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「人」と「まち」をつなぐ地域情報を発信
猪名川町を、一人ひとりが誇れるまちに!

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2023/02/12
上福田守彦さん
(47)
兵庫県猪名川町
地域情報誌いながわベース編集長
PR企画事務所代表

個人紹介

上福田守彦(かみふくだもりひこ)47歳。昭和50年、猪名川町生まれ。大手飲食チェーン勤務などで経営スキルを磨き、平成26年、猪名川町で「PR企画事務所」を設立。動画制作やWEBデザインなどを通じ、企業や自治体のPR支援を行う一方、平成29年には、猪名川町企画財政課による地域創生事業公募型プロポーザルとして立ち上がった、中間支援組織「いながわベース(*)」に参加。町内全戸配布の地域情報誌 「いながわベース」の編集長として、「人」と「まち」をつなぐ活動に取り組んでいる。

*中間支援組織「いながわベース」:地域で活動する団体や個人をつなぐことで、情報の共有や相互連携を支える中間支援組織として、人とまちの「つながり」をテーマに、町の施策と町民活動との橋渡しを行い、まち全体での地域活動の充実・地域活性化に取り組んでいる。

宮崎県に移住したのは、大好きなサーフィンを楽しむため。Uターン後、仲間や住民と共に猪名川町を全国区に広めた動画づくりのきっかけは、「面白そうだった」から。趣味として楽しむためだった動画制作のスキルを、「仕事で使える」と自信を持てるほど高めることができたのも、我が子たちの映像を上手に残すため。どんなことも楽しもうという気持ちが、周囲を巻き込み、地域を盛り上げる原動力になると教えてくれる、上福田守彦さん。中間支援組織「いながわベース」で発行する地域情報誌の編集長として、猪名川町の魅力の発信や、住民が地域課題に気づき、行動を起こすための提案を続けています。「人」と「まち」をつなぐ情報誌づくりと、猪名川町への想いをうかがいました。

目次

目指したのは、猪名川町でのUターン起業

「住みたい場所で、自由に暮らせるのは今だ!」

海が好きな上福田さん。仕事にもサーフィンにも、存分に取り組める環境を求め、結婚と同時に、ふるさとである猪名川町から、国内屈指のサーフポイントが点在する宮崎県へ移住しました。

そんな、上福田さんが20代の頃から目標にしていたのは、経営者として働くこと。そのための準備として、企業経営について学ぼうと、宮崎県では大手飲食チェーンの店長として勤務しました。売上や経費など数字面の管理から、スタッフの教育や求人まで、仕事の厳しさや利益を生み出す困難さを体験できたと言います。

そして生まれ故郷の猪名川町へ、Uターンしたのは35歳の時。

「長男が、幼稚園に入園する年齢になったら、猪名川町へ家族で戻ろうと決めていました。豊かな自然の中で、子どもたちを育てたかったんです。」

Uターン後は、猪名川町内の飲食店に就職。店長の経験を活かした様々な工夫・アイデアで、販売促進活動に取り組み、経営を支えました。

「売上を伸ばすため、ワインの販売に力を入れたり、デザートのキャンペーンを企画したりしました。また、当時流行し始めたSNSを使って、川西市や三田市、宝塚市へも店の情報を発信したことで、町外からも来店客が増え、売上も順調に伸びていきました。」

2年が過ぎ、そろそろ起業したいと考え始めていた上福田さんは、ある日、SNSでユニークな投稿を見つけました。人気アイドルグループAKB48の楽曲「恋するフォーチュンクッキー」に合わせ、佐賀県庁の職員たちがダンスを踊っている動画でした。

「知人が『こういうの面白いね』と投稿していたのを見て、私も『面白いよね』とコメントを入れました。そのやりとりが発端となって『自分たちもやろう』と、ダンス動画制作の企画が動き出しました。おじいちゃん、おばあちゃんを中心とした、猪名川町民が踊る温かな雰囲気と、まちの観光スポットなどの風景を組み合わせて紹介すれば、きっと面白い動画作品ができると思いました。」と振り返ります。この動画制作が、上福田さんの起業を後押しすることになったのです。

大好きなことは、家族も巻き込んで楽しんでしまう上福田さん
茅葺屋根の家の前でダンス動画の撮影に協力してくれた地元の方と

町民のダンス動画で、ふるさとを全国区に!

