戦している姿を目にすることで、『この場所なら自分にもできる』と感じることができ、もっとチャレンジしてみたくなる。その姿を目にした人もまた、チャレンジしてみようと思う。これが良い循環を生み、『できない』を『できた!』に変えるという目標どおり、挑戦者マインドが生まれていると感じます。」と土原さん。
その循環は人だけに留まらず、海からアウトドアへ、新たなフィールドの拡大にもつながっている。

様々な企業との連携イベントなど、新たな試みが次々と生まれている

海から山、森、畑へ、挑戦のステージが拡大中!

SUBP では、山も森も畑も、すべてが活動フィールドだ。田植えや野菜の収穫、キャンプ、スキーなど、様々な自然との触れ合いを通じ、「難しい」と思っていたことが、「乗り超えていくおもしろさ」に変換されていく。
その一つが、令和4年3月から始まった、「Minato Farm( ミナトファーム)」だ。「車いすで畑に行きたい。」という利用者の声を受け、土づくりから苗植え、収穫、販売まで、農作物づくりに取り組んでいる。12 月には、自分たちで収穫した野菜を朝市に出店。あっという間に完売する盛況ぶりだった。
こうした新たな活動に取り組み続ける背景には、新しい仲間に出会いたいという目標がある。「活動のジャンルも、ビーチやアウトドアだけでは広がりに限界があります。
私たちのコミュニティや活動フィールドの外側にいる人たちに、仲間に加わってもらうことが大切です。」と木戸さんは話す。

実際にSUBPのメンバーにも、子ども食堂を始めたり、まちのプロモーションの発足人の一人になったり、古民家再生カフェに取り組んだり、竹の利活用として企業と一緒にタケノコからメンマをつくろうとしたりしている人たちが生まれている。また、SUBPにキャンプ場を提供してくれる施設のある公園を、ユニバーサルアクティビティの場所に育てようという、メンバーたちの目標もある。フィールドの違う仲間が増えることで、新しいチャレンジの場も機会も増えているのだ。
SUBPに来た人が挑戦したいことを尊重し、活動を広げてきたが、今また一つ始まっているのは、「仕事を楽しむこと」への新たなチャレンジだ。

働くことへのチャレンジを応援、就労継続支援B 型事業所オープン

「この子を残して、先に逝けない。」
SUBP を訪れる障害者の保護者たちの想いを、立ち上げ当初から耳にしてきた木戸さん。障害者たちが自立するための就労支援を目指し、令和5年2月、就労継続支援B 型事業所を開設した。
メンバーたちのパソコンスキルを活かし、SNSの運用やマーケティング、デジタルコンテンツ制作をはじめ、須磨ビーチの障害者用更衣施設の管理や海の家の運営、ビーチ清掃などの屋外作業、流木やマイクロプラスチックなどを材料にしたものづくりなどに取り組む予定だ。

そんなSUBPの就労支援事業を支えているのは、地元の賛助企業の存在と、仲間同士でつながり合えるコミュニティだと言う木戸さん。土原さんも、「最も大切にしていきたいのは、人とのつながり。出張ユニバーサルビーチ事業も、メンバー自身が現地へ足を運び、一緒に取り組むからこそ活動を続けるエネルギーが生まれ、プロジェクトの拡大につながっていると思っています。私自身も、教師を辞めてから今まで、SUBP のみんなに支えられてきました。ここは、仲間がいるから挑戦できる場所。きっとそれは、私だけでなく、他の人たちにとっても同じはず。」と話す。
「就労のハードルは高くても、小さなチャレンジを積み重ねていけば、私たちのように自分で仕事ができるんだと伝えたい。」と言う木戸さん。チャレンジの先に3人が思い描く世界とは、どんな世界なのだろう。

巨大なボードに乗って水面を進むウォーターアクティビティ、障害の 有無に関係なくみんなで楽しめる

「大きな世界は、小さなチャレンジから始まる」

木戸さんは、このプロジェクトに2つのゴールを掲げている。一つは、ユニバーサルビーチが当たり前の存在になることだ。
「障害者用の用意された無料更衣室ではなく、海の家を健常者と同じように使えたら。両者の立場がフラットになることが、本当のバリアフリーの姿ではないかと思います。」

もう一つは、神戸の街全体をユニバーサルアクティビティのテーマパークにすることだ。
「神戸の魅力は、海と山と街がそろっていること。30分圏内にスキー場と海水浴場がある地域の特性を活かし、障害者が利用しやすい移動手段や宿泊施設も一緒に整えられたらいいなと思っています。」
ビーチやアウトドアといった枠を超え、みんなの挑戦を加速させたいと話すのが土原さんだ。勇気をもって始める小さなチャレンジが、夢の実現という大きな世界につながる一歩になる瞬間を、数多く目にしてきた。
「活動を始めたばかりのある夏の日、障害のある娘さんが家族と一緒にビーチへ来られました。生まれて初めて海に入った娘さんの、はじけるような笑顔を見た瞬間、思わずお父さんも服を着たまま海へ入ってしまわれたんです。『あんなに嬉しそうな娘の笑顔を見たのは初めてだったので、つい駆け寄ってしまいました。ずぶぬれで、どうやって帰りましょう。』と話されるお父さんもいい笑顔で、その出来事が今も忘れられません。」
「チャレンジを続けた先で、全ての人がハッピーになってほしい。みんなで一緒に笑顔になれたら、それが一番です。」と話す内藤さん。小さなチャレンジから始まる大きな世界は、SUBP から生まれるたくさんの笑顔と夢でできあがっていく。

( 取材日 令和5年1月13 日)

