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「豊岡って、面白いらしいね!?」~まちづくり交流会レポート 豊岡ゆかりの“すごいすと”×豊岡演劇祭Play Talk

まちをワクワクさせるのは、「人」でしかない!

「自分が何をしたいのかわからないと、他の人に何もしてあげられない」

「失敗って無くないですか?  “ワクワク回転”をぐるぐる回す、きっかけでしかない」

「まちの余白と、新しいことへのチャレンジに賛成の人が、豊岡には多いのかな」

「私が遠くから豊岡に来たからって、一緒に動いてくれる。豊岡の人はなんてやさしいんだろう!」

自分を楽しませることから始めよう!

周囲の人々を巻き込むには、何が必要? 活動を前に進めるためには、何をすればいい? 想いを持った人たちへヒントを届け、つながりを育みたい――。2023年9月4日。豊岡のまちに生まれたにぎわい拠点「とゞ兵」を会場に、豊岡を舞台に活躍を続けるゲストたちのトークセッションと交流会が開かれました。

今回のイベントでは、豊岡演劇祭ともコラボレーション。演劇とのつながりから見たまちづくりについて、お話しいただきました。

ファシリテーターは、女性や若者の社会参画実現に向けて活動を続ける湯川カナさん(一般社団法人リベルタ学者代表、なりわいカンパニー株式会社代表取締役)。軽快なトークで、次の活動につながる様々なお話を、ゲストたちから引き出していただきました。

まずは「豊岡でチャレンジ! すごいすとトークセッション」からスタート!

こちらの「すごいすと」お二人に登壇いただきました。

*小山俊和(こやまとしかず)さん/にぎわい拠点「とゞ兵」館長
埼玉県生れ。令和元年より、豊岡市にある元料亭の再生事業に取り組む。店舗誘致やシェアスペース開設、アートや音楽のイベントを開催しながら、まちの「にぎわい拠点」づくりに取り組んでいる。

*守本陽一(もりもとよういち)さん/ケアと暮らしの編集社 代表理事
神奈川県生まれ、養父市出身。令和2年、一般社団法人ケアと暮らしの編集社を設立し、地域の孤独解消のためのシェア型図書館「だいかい文庫」を開設。地域共生社会の実現を目指す。

「移住したら、頑張って、みんなに好かれなきゃいけないの?」

奥様の出身地である豊岡市で活動を始めた小山さん。「移住というより、活動場所が増えた感覚」と話す通り、海も山もある豊岡市ならではの立地を活かし、都会ではできない「仕事×エンターテインメント」を存分に楽しんでいます。

そんな小山さんは、相談に来る移住者に「みんなに好かれなくていい。自分が本気でやりたいことをやればいい。」と声をかけます。

「地域のものを背負い過ぎると、自分のやりたいことがブレてきます。人に好かれるために来たのではないはず。自分を中心に据え、一つのことに執着し過ぎない距離感が大切。私の場合も、自分がただ楽しいと思ってやっていることが、地域活性化に尽力しているとたまたま評価されているだけだと思っています。」

小山さんが勧めるのは、自分がハッピーでいられることから取り組むこと。

「地域のために頑張らなくていいんです。まず自分を大事にしましょう。」

まずは、地域の「いいところ」を知ろう

一方、守本さんは、学生時代に東京で偶然目にした豊岡市のプロモーションイベントが、Uターンのきっかけになりました。

「但馬がイケイケになってるじゃん!」

嬉しくなった守本さんは、「地元へ帰るのも面白いかもしれない」と感じたと言います。

Uターンにあたり、まずは地域のことを知ろうと、学生仲間と一緒にフィールドワークを中心とした地域診断を行いました。その際、守本さんが大切にしたのは、地域の「いいところ」をみつけることでした。

「Uターン後、投薬や手術ではなく、人や地域とのつながりによって、地域の人たちを健康にしていこうという『社会的処方』に取り組んでいます。地域課題の解決に貢献しようとすると、ついマイナス面ばかりを探しがちです。でも、つながりを生む取組では、この人は何に興味があるんだろう、どんなところが強みなんだろうと、プラスの部分を探していくことが大切なんです。」

そんなお二人に、最近の活動と、活動に取り組む上で大切にしていることをお話しいただきました。

自分が楽しんでいれば、「失敗」なんてない

小山さんは、地域外の人が豊岡市に興味を持ち、足を運んでくれるイベントを中心に開催しています。一方、守本さんが新たに始めたのは、社会包摂型市民大学と呼んでいる「みんなのだいかい大学」。自分の病気の体験談から好きな干物の話に至るまで、誰でもどんなテーマでも、講師になることができる活動です。

そんなお二人も、最初から現在のように活動を形にできたわけではありませんでした。

小山さんは、豊岡市に来たばかりの頃は、「地域の人に寄り添い、一緒に取り組まなくてはいけない」と考えていたと言います。しかし、地域の要望には応えきれないと感じたことで、「7~8割は失敗」と笑って話すほど、いろいろな取組を重ねながら楽しんでいると言います。

一方、守本さんも、学生時代に豊岡市で初めて開いた医療セミナーに、受講者がたった一人しか集まらないという苦い経験をしました。

「受け取ってもらえないなら、こちらからまちへ出ていこう。」

地域の人とコミュニケーションを図るため、屋台を引いてコーヒーを出す「モバイル屋台de健康カフェin豊岡」を始めます。今、全国に展開中の「YATAI CAFE」は、そんな「失敗」から生まれたのです。

そんな経験も踏まえ、守本さんは「失敗は無い」と言います。失敗したことも「次は、こうしたらうまくいくんじゃないか」という、振り返りの機会になっているのです。

「予想外のことが起こったり、うまくいかなかった時には、『ワクワクサイクルを回すチャンスだ!』と思ってやり続ける。そのためには、自分が好きなことをやっていようということですね。」

