未来のすごいすと

NPO法人 本と温泉兵庫県豊岡市

グループ紹介

NPO法人 本と温泉

 「また若いやつが、なんかやっとるで。」
いつもなら距離を置いて様子を探る土産物屋の主人たちが、今回ばかりは一気に近寄ってきた。観光客が店にやって来ては「『城崎裁判』ありますか?」と尋ねていくのだ。
「なんかすごいな。うちもちょっと欲しいわ。」「悪いけど、すぐ5冊持ってきて!」
そんなオーダーを受け、旅館の若旦那たちが温泉街を自転車で配達に走る。

平成25年、城崎温泉旅館経営研究会(通称「二世会」)の若旦那衆16名(平成29年10月現在17名)が立ち上げたNPO法人「本と温泉」(理事長・大将伸介さん)。人気作家の書き下ろし小説が城崎温泉でしか買えないという、「とがった」売り方が話題を呼び、ツイッターをはじめSNSで広がっていった。
「生半可な気持ちでは、中途半端なものしかできない。たくさんの人に支持してもらえるものを、つくりあげていかないといけないっていう想いは、みんな一緒」と話すNPO副理事長の冨田さん。委員会などの集まりは「緊張する」と言う。「それじゃ伝わらへんと思うよ。」 提案にも平気でダメ出しが飛び、夜中まで真剣に話し合う。「わざわざ声を上げて号令をかけなくても、みんな同じ方向を向いている」という一体感で、城崎温泉の盛り上げ役を果たしている。

90年前の北但震災で、温泉街は焼け野原となった。「なくなった街を『元に戻す』と決めた先人たちは、商売の場所というだけでなく、城崎温泉が持つ個性を大事にしたかったんだと思います。この温泉街を存続させていくために、僕らもそれを受け継ぎ守りながら、進化させていきます。」

失敗を恐れない! 若旦那衆の挑戦

失敗を恐れない! 若旦那衆の挑戦

二世会のいいところは、好きなことができるところだという。「今までにないような、おもしろいことをするのが僕たちの役目」という言葉通り、様々な取組みを行っている。そのひとつが平成28年の夏、インターンシップとして受け入れた学生たちの発案による「城崎温泉怪談祭『城崎怪団』」。城崎国際アートセンターの地下に「お化け屋敷」を登場させ、さらに温泉街のパレードや、怪談師が旅館の客室に出向く「出張怪談」を開催。温泉街の閑散期にもかかわらず、若い世代を中心に観光客が集まり、好評のうちに幕を閉じた。「城崎温泉の楽しみ方を増やしたい」という若旦那たちの想いは、確実に実を結んでいる。

城崎温泉街の魅力とパワーを、新たな視点で引き出す仕掛け人

城崎温泉街の魅力とパワーを、新たな視点で引き出す仕掛け人

「おもしろいことが広がるのは、これからです。今後、100年続けますって万城目さんと約束したから。」
そう言って微笑むのは、東京でブックディレクターとして活躍中の幅允孝(はばよしたか)さん。現在は城崎地域プロデューサーも務めている。
歴代の作家をただ展示する施設でしかなかった「豊岡市立城崎文芸館」を、平成28年にリニューアル。万城目学さん、湊かなえさんそれぞれと城崎温泉の関わりを紹介した企画展を開催。現代作家たちの目と思いから伝わる城崎温泉の魅力を、作家と共に楽しむスペースへと生まれ変わらせた。
城崎温泉と関わった作家たちに、アイデアを与え本を書かせる。そんな温泉街が秘めたクリエイティブなパワーを、ますます進化させようとする幅さんから目が離せない。

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