3つの活動ポイント

  1. 活動の目的や目標を明確な言葉にして、関わる全員が目標を共有できる環境を作っている
  2. 常に新しい仲間とつながる工夫をし、コミュニティ内だけではできないチャレンジの機会を用意している
  3. いつでも利用者を主役と捉え、参加する人が挑戦したいことを最優先に企画し、活動を提供している

NPO法人須磨ユニバーサルビーチプロジェクトの
ここが好き・いいところ

理事長

木戸 俊介さん

SUBPを始めた当初から、「木戸さんに会いたい。」という理由で足を運んでもらうことが、活動継続のために必要だと思い、明るく取り組むことを心掛けてきました。ケガのおかげで逆転の発想が身につき、「ビーチマットの設置や撤去に人手がかかるからこそ、多くの人が集まるきっかけになる。」というように、ポジティブに考えられるようになりました。
私には、「木戸の5大夢」があるのですが、5つ目の夢が「人生での、すべらない話を息子にする」こと。「夢」にすることで、辛いことも失敗したことも、話を盛り立てる材料だと思えば苦ではなくなります。「ケガがあったから、ここまで来ることができた。」と語れる人生の方が面白いでしょう?
活動の成果のバロメーターは、最後に泣きながら笑えること。利用者の中には「手伝ってくれて当然」とやって来る人もあり、「できることは自分でやる、できないことはやろうとする、それでもできなければ私たちが手伝う。」という、SUBPの活動趣旨の説明から始めなければならない場面もあります。そんな時、「参加してよかった。」と帰っていく利用者を見送るメンバーたちの充実した表情に、壁を一つ乗り越えSUBPのファンを増やせたと嬉しくなるんです。
時には、「障害のある人と一緒に海に入ることに、どんな意味があるのか。」と聞かれることもあります。参加してよかったと思える瞬間は、人それぞれ。
利用者の笑顔に出会えることが楽しいという人もいれば、学校に行けなかった我が子が、明るくなっていく様子を喜ぶ両親もいらっしゃいます。
だから、一度、足を運んでほしいんです。
心を動かされる瞬間に出会えたら、是非仲間になってほしいと思っています。

事務局長

土原 翔吾さん

SUBPに出会う前、中学校で教鞭をとっていた頃は、発達障害が疑われたり、不登校気味だったりして、生き辛さを感じている生徒に、得意なことを見つけたり、活躍できる場所を用意してあげたりしたいと思っていました。しかし、進学校だったため、求められるのは偏差値や成績を上げる教師。学校に違和感を覚えていたんです。
そんな時、木戸に出会い、学校以外の場で私がやりたかった活動ができることを知りました。学校では「障害者や高齢者を守りなさい。」と道徳教育を行っていながら、実際は障害者に距離を置き、偏見を持っていたのは自分だったことにも気付きました。障害者を守るのではなく、一緒にチャレンジしたいと思うようになり、SUBPに参加するようになりました。
教師を辞めようとしたのは、息子が生まれるタイミングだったんですが、父親としての格好良さを考えた時、やりたいことにチャレンジした背中を見せたいと思い、決断しました。2人目の子どもが生まれる時は、妻の実家がある稲美町で、町長選挙に出馬。初の平成生まれ町長を目指したチャレンジでした。
これからますます、木戸や内藤が取り組む活動の後押しをしたいと思っています。二人が自分たちの体験を話せば、彼らのポジティブさが伝わり、一緒に楽しみたい人が日本全国に増えていくと思っているんです。
私自身の挑戦は、このプロジェクトを海外にも広めること。ビーチマットやヒッポキャンプは、海外から入って来たものですが、日本人らしい「支え合い」の気持ちが加わることで、須磨ユニバーサルビーチプロジェクトが、海外でもさらに根付いていくと信じています。

アドバイザー

内藤 夕貴さん

きっかけは、SUBPがヒッポキャンプを導入したという新聞記事を母が見つけ、「行ってみよう。」と声をかけてくれたことでした。住まいのある西宮市から須磨まで、電車で行くのが億劫で、あまり乗り気ではありませんでした。でも、この出会いが大きな転機になりました。
子どもの頃は海水浴を楽しんでいましたが、車いすを利用するようになると、砂浜を進めず海に入ることは諦めていました。でも、勧められるまま入ってみると、本当に気持ちよかったんです。「みんなに楽しんでもらおう。」という、スタッフの方々の気持ちや温かい人柄も後押しになり、SNSに投稿されていたイベント案内をチェックしては、足を運ぶようになりました。
すると、いろいろなことにチャレンジしてみようという気持ちが生まれたんです。
まず、私が生まれた頃に祖父母宅へやってきて、私と一緒に育ってきた犬と、同じ犬種を自分でも飼育したいと思い、飼い始めました。プロのアーティストのコーラスに参加したり、スキューバダイビングやキャンプを楽しんだり、GPSラン(*)にも挑戦したりしています。
社員になったのは、アルバイトとして関わっていた、令和3年の夏の出会いがきっかけでした。ある親子が、海に入れることを知らずに須磨のビーチへ来られました。障害のある娘さんが海に入れると知ったお母さんが、泣いて喜んでくださいました。その姿を目にしてから、私の意識が変わりました。運営側として喜んでもらいたいと思えたんです。
SUBPに来た人は、みんな笑顔になってくれます。笑顔を撮影した私の写真を見ていただきながら、障害者も健常者も集えるコミュニティスペースを開くことが目標です。キャンプで教えてもらったコーヒー豆の焙煎をしながら、おもてなしができたらいいなと夢を描いています。

*GPSラン:走った軌跡に色が付くランニングアプリの機能を使い、走ることで地図上に絵やメッセージを描くもの。
走る速さを競わないランニングとして、障害者や車いす利用者など誰もが楽しめる。

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この記事を書いた⼈
内橋麻衣子