湯川さんの言葉に、会場に集まった人たちは、大きくうなずいていました。

次に「いよいよ開幕! 豊岡演劇祭」のトークセッションへ。

自分たちが楽しむためのチャレンジを続けられるまち豊岡を、象徴するものの一つに「アート」があります。東京が大好きで、「地元へ帰ってきたくなかった」という田口幹也さん。かたや、好きなことにチャレンジするため、故郷を離れ豊岡市へやって来た粒耒楓彩さん。お二人に、アートのまち豊岡のシンボリックなイベント「豊岡演劇祭2023」について伺いました。

*田口幹也(たぐちみきや)さん/豊岡市観光文化部観光政策課参与、豊岡演劇祭2023アドバイザー
豊岡市(日高町)生まれ。2011年の東日本大震災を機に、城崎へ家族で移住。豊岡市の広報・PR等に奔走後、2015年、城崎国際アートセンター館長に就任。現在、豊岡市観光文化部観光政策課参与および豊岡演劇祭2023アドバイザー。

*粒耒楓彩(つぶらいふうあ)さん/芸術文化観光専門職大学 芸術文化観光学部 芸術文化観光学科 芸術文化分野専攻 3年生
2003年、青森県八戸市生まれ。演劇部で活動中、平田オリザ氏の講演で豊岡市を知る。芸術文化と観光による地域振興を学ぶため、故郷を離れて芸術文化観光専門職大学に一期生として入学した。

アーティストも住めるまち、豊岡

「地方都市の中でも価値観の多様性がある、新しいことへの挑戦に賛成派が多い。そんな『豊岡らしさ』の象徴が、アーティストも住めることであったり、豊岡演劇祭を開催していることであったりするのだと思います。」と話す田口さん。

「新しい価値観を排除せず、誰もが自分の可能性を試すことができるまちとして、豊岡が知られるきっかけになれば。」と、アートという切り口に期待を寄せています。

そんな新たな価値観への挑戦を集めたイベントが、豊岡演劇祭です。

「作品やパフォーマンスの面白さが、誰でもすぐに理解できるものばかりではないかもしれませんが、だからこそ都心ではなく地方都市で開催していることが価値になるのでは。」と田口さんは話します。

一方、粒耒さんにとって豊岡は「新しい物への関心度が高く、新たな価値観への寛容さがあるまち」。今回の豊岡演劇祭では、大学との連携による実習プログラムとして考案した企画で参加する予定です。

「地域の良いところを再確認していただいたり、学生の存在を思い出していただければうれしいです。」と話します。

トークセッション終了後は、ゲストスピーカーのみなさんが各テーブルを回る「出会いつながる!交流タイム」が始まりました。

35名の声と想いがつながった!

イベントで人を集めるヒントや、失敗談の共有、地域プロモーションのコツや豊岡のまちに期待することなど、ゲストスピーカーを中心に、様々な話題で盛り上がった交流タイム。豊岡市内をはじめ、京阪神地区や鳥取県などからも参加されていました。

その中の一人、大阪から豊岡市へ移住したばかりという雑貨デザインを手掛ける男性は、「移住したからといって、無理に地域に貢献しようとしなくていいんだと、ムダな力みが取れました。」と、気持ちが楽になったと話します。

「『小山式』で、ゆったりと豊岡に関わっていこうと思います。」と言いながら、いろいろな人と言葉を交わしていました。

西宮市から参加した岡澤ひとみさん(株式会社WEDDGE 代表取締役)は、「頑張ってひとりで抱え込もうしないこと、利益重視とは異なる時間軸を持つことが、大切だと気づきました。自分が楽しんでいれば人が集まり、勝手に巻き込まれてくれるんですね。」と明るい声で話します。

実は岡澤さんは、「すごいすと」の記事がきっかけとなり、廃村危機の集落をグランピング施設に生まれ変わらせた株式会社glaminkaと交流が生まれた方。現在、コラボレーション事業に取り組まれています。

「ソムリエとして、宿泊客用のワインをお届けしています。お聞かせいただいた村づくりのストーリーに似合うワインを提案させていただいていますが、宿泊客の皆さんにお喜びいただいているようです。」

今回、豊岡でも多くの参加者と交流を育まれた二人。今後の活動の広がりに、新たな期待をふくらませていました。

「豊岡のまちをこんなに面白くしている主役は、皆さんなんですね。」

湯川さんは、そんな言葉でイベントを締めくくりました。

まちを面白くするのは、人。そんなメッセージが随所に伝わる全編は、ぜひ動画でご覧ください。

(登壇者感想)

粒耒「地域の方の興味が薄れていない! 新しいことだから興味を持ってくださっていたのではなく、活動やイベントに対して純粋に面白さを感じていてくださったんだと気づくことができました。改めて活力をいただきました。」

守本「地方の課題の解決策や新しい価値は、一つの分野ではなく掛け合わせから生まれるもの。年に一度はこういうイベントで、違う分野の人と会って話をすることが大切だと思いました。」

小山「アートのまちで、演劇祭があり、とゞ兵に出会えた。そんな豊岡なので、今こういうことをやっています。豊岡の人たちが、とゞ兵を舞台にやりたいことをどんどんやってくれれば、まちはもっともっと楽しくなると思っています。」

田口「地元出身ではない人たちが、豊岡だからできるんだ、豊岡だからやったんだと言ってくれるのは非常にうれしい。とゞ兵という場所があること、イベントに多くの方が来てくださることは、すごくありがたいことだと改めて思っています。」

トークセッションの全編の動画でご覧いただけます。