「ダンス動画を一緒に作りませんか。」という上福田さんたちの呼びかけに、約30人もの仲間が協力を申し出てくれました。例えば、住民への出演交渉や説明といった調整役には、旅行会社勤務の知人が名乗りをあげました。また、撮影の候補地へ出向き、ロケ地として適切かどうかを下見する人や、撮影に参加した住民の肖像権に関する説明文書を作成する人など、それぞれ自分の得意なことで役割を分担。上福田さん自身は、構成を考え、撮影と編集を行う映像監督として参加。予算0円、スマートフォンのみで撮影し、10日間で動画作品を完成させました。

ダンスを踊ったのは、猪名川町に暮らす老若男女およそ400人。「さっきのシーンが面白かった。」「私たち、この動画作品に出てるのよ。」と出演者たちの反応も上々。「いいものを作ってもらってうれしい。」「一生の思い出に残る。」と、公開後には喜びの声が寄せられました。

さらには、AKB48の総合プロデューサー秋元氏の目に留まり、公式チャンネルで紹介されたり、AKB48グループが開催した「恋するフォーチュンクッキー」ビデオアワードでは『ほのぼの賞』を受賞し、東京ドームでのコンサート中に行われた表彰式に招かれたりするなど、猪名川町の認知度向上に、大きく貢献することができました。

このダンス動画の制作後、上福田さんは「かわにし60秒コマーシャル動画コンテスト」に応募した作品「かわにしでどうあそぶ?」でも優秀賞を受賞するなど実績を重ね、平成26年4月、フリーランスとして、WEBデザインやPR映像制作を手掛ける「PR企画事務所」を設立。動画制作をはじめ、ホームページやチラシの制作などを通じ、企業の販売促進活動サポートや自治体のPR支援などを行うようになりました。

そんな上福田さんに、「中間支援組織を猪名川町に作るため、相談にのってほしい」と町役場から声がかかったのは、平成28年のこと。仲間と一緒に一年間、組織作りの準備に取り組み、平成29年11月、「いながわベース」が立ち上がりました。

「現在の『いながわベース』の基礎になっているのは、あのダンス動画制作をきっかけに生まれた仲間のつながりです。メンバーそれぞれが、自分の好きなこと、得意なことを活かし、役割を分担しながら活動に参加しています。人脈の広さを活かして人と人をつなぐメンバーや、活動の段取りに長けた人、相談事の解決が得意な人、イベントやフリーマーケットの開催が上手な人など様々です。」

その中で、上福田さんの役割は、地域情報誌「いながわベース」の制作です。得意なクリエイティブのスキルを活かし、「デザインで地域を興す」という目標を掲げ、取り組んでいます。

AKB48グループの東京ドームコンサート中に行われた表彰式。
猪名川町の代表メンバーがステージに上がりパフォーマンスを披露した
ダンス動画の制作をきっかけに、たくさんのつながりが町内に生まれた

メッセージの発信で「人」と「まち」をつなぎたい

地域情報誌「いながわベース」は、情報誌への広告掲載料による運営の自立を目指し、団体の立ち上げと同時に創刊。春と秋の年2回、15,000部ずつ猪名川町の全戸へ無料で配布しています。企画会議から取材、撮影、編集、発行までをこなすメンバーは、大学生から60代までの6人です。

「情報誌は、作った後が大切です。広告を掲載してくれるクライアントのためにも、手にした人が面白いと思え、手元に残してくれる誌面に仕上げなくてはいけません。」と言う上福田さん。そのために大切にしているのは、「いながわベースらしさ」です。

「飲食店を読者モデルにレポートしてもらったり、観光地の紹介にコスプレ企画を組み合わせたり、行政の広報誌だけでは伝えきれない、伝えづらい情報を、個性的な表現や目を引く写真で誌面にしています。時には、科学的な裏付けのない編集長の個人的な考察を掲載したり、反対意見が届くことを覚悟して記事にしたりすることもありますね。」

そんな情報誌に込めたテーマは、読み手にメッセージを伝えること。例えば、上福田さんが「伝わったと実感できた」と話すのは、鹿の狩猟を通して、命をいただくことに感謝しようというテーマの記事でした。

「害獣駆除の罠にかかった鹿を、食肉に加工するまでの様子を収め、実際に食べさせてもらった取材です。店頭に並ぶ商品は、パッケージになった状態しか目にできませんが、食材として命を落とした瞬間や、そのために誰かが手を下してくれた現場があります。それを知らずに、ただ『おいしい』と喜ぶだけではいけないと思うんです。『様々な命がつながって私たちが生きていることに、ちゃんと感謝しなくてはいけない』ということを伝えたかったのです。」

読者からは「食べ物に感謝しなくては」「いながわベースが伝えたいメッセージが届きました」「子どもに伝えます」といった声が届き、想いが伝わっていることに安堵したと言います。

さらに、情報誌が伝えるメッセージが、「人」と「まち」をつなぐ役割も果たし始めています。

地域情報誌「いながわベース」の取材風景
コスプレーヤーとのコラボレーションで猪名川町の観光名所を紹介
害獣駆除の罠にかかった鹿はハンターによって食肉に加工される

情報誌づくりとは、住民誰もが関われる「まちづくり」

ある時、障害者が焙煎するコーヒーや製造するクッキーを販売する、就労継続支援B型(*)のカフェを紹介しました。まちの健常者と障害者の間に、心の距離を感じていた上福田さん。お互いが歩み寄り、福祉事業をもっと盛り上げてもらうためには、情報誌にもできることがあると感じていたのです。

誌面では、敢えて障害者スタッフの表情をアップで取り上げました。後ろ姿や顔を見せない写真では、本気で伝えたい想いが読者に届かないと思ったからです。「時給っていくら?」「休日の過ごし方は?」など、日ごろ感じていた疑問も記事にしました。

「取材をきっかけに、その店でコーヒーを買うようになりました。来客をもてなすお菓子も、出張で訪問する企業への手土産も、その店のクッキーの詰め合わせを買っています。多くの人に店を知っていただく機会になるうえ、お店の売上アップにも貢献できます。」

「コーヒーやお菓子の購入先を変えるだけでいい」「おいしく食べることが地域貢献になる」「SNSへの投稿に『いいね』を押すだけで支援になる」

そんなメッセージが読者に届いた結果、多くの人が店の存在を知り、コーヒーやクッキーを購入する人が増えているそうです。

一方、地域住民が自分の得意なことや好きなことを活かしながら、まちづくりに関わるための間口を広げる意味でも、役に立つのが情報誌だと話します。

「読者モデルになりたい人、クリエイティブなことが好きな人は、どこの地域にもたくさんいます。人と会うだけでも楽しいと思う人や、自分が撮った写真を使ってもらえたらうれしいと思う人もいるでしょう。まちへの意見がある人だって、誌面づくりには必要な存在です。そんな人たちが参加したいと思えるような、楽しさを伝えることが大切です。」

取材だからこそできる体験や、好奇心を満たす経験を積み重ねながら、様々な人と出会い、つながりを紡いでいる上福田さん。情報誌の発行を続けるのは、「自分が楽しいから。人とつながったことで、私自身が助けられ、人生が豊かになっているからです。」と微笑みます。

来期からは、猪名川を「町」ではなく「川」として捉え、取材や配布範囲を、川西市も含めた猪名川流域エリアへ拡大する予定です。

「地域の情報が詰まった引き出しが、皆さんの中に増えれば増えるほど、人とも地域ともつながっていけます。つながる機会が多くなることで、地域も盛り上がると思っているんです。」

地域情報誌「いながわベース」を通じ、地域住民に一番受け取ってほしいのは、自分たちのまちの魅力を発見するきっかけです。

「自分のまちへの関心を、もっと深めてほしい。自分が暮らしているところは、誇れるまちなのだと気づいてほしい。」

魅力に気づくことも、まちづくり。そんな想いを込めながら、上福田さんは猪名川のまちと向き合い続けます。

*就労継続支援B型:一般企業への就職が困難な障害者が、軽作業などの就労訓練を行うことができる福祉サービス

地域情報誌「いながわベース」で紹介した、就労継続支援B型のカフェに勤めるスタッフ
猪名川町内だけでなく、仕事の依頼があれば県外へも撮影に出向く

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人生、思い通りになる

口にした人を、良い方向にも悪い方向にも導く言葉の力、「言霊(ことだま)」を、普段から大切にしている上福田さん。「例えば、ちょっと気持ちが後ろ向きな朝でも、『今日は絶対うまくいく』とポジティブな言葉を口にしていれば、本当に元気になれる。」と話します。上福田さん自身も体験した、ポジティブな言葉が持つパワーについて、語っていただきました。

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この記事を書いた⼈
内橋麻